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	<title>声で人生が変わる！「愛と再生」のボイス・ストーリー　ユアボイス・マイボイス &#187; 第4話　ジョージの伝言</title>
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	<description>あなたは自分の「声」が好きですか？ あなたは「声」で損をしていませんか？</description>
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		<title>第4話6章　きみは悪くない</title>
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		<pubDate>Fri, 21 Aug 2015 04:18:47 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第4話　ジョージの伝言]]></category>
		<category><![CDATA[ジョージ・ワシントン]]></category>
		<category><![CDATA[セラピスト]]></category>
		<category><![CDATA[五輪書]]></category>
		<category><![CDATA[伝統文化]]></category>
		<category><![CDATA[武士道]]></category>
		<category><![CDATA[求道者]]></category>
		<category><![CDATA[精神科医]]></category>
		<category><![CDATA[釈迦に説法]]></category>

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		<description><![CDATA[「語り人、何やってるんだ！」 振り返ると、そこにいたのはジョージではなくニックだった。 「あんた、ひどい怪我をしてるじゃないか！ 肩もやったな。とにかく診療所に行こう」 「だいじょうぶ。それよりどうした？」 「傷の手当て [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「語り人、何やってるんだ！」<br />
振り返ると、<b>そこにいたのはジョージではなくニックだった</b>。<br />
「あんた、ひどい怪我をしてるじゃないか！<br />
肩もやったな。とにかく診療所に行こう」<br />
「だいじょうぶ。それよりどうした？」<br />
「傷の手当てが先だ。歩けるか？」<br />
「ニック、いいから話してくれ！」<br />
「ジョージのことで知らせがあったぞ」<span id="more-587"></span></p>
<p>（<a href="http://kataribito.net/04/04-5/">5章　「怒りの代償」</a>つづき）</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>「ありがとうニック、おかげで助かった」<br />
<b>基地の診療所</b>での治療を終え、<b>ずっと付き添ってくれたニック</b>に僕は礼を言った。</p>
<p>「こう見えて<b>オレらは軍人だ</b>。あのドクターも、こういう怪我の扱いには慣れてるさ」</p>
<p>あのあとすぐジョージのことで知らせが入り、ニックはそれを僕に伝えようと、<b>ジョギングコースを見渡せる芝生の広場</b>に駆けつけた。そこで<b>僕とジョガーの追走劇の一部始終を目撃した</b>らしい。僕が<b>最後の蹴りを決めようとした場面</b>でニックが登場したのは偶然ではなかった。</p>
<p>「あれ以上やると語り人、<b>あんたが加害者になっちまってた</b>ぞ。それにしても<b>胸のすくような見事なキックとパンチ</b>だったな。<b>カラテ</b>か？ 今度オレにも教えてくれよ」</p>
<p>ニックは<b>空手の型</b>の真似をしながら言った。</p>
<p>「それと、いいな語り人。ドクターも言ってたけど、<b>１週間の加療が必要</b>だ。<b>肩の脱臼は癖になりやすい</b>から、しっかり直すんだ。明日も必ずくるんだぞ。午前中ならオレが国境にいるからよ」</p>
