第3話「一流の証明」最終章完結編が公開されるや、いろんな方からたくさんのメッセージを頂戴した。内容は心温まるお褒めのメッセージから、心凍る批判のメッセージまでさまざまだ。感謝を込めて、ここにその一部を紹介させていただきたいと思う。
まずは、心温まるお便りから。
語り人さんを含めた四人の登場人物の関係性がステキです。一柳さんが役者の道を絶たれて実家に帰るところでは、私も一緒にわんわん泣きました。また、玲子さんが語る一柳さんとの出会いのシーンに胸がつまされました。もう一柳さんのバカ! そして最後の二人の「Shall we dance?」にうっとり。観覧車のシーンも胸キュンでした。これは夢とベター・ハーフを追い求める人たちに起きた奇跡の物語です。(神奈川県 28歳女性)
文章がスゴい! 音楽を聴いてるみたいにすうっと入ってくる。心に沁みてくる。そして情景が浮かんでくる。声をテーマにした新しい小説(?)の誕生に拍手!(大阪府 25歳女性)
声で人生が変わるって、何それ?って思って読みましたけど、語り人さんは本当に変えちゃった。魔法使いだわ。ドキドキしました。ああ、私も語り人先生のレッスンを受けて人生を変えたい! ちょっとコワイけど。(千葉県 22歳女性)
語り人さんと一柳さんの友情という縦糸と、一柳さんと玲子さん、そして語り人さんと愛由美ちゃんの恋愛が横糸になって織りなす、美しくも切ない愛と再生の物語。ところどころで泣きながら、ところどころでクスっとしながら、ところどころでうっとりしながら、またところどころで勇気をもらいながら拝読させていただきました。(北海道 30歳女性)
文章のリズムがいいし、セリフがカッコいい。登場人物の長い語りに引き込まれました。キャラ設定も心理描写もうまい。この第3話の四人もそうですが、他にもスタジオの寺さんとか、第2話「声優ほど素敵な商売はない」のシーサーさんとか、キャラ的にめっちゃオモシロい!(フランス 38歳男性)
北は北海道から南は九州・沖縄まで、海の向こうはアメリカ、フランス、シンガポールからも寄せられた。ほとんどが名前も知らない、会ったこともない人からのメッセージで、反響の早さもさることながら、インターネットのすごさにあらためて驚いている。
以上、メッセージ文を紹介させていただいた方、本当にありがとう。
無断で掲載しちゃってすみません。許してくれますよね。
またのお便りをお待ちしています。
えっ、これで終わり? 心凍る批判のメッセージのほうはどうしたのかって?
あはは。無意識に(本当はわざと)スルーしようとしちゃいました。
僕だって批判されるのはイヤだし、できれば日光東照宮の三猿のように
見ざる・聞かざる・言わざるを決め込みたい。
でもそれってフェアじゃないね。みんなに理解されるなんてあり得ないし、みんなから好かれることも事実上、不可能だ。本文でも触れたように、語り人は率直にものを言う人が嫌いじゃない。僕自身が思ったことをはっきり言う人間だからだろう。だから友は少なく敵は多い(これも本文で言った)。
ならば毀誉褒貶、まるごと引き受けましょう。というわけで、心凍る批判のメッセージ。いや、そうじゃない。歯に衣着せぬ率直なメッセージをご覧ください。
人生とか恋愛話とか一見、深そうに書いてるけど、なんかよくある話だよね。詩とか文学とかの薀蓄がウザい。まあ、文章はうまいと思うけど。(埼玉県 19歳男性)
長いよ、とにかく長い。こんな長文にする必要あんのかね。飛ばし読みしたけど、なんかおっさんが若い女の子にモテたいっていう下心しか、おれには伝わってこなかった。イタイっつうか。(福岡県 20歳男性)
一柳さん、キャラ盛りすぎじゃね?
語り人さん、カッコつけすぎだって!
玲子さん、コワすぎ!(でも好み)
愛由美ちゃん、きみはカワユすぎ!
