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第4話序章 ヨコハマウォーク

朝夕、時間に余裕のあるとき1、2時間の散歩に出る。
散歩というよりウォーキング。ウォーキングというよりジョギングに近いかもしれない。僕のウォーキングは、つまりそのくらい速い。速いがもちろん競歩じゃない。

コースはだいたい決まっている。
自宅から右に進めば「港の見える丘公園」、 左に行けば「根岸森林公園」。いずれもおよそ1.5キロの道程。どっちに歩を進めるかは、その日の気分次第。

港の見える丘公園は、展望台から眼下に広がる横浜港やベイブリッジを臨む、横浜を代表する観光コースのひとつ。この一帯は開港当時、イギリス軍とフランス軍が駐屯する外国人居留地だったことから、現在もイギリス館、フランス山としてその名残を留めている。

山手本通りをまっすぐ、イタリア山庭園、山手教会、元町公園、外国人墓地と左右に寄り道しながら進むコースだが、行く先々で声をかけられ呼び止められるので、ちょっと辟易する。

えっ、語り人は有名人?
ちがうちがう、そうじゃない。

観光客の「すみませーん。シャッター、押してもらっていいですかぁ」とか、地図を読めない女性たちの「あの、人形の家からローズガーデンを通って山下公園に行って、そんでもって中華街にも行きたいんですけど」ってやつ。

えっ、語り人は観光ガイド?
ちがうちがう、そうじゃない。

歌の文句のように否定を繰り返す語り人だが、実はこの流れで本当にガイドをするはめになり、あげく中華街で一緒にご飯まで食べて、すっかり仲良くなってしまったことが一度ならずある。

相手は男か女かって? 訊くまでもないだろう。

そんなこともあって、こっちの観光コースにはよほど暇を持て余しているか、よほど人恋しいときにしか足を運ばないようにしている。そしてそんな状況を、できるだけつくらないように心がけている。

一方の根岸森林公園は幕末に造られた日本最初の洋式競馬場で、日本の競場発祥の地として知られている。

だから、とてつもなく広い。ジョギングコースを含む「芝生の広場」だけでも、横浜スタジアム5個分に相当するというから、本格的なジョギングやウォーキングを楽しむにはもってこいの公園。

また見事な梅園や桜園も有名で、その意味でここも観光スポットには違いないが、横浜市民の憩いの場ということで、家族連れや犬を連れた散歩者も多く、地元近隣の住民に親しまれている。

だから、ここでは観光ガイドしての僕の出番はない。ただひたすら歩くのみ。

しかし、ここにも語るべき物語はある。今回はここで起きた不思議な話をしよう。もっとはっきり言えば、これは語り人に起こった奇跡の物語だ 。

 

(1章へつづく)

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