<p>心配になって僕は、<b>治療費の支払い</b>と<b>パスポートの提示</b>について確認した。</p>
<p>「それについては心配しなくていい。オレがうまく処理しておく。一度、ジョージと来ただろう。オレが決裁した。<b>あんたは、我々の大事なゲストだ</b>。もう顏パスでいいよ」</p>
<p>「治療費は払うよ」と僕は言った。<b>治療費と薬代を取らない病院はない</b>。</p>
<p>「状況から見てあの<b>ジョガーの男</b>が払うべきだが、あんた名前も聞かないで帰しちゃったじゃないか。それに日本の病院じゃなくてこっちに連れてきたオレの責任だ。まあ、<b>園内の保安</b>については我々も責任を負ってる。細かいことは気にするな。オレの<b>決裁サイン</b>は絶対なんだ」そう言うとニックはダミ声を響かせガハハと笑った。</p>
<p>「僕が<b>かっとなったせい</b>でこんなことになってしまって、迷惑をかけて申し訳ない」僕はニックに素直に詫び、礼儀正しく頭を下げた。</p>
<p>「かっとなっただって？　オレの目は節穴じゃねぇよ。あんたは自分が怪我をさせられながら<b>敵に外傷を負わせないように攻撃していた</b>。それってあれか、<b>武士の情け</b>ってやつか？」</p>
<p>「そんなんじゃないよ。気が弱いだけだ。それに、<b>あの男は敵じゃない</b>」と苦笑いする僕に「<b>戦地じゃ通用しねぇ理屈</b>だな」とニックは片頬で笑って言った。</p>
<p>ニックがかつて<b>湾岸戦争の前線で戦った兵士</b>だということはジョージから聞いて知っていた。いつも陽気なニックだが、<b>この戦争のせいで心を病んでしまった</b>のだという。</p>
<p><b>人の命を奪い、人の身体と心を容赦なく傷つける。それが戦争だ</b>。そして<b>戦争は戦場だけじゃなく、そこらじゅうで日常的に繰り広げられている</b>。</p>
<p>「とにかく、感謝するならジョージにしな。オレはよ、ジョージに頼まれたんだ。<b>あんたに何かあったら助けてやってくれ</b>ってさ」</p>
<p><b>ジョージはニックに、ひとつ頼みごとをしてアメリカに帰って行った</b>。自分がいなくなったら語り人が事情を訊きにくるだろう。語り人は取り乱すかもしれない。<b>気をつけてあげてくれ</b>と。</p>
<p>「ありがとうニック。あなたこそ<b>心優しき戦士</b>だ」<br />
「だから、それじゃあ<b>戦地では通用しねぇ</b>って言ってんだろ」<br />
ニックは苦笑いして頭を掻いた。</p>
<p>「こんなことならやつの<b>セラピー</b>を受けとくんだったな」<br />
ニックは寂しそうな顔をして言った。<br />
「ジョージは<b>セラピスト</b>だったのか？」<br />
「なんだ、知らなかったのか？」</p>
<p>「それじゃあなぜ<b>門衛</b>についてたんだ？ <b>迷彩服</b>を着て」<br />
「ジョージはもともと<b>精神科の医師</b>で、志願して<b>軍医として入隊</b>したんだ」<br />
「軍医？」</p>
<p>「オレたちみたいな<b>外国の基地に駐屯する軍人の心のケアを担当する専門医</b>だよ。門衛はやつが<b>フィールドワーク</b>を望んだんだ。もっともあんたに会ってからは、あんたと話をするのが目的だったんだろうけどな」そう言うとニックはイヒヒと笑った。</p>
<p><b>ジョージが精神科医？　僕はジョージのことを何もわかっていなかった。</b></p>
<p>僕は自分が恥ずかしくなって、回れ右をして歩き出そうとした。「おい、語り人！」ニックの声にハッとしてもう一度回れ右をすると、僕は「明日も頼みます」と言って頭を下げた。</p>
<p>「ところであんた、<b>そんなに英語うまかったか？</b>」背中にニックの声を聞きながら僕はゲートを後にした。</p>
<p>帰り道、人けの少ない<b>森林の遊歩道</b>を痛めた足を引き摺りながら歩いていると、僕の思考はぐるぐる回り始めた。<b>ものを考えるにはやはり歩くのが一番だ。もう二度と走るまい</b>。そんなことを頭の片隅で誓ったりした。</p>
<p>「でも<b>きみはただの精神科医じゃない</b>」そう声に出して僕は言ってみた。すると目の前にジョージがいるような気がした。</p>
<p>ジョージ、<b>きみは知っていた</b>んだね。<b>お父さんが自分の誕生日に亡くなることを</b>。そうだろう？</p>
<p>僕は覚えている。一度<b>お父さんの話</b>をしたとき、きみはとても悲しそうな、絶望的な表情を見せた。あのとき<b>すでに知っていた</b>んだろう？</p>
