「語り人、何やってるんだ!」
振り返ると、そこにいたのはジョージではなくニックだった。
「あんた、ひどい怪我をしてるじゃないか!
肩もやったな。とにかく診療所に行こう」
「だいじょうぶ。それよりどうした?」
「傷の手当てが先だ。歩けるか?」
「ニック、いいから話してくれ!」
「ジョージのことで知らせがあったぞ」 続きを読む
第4話 ジョージの伝言
第4話5章 怒りの代償
「そのとおりだ。違わないよ。それにしても見事な演説だ!」と拍手をしながら言った。「語り人にはかなわないね。きみこそ、何でもお見通しってわけだ」
ジョージの顏を見たのは、それが最後だった。 続きを読む
第4話4章 言葉の力
大きくなった僕は、アメリカ人と喧嘩するどころかアメリカンガールに恋をして失恋して、そして今は変な米兵に弱みを見せまくり、やつといることに奇妙な安らぎさえ覚えるていたらくだ。そんな軟弱な息子を、父は天国から苦々しい思いで見ているのだろうか。 続きを読む
第4話3章 日本のアメリカ
それにしても、この黒人にしては華奢でハンサムな男は、いったい何者なのだ。僕の過去や現在が視えるとでもいうのか。「たしかに視えている」としかいいようのない事態に、僕はひどくうろたえた。 続きを読む
第4話2章 遠いアメリカ
「そんなに悲しいのは、本気で愛したからでしょ?」
「それ、どういう意味? 僕に言ってるの?」
「ほかに誰がいる。だいたい、きみが僕を呼んだんだよ」
「なに? 呼んだ覚えはないけど」
「じゃあ、きみが僕を求めた、と言い換えようか」
そう言うと男は、その無邪気な笑顔に真っ白な歯を添えた。
それがジョージとの最初の出会いだった。 続きを読む
第4話1章 米兵ジョージ
根岸森林公園──
ここでは観光ガイドしての僕の出番はない。ただひたすら歩くのみ。
しかし、ここにも語るべき物語はある。今回はここで起きた不思議な話をしよう。もっとはっきり言えば、これは語り人に起こった奇跡の物語だ。 続きを読む
第4話序章 ヨコハマウォーク
朝夕、時間に余裕のあるとき1、2時間の散歩に出る。
散歩というよりウォーキング。ウォーキングというよりジョギングに近いかもしれない。僕のウォーキングは、つまりそのくらい速い。速いがもちろん競歩じゃない。 続きを読む