おれが守るよ(語り人さんじゃダメ)
(東京都 29歳男性)
高学歴の口のうまい人たちが集まって、きれいごとをくっちゃべってる感じ。結局、一流とは何か、いまいちわかんなかったし。(岐阜県 23歳女性)
私は語り人さんのことをよく知ってる(知りすぎてる)から、なかなか読むことができませんでした。でも、勇気を出して最後まで、ぜんぶ読んだわよ。ウソつき!(東京都 38歳女性)
あは、ウソつきって言われちゃいました。
実話なのか作り話なのか?と聞いてきた人もいる。
それについては「実話をもとにしたフィクションです」
とだけお答えすることにしている。
「茂森愛由美さんは大学の後輩です」と言ってきた人もいた。
これにはつい反応してしまい、
「そんなはずはありません。実は五年前の話なのです」
と返信した。すると、
「茂森さんはNHKのアナウンサーになったのですか」
と聞いてきた。またまた反応した僕は、
「彼女はいま、ニューヨークにいます」
そう言うとその人は、
「さすが茂森さん。じゃあ今は、遠距離恋愛ですね」
「……」
こうした言わずもがなのレスポンスも、インターネットならではのコミットメントだろう。
レスポンスといえば、『ユアボイス・マイボイス』の原稿にもっとも迅速に、またもっとも敏感に反応してくれる人がいる。ウエブ・プロデューサーのFさんだ。
Fさんは『ユアボイス・マイボイス』をネットに送り出すためのすべての作業を担当してくれている。つまり最初の読者である。
僕が原稿を送ると、どんなに忙しくてもすぐに読んでくれて、「おもしろいです!」と返してくれる。そして可及的速やかに公開の準備をしてくれる。僕の筆が遅々として進まないときは、こう言って励ましてくれる。
「一番目の読者である僕が、実は一番読みたがっているのかもしれません」
完結編の最終稿を送ったとき、Fさんは「感動をうまく伝えられないので会って話したい」と、僕が住んでいる最寄りの駅まできてくれて、飲みながら感想を熱く語ってくれた。
ありがたいことである。
そしてもうひとり、レスポンスの早い人がいた。
「語り人ちゃん、読んだわよ。なんでわたしが登場してないわけ? しかも、わたしの話のときより気合が入ってない? みんなすっごくカッコよく書かれてるし。いかにせよ、すぐに顔を出してちょうだい」
メールの主は第2話「声優ほど素敵な商売はない」の主役、オネエキャラにして気鋭の映像ディレクター、虎田シーサーさんだ(こちらもぜひお読みいただきたい)。
シーサーさんに呼ばれたら駆けつけないわけにはいかない。六本木のシーサーさん行きつけのバー「侍(サムライ)」で落ち合った。本読みのプロであるシーサーさんは、いつものように口角泡を飛ばして「一流の証明」の物語を映像的視点から論じ、過分な評価をしてくれた。
別れ際、シーサーさんは重たい体をタクシーの後部座席に押し込みながら、僕にウインクして言った。
「一柳ちゃんは確かにイイ男だけど、いかにせよ、わたしは語り人ちゃんがタイプよ」
「……」
「サムライ度がね、あなたのほうが上なのよ」
「?…」
いかにせよ、ありがたいことである。
僕には「友人が少なく敵が多い」と言った。彼らのような得がたい友人たちが、声であれ文章であれ、僕の表現活動を支えてくれていることは言うまでもない。
しかし、僕のことを好ましく思っていない人たちも、実は僕を支えてくれている。積極的な批判精神を、僕は大いに評価しているからだ。僕がもっとも恐れるのは批判でなく無関心だ。
無関心はボディブローのように、少しずつ、しかし確実に僕にダメージを与える。
人を殺すのは批判でも暴力でもない。無関心なのだ。
そんなわけで、心温まるお褒めのメッセージはもちろん、心凍る批判のメッセージも、遠慮なくどしどし送ってください。みなさんの言葉が、僕の血となり肉となります。
『ユアボイス・マイボイス』をどうか一緒に育ててください。
あなたのコミットメントを心よりお待ちしています。
2015年2月5日 横浜の仕事部屋にて
語り人