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大阪へゆきたし(上)

電車内や待ち合わせスポットのあちこちで、
新入生や新入社員を物色する楽しい4月
いつのまにか終わった。(もう7月だよ!) 

マンウォッチングは僕の趣味である。
物色といっても僕の場合「声」だから、
ここはボイスリスニングというべきか。
お国言葉、つまり方言を楽しむのだ。

電車内で耳にするお国言葉ナンバーワンは
なんといっても関西弁
である。公共の場で
あろうと(実は公共の場であるほど)彼ら
の話し声は大きくなり、ヒートアップする。

他の方言が人前で声高に交わされることは
まずない。どうした九州人、頑張れ東北人
負けるな北陸のひと。胸を張れ、道産子よ!
声が小さいぞ中国・四国地方出身の君たち!

由緒正しく美しい君たちの誇り高きお国言葉
を僕に聴かせてくれないか!

それにしてもなにゆえ、東京にいる関西人
の声だけが、公共の場でかくも必要以上に
大きいのか。そしてさらに関西人は何ゆえ、
頑として東京言葉に染まろうとしないのか。

その理由は、ここでは述べないことにする。
だって嫌われたくないし、関西人好きやし。

じつは、僕は近畿圏の言葉に精通している。
どんなふうに精通しているかというと──

1)関西弁ごちゃまぜだが間違いなく尼崎。
2)完璧な京言葉。きっとおばあちゃん子。
3)あれは兵庫県明石地方だけの言い回し。
4)エセ関西弁バレとるで。広島出身やろ。
5)関西弁を方言ゆうな! といった具合。

関西出身でない僕が何ゆえ関西弁に堪能なのか。
単純に関西人との付き合いが多かったからだが、
耳が良いからという説も間違いではないだろう。

むかし好きだった女性は京都四条河原町の産。
高校生のとき文通した女の子は浪速娘だった。
大学時代、米国人の女の子と将来を約束した。

3つ目は関西とは無関係だったね。とにかく
言葉の習得にはその国の異性と付き合うのが
いちばんの近道だ
。そう言いたかったのだよ。

待てよ。そんなことが言いたいわけでもない。
関西ネタを持ちだしてまで僕が言いたかった
のは「大阪へゆきたい!」ということである。

ああ、大阪へゆきたい。
かれこれ20年は大阪に行っていない。
たしか10年前に大阪の地を踏んだが、
それはある写真家の本のための取材で、
新大阪駅と関西大学正門前の氏の自宅
を往復しただけの、日帰り訪阪だった。

ああ、大阪へゆきたい。
USJに行きたいわけでも心斎橋を歩きたい
わけでも、グリコの看板を見たいわけでも
ない。阪神タイガースの応援を…いや今は
横浜DeNAを応援してあげたい気分だよ。

僕が大阪へゆきたい理由は別にある

かつて萩原朔太郎は言った(大正12年)

 ふらんすへ行きたしと思へども 
 ふらんすはあまりに遠し

今の僕には大阪さえ遠いよ(平成27年)

 せめては新しき背広を着て 
 きままなる旅にいでてみん 

そうだ、ジャケットを買おう。
きのう僕はネイビーブルーの
春夏用のジャケットを買った。

さあ、これで大阪へゆく準備は整った。

仕事のスケジュールを組んでくれないか。
もちろん収録でも生放送でもかまわない
僕はマネージャーに元気よくそう告げた。

 

「大阪にゆきたい(下)」につづく)

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