送信ボックスに保存されたまま置き去りにしたメールってあるよね。
投函されることなく机の引き出しに仕舞われたままの手紙みたいに。
みなさんにも心当たりがあると思う。
朝起きて読み返したら顔から火が出た(夜は饒舌ね)
冒頭の「長文です」が押しつけがましい(重たいね)
末尾の「乱文にて」が酔ってるっぽい(自己陶酔ね)
こんなこと書いたらきっと嫌われる(自意識過剰ね)
こんなこと言っても波風を立てるだけ(平和主義ね)
やっぱり、会って話すべきだろう(face to faceね)
はじめから送るつもりなんかなかった(自己完結ね)
相手からさきに事務的なメールがきた(ジエンドね)
理由は概ね、こんなところではないだろうか。
言いたかったけど、伝えたかったけど、
けっきょく投げかけなかった言葉たち。
それを今、僕はここに記してみたい。
梅雨本番を迎えたこの季節、心にカビを生やさないためにも、
そのときどきに頭に浮かべど、結局送信するに至らなかった
そんな言の葉たちの棚卸しをしてみるのも一興だと思うのだ。
「王様の耳はロバの耳!」と穴を掘って叫ぶほどの衝撃的な
トピックスはないけれど、僕の中に澱のように溜まっている
何がしかのフラストレーションは軽減されるかもしれない。
徒然に記した以下のメッセージを読んで、もしもあなたが
「これってわたし宛てのメッセージ?」と感じたとしたら、
それは僕の意図するところであり、おそらく正解だと思う。
では、投げるよ。
心当たりのある(心当たりがなくても)、
あなたの好きな球をキャッチして!
1、「人はどこにいるかじゃない。何をやるかだ」って本当に思ってる?
2、君への恋心は全力で封じ込める。頼むから気づかないふりをして。
3、秘密をバラす? あのさ、君が思ってるほど僕は人気者じゃない。
4、自己防衛は当然だ。でもそのために君は、大切な人を悪者にした。
5、「覆水盆に帰らず」ではなく「焼けぼっくい」の発想でいくべし。
6、シャーリー・マクレーンの『アウトオンアリム』も読んでおいて。
7、「アナ雪を5回みた」とか悲しくなるようなことを言わないでくれ。
8、漱石も言っている。Pity’s akin to love(可哀想は惚れたってこと)
9、「わたしはクズです」と自嘲するきみに、教えることは何もない。
10、涙もろい自分を演出して好人物をアピールする涙ぐましいきみ。
11、何をそんなに癒されたがっているのか、僕には皆目わからない。
12、友だちの多さを自慢する君。でもみんな君と同レベルの人たち。
13、いいよ。行こうよ、京都に。ふたりで。
15、どうやらきみは「人のエネルギーを奪う」タイプのようだね。
16、本当に口が達者だ。でも透けて見えるよ。言霊がないんだもん。
17、誓います。これからも僕が僕でいられる仕事だけをしていくと。
18、大阪は、僕を暖かく迎えてくれるかな。それが問題だ。
19、「ありがとう」は言えるのに「ごめんなさい」が言えないきみ。
20、「神」って言葉に抵抗があるなら「玉葱」でもいいって遠藤周作が。
21、自己評価と他者評価の間で葛藤する君。それより技を磨いたら?
22、また「プラス思考」礼賛かい?「マイナス思考」がグレちゃうよ。
23、僕に話があるんでしょ? 言ってごらん。「わたしを変えて」って。
24、「いま、会いにゆきます」と言ったら、物語は始まるかな。
以上。
ソネット形式の14行詩といきたかったけど、24行になった。
もっとあるけど、ちょうどよい数字になったのでこのへんで。
ここはショパンの『24のプレリュード』にあやかるとしよう。
均衡と不均衡の奇妙なバランス。二人の天才ピアニスト
コルトーとポリーニの銀河系の端と端ほどに遠い演奏。
つまり同じ曲だとは思えないほどに異なる二人の演奏を
かわりばんこに何度も繰り返し聴きながら書いてみた。
題して、語り人による「24行のツイートメッセージ」
(「24小節のラブソング」のほうがよかったかな?)
言いたいけれど言えない、言ったら終わりだ的発言。
みなさんにも、いっぱいあるよね。ぜひやってみて。
溜め込んでいる鬱々とした、悶々とした、恋々とした
思いを短い言葉にして、丸めて吐き出しちゃうんです。
だけど、あまりケンカ腰にならないように注意して。
相手に直接ぶつけないからといって、罵詈雑言とか
強迫めいた乱暴な言葉はなるべく使わないようにね。
えっ、語り人だって少しケンカ腰になってるって?
あはは、ごめんね!だって完全無欠の美辞麗句とか
やたらポジティブすぎる言葉って、なんか胡散臭い
というか、中身がないというか、僕は信用しない。
とにかくこの「送信しないツイートメッセージ」は
精神衛生のために行なう自己療法だから、遠慮なく
ぶっちゃけちゃってください!でも、ほどほどにね。