<p><b>ジョージ・ワシントンを尊敬するきみのお父さん。</b></p>
<p>なぜ、お父さんのそばにいてあげなかった？ <b>お父さんの死を回避させることはきっときみにもできなかった</b>。そうだね？ ひとりでずっと苦しんでいたんだろう。なぜ僕に話してくれなかった？</p>
<p>いや、あの日きみは、おそらく<b>僕に話すつもりだった</b>。少なくとも<b>話したがっていた</b>。それなのに僕は調子に乗って演説をぶった。きみを<b>インチキ霊能者</b>呼ばわりして糾弾した。専門家のきみに向かって、なんて浅薄な論を展開したことか！</p>
<p><b>釈迦に説法</b>。愚かさもここに極まれりだ。僕のほうこそ、鼻持ちならない<b>インチキ探偵にしてエセ心理学者</b>だ。底が透けて見える<b>なんちゃって詩人にしてへっぽこ侍</b>だ。</p>
<p>いつだったかきみは、<b>宮本武蔵の『五輪書』</b>の英訳本の一文を諳んじてみせて、僕を驚かせた。そして<b>日本語の原文</b>を読んでくれと僕にせがんだ。</p>
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<p>「なんて<b>美しい響き</b>なんだ！」ときみは感動をあらわにした。</p>
<p>「これも読んだら？」と、あるとき<b>『武士道』</b>の<b>英語の対訳本</b>をプレゼントすると、きみは目を輝かせて喜んだ。</p>
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<p>僕たちは<b>英語と日本語を交互に音読</b>しては感想を述べ合い、解釈の問題を巡って熱い議論を戦わせたりした。</p>
<p>きみはいまの日本じゃなくて、<b>古き良き日本の伝統文化</b>をよく勉強していたね。僕が舌を巻くほどに。</p>
<p>僕が小さいころから<b>剣道・空手・柔道など武道をたしなんでいた</b>というと、僕のことを「<b>サムライ</b>」と呼んだ。<b>孤独でストイックで求道者のよう</b>だと。</p>
<p>「<b>サムライじゃなくて詩人だ</b>」僕が冗談でそう返すと、きみは<b>『五輪書』も『武士道』も、そのエッセンスにおいてすこぶる詩に近い</b>。<b>12</b><b>世紀ヨーロッパの吟遊詩人は騎士だった</b>。そう得意げに語って僕を感心させた。</p>
<p>ねえジョージ、この10か月間、<b>僕たちは良い友達だった</b>よね。これから<b>もっともっと良い友達になれた</b>よね。</p>
<p>おい、ジョージ！　僕たちは<b>38</b><b>度線をものともせず逢瀬を重ねた恋人同士</b>さながらの親友じゃなかったのか？ <b>もう任務は終わった</b>とばかりに、きみも僕を置いてアメリカに帰ってしまったのか？ <b>僕はまたひとり取り残されるのか？</b></p>
<p>きみと出会ったころ、僕は切なすぎる別離を経験したばかりだった。<b>自分の愚かさと傲慢さ</b>に呆れ果て、<b>人々の無神経さと馬鹿さ加減</b>にうんざりしていた。</p>
<p>そんな僕を、きみはいつも「だいじょうぶ。<b>きみはちゃんと愛したし、ちゃんと愛された</b>。だから後悔しちゃいけない」と言って慰めてくれた。</p>
<p>それなのに僕ときたら<b>自分の傷心</b>にかまけてばかりで、日本に来て間もない、<b>日本が大好きだというきみにちゃんと優しかった</b>だろうか。</p>
<p>ジョージ、<b>孤独なのはきみのほうだった。恐くて震えていたのはきみのほうだった。</b><b> </b><b>本当は人が恐くて、世間が恐くて、そしてそれ以上に自分を恐がっていたのはきみのほうだった。</b></p>
<p><b>きみは自分のことを多くは語りたがらなかった</b>。それは<b>セラピストとして僕に接していたから？</b> 僕が何か聞き出そうとすると「語り人のことをもっと知りたい」そう言って僕の話を引き出しては「<b>きみは何も悪くない</b>」と<b>僕の中に根強く巣食う罪悪感</b>を溶かしてくれた。</p>
<p>ああ、どうしてきみは、ひと言の侘びも言わせないまま行ってしまったの？<br />
僕にも言わせてくれ。「<b>ジョージ、きみは何も悪くない！</b>」</p>
<p>僕がいま<b>ものすごくきみに会いたがってる</b>って知ってるよね。だってきみは、<b>僕のこと何だって知ってるじゃないか！</b><b> </b><b>違う？</b></p>
<p>ジョージ、ニックから聞いたよ。<b>正式に除隊した</b>そうだね。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p><b>（７章につづく）</b></p>
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		<title>第4話5章　怒りの代償</title>
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		<pubDate>Fri, 14 Aug 2015 06:18:16 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第4話　ジョージの伝言]]></category>
		<category><![CDATA[ジョガー]]></category>
		<category><![CDATA[ジョギングコース]]></category>
		<category><![CDATA[ドーベルマン]]></category>
		<category><![CDATA[喧嘩]]></category>
		<category><![CDATA[建国記念日]]></category>
		<category><![CDATA[達筆すぎる]]></category>

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		<description><![CDATA[「そのとおりだ。違わないよ。それにしても見事な演説だ！」と拍手をしながら言った。「語り人にはかなわないね。きみこそ、何でもお見通しってわけだ」 ジョージの顏を見たのは、それが最後だった。 （4章「言葉の力」のつづき） &#038; [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「そのとおりだ。違わないよ。それにしても見事な演説だ！」と拍手をしながら言った。「語り人にはかなわないね。きみこそ、何でもお見通しってわけだ」<br />
ジョージの顏を見たのは、それが最後だった。<span id="more-579"></span></p>
<p>（<a href="http://kataribito.net/04/04-4/">4章「言葉の力」</a>のつづき）</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>「最近、ジョージの姿を見かけないけど」</p>
<p>ジョージを<b>ペテン師</b>呼ばわりしたことを謝りたくて、僕は毎日ゲートに足を運んだ。でも、そこにジョージの姿はなかった。</p>
<p>一週間が過ぎ、僕はたまらなくなって<b>古参の米兵ニック</b>に声をかけた。</p>
<p>「ああジョージのやつね、<b>親父さんが亡くなった</b>そうで、国へ帰っちまった」<br />
僕はびっくりして、それはいつのことかと尋ねた。</p>
<p>「覚えてるよ。<b>７月４日</b>。わが<b>ザ・ステイツの建国記念日</b>。そして<b>ジョージの誕生日</b>だよ。親父さんはその日に亡くなったそうだ。翌日、ジョージは帰ってったよ」</p>
<p>そういうとニックは急に何かを思い出したらしく大声を上げた。<br />
「おっと、いけねえ！忘れるところだった。<b>ジョージからあんた宛の手紙を預かってた</b>んだ。すぐ持ってくるから、ちょっと門番でもして待っててくれ。でも中には入らないでくれ。こっちはザ・ステイツだからよ」</p>
<p>手紙を持って小走りで戻ってくると、ニックはにやにやしながら言った。</p>
<p>「<b>ジョージはあんたのことが大好きだった</b>んだな。知ってるかい、あんたが来たらすぐ呼び出してくれって、いつもみんなに指令をかけてたんだよ。もしかしてあれか、ジョージとはそういう仲だったのか？　いつも楽しそうに二人で喋ってたよな」</p>
<p>ニックを無視して僕はその場で封を切った。<b>&#8220;To my dearest friend&#8221;</b><b>で始まる</b><b>達筆すぎる手書き文字</b>が目に飛び込んできた。読むまえにどうしても確認しておきたいことがあった。</p>
<p>「ねえ、もっと教えてくるかい。その日、ジョージの様子はどうだった？」<br />
ニックは怪訝な顔をしてみせたが、どうやら喋りたかったようで詳しく話してくれた。</p>
<p>「みんなでやつの<b>バースデーパーティー</b>を開いたんだけどさ、ジョージのやつ心ここにあらずって感じでよ、<b>ずっと暗い顔をして十字を切っては溜息をついてやがった</b>。主役がそんなんじゃ意味ねえだろ。日本人のいう、なんだ？　そう礼儀だ。 礼儀がなっちゃいない。そうだろう？　まあ、ふだんからへんてこりんな男だったけどな。 だから小一時間で切り上げた。やつを置いて、別の部屋で飲みなおした。今度はわが<b>ザ・ステイツを祝って</b>な。その間に国から知らせが届いたみたいだな」</p>
<p><b>一週間前の７月４日。僕がジョージを傷つけた日。<br />
</b>ニックの話を聞きながら、僕は無性に腹が立ってきた。</p>
<p>ニックに腹を立てているのか、自分に腹を立てているのか、とにかく<b>込み上げてくる怒りの衝動</b>を抑えるのがやっとだった。そのあと無性に悲しくなって、その感情は涙となって眼前を曇らせた。</p>
<p>「語り人、あんた泣いてるのか？」<br />
「ニック、もうひとつだけ教えてくれ。<b>ジョージのお父さんの死因</b>は何だ」</p>
<p>「よくは知らないけど、なんでも<b>突然死</b>だったらしいよ」<br />
「突然死？　それまではぴんぴんしてたってこと？」</p>
<p>「だろうな、少なくとも病気で寝込んでたって話は聞いてねぇよ。それより語り人、<b>あんたジョージと何かあったのか？　手紙にはなんて書いてあるんだ？</b>」</p>
<p>「ジョージは戻ってくるのか」<br />
「わかんねぇよ、そんなこと。ていうか、<b>オレたちにまだ報告はない</b>」</p>
<p>もういい、もうじゅうぶんだ。<br />
「ジョージのことで何かわかったらすぐ知らせてくれ」そう言い残して、僕は足早にその場を離れた。</p>
<p>「おい、<b>人にものを尋ねたら、ありがとうって言う</b>んだろ。それが礼儀ってもんだろう！ おい語り人、あんたが教えてくれたことだろ！」</p>
<p>ニックのダミ声を背中に浴びながら、僕は逃げるように走り去った。</p>
<p>そのまま<b>ジョギングコース</b>に突入し、ひたすら走った。走らずにはいられなかった。いつもは<b>ジョガーたちに追い抜かれても悠然と歩いていた</b>僕が。走りながら涙がとめどなく溢れ出た。苦しかった。<b>こんな心臓、破裂してしまえばいい</b>と思った。</p>
<p><b>許せ、ジョージ。ひどいことを言った僕を。<br />
</b><b>いやジョージ、僕を許すな。</b></p>
<p>きみはずっとあんなことを言われ続けてきたんだよね。それを<b>理解者であるはずの僕まで</b>…。</p>
<p>わかってる。<b>きみの能力はあんな小賢しい理屈で説明できるものじゃない</b>。ほんの冗談のつもりだった。だけど<b>きみには絶対言ってはいけなかった冗談</b>。しかもきみの誕生日に。あろうことかお父さんが亡くなる日に！</p>
<p>なぜあんなふうに言ってしまったんだろう。<br />
きっと僕は、<b>きみと喧嘩がしたかった</b>んだ。</p>
<p>自分のことを恐くないかって、きみはいつになく真剣に訊ねた。<b>本当は恐かったのかもしれない。きみのことが</b>。あんなに無邪気で、優しくて、思いやりに溢れるきみのことが。<b>そんなきみと喧嘩する必要がいったいどこにある？</b><b></b></p>
<p>走っても怒りは無くならなかったし、悲しみは１グラムも減らなかった。</p>
<p>走ることは僕にとって、<b>追いかけることであり逃げること</b>だった。僕は追うのも逃げるのも嫌だった。<b>走ることは自分への罰</b>だ。</p>
<p>ジョギングコース１キロ地点あたりで、ひとりのジョガーに追い抜かれた。ときどき見かける<b>30</b><b>歳代前半のジョガールックに身を包んだ筋肉質の男</b>で、男は追い抜きざま「邪魔だ。おめえは歩いてろ」と放言した。</p>
<p><b>いつも歩いているのになぜか滅茶苦茶に走っている</b>僕が目障りで、悪態をついたのだと理解できた。咄嗟に僕は「黙れ！」と返した。</p>
<p>男は５メートル先で速度を緩めると、後ろから猛スピードで走ってくる僕の足に素早く自分の足を引っかけた。<b>不意をくらわされ体勢を崩された僕の身体はもんどりうって前方に投げ倒された</b>。</p>
<p><b>受け身をして顔面と頭は守った</b>が地面はコンクリートだ。受け身をした左肘から肩にかけて鈍い痛みが走った。</p>
<p><b>僕の中の怒りの衝動はまだ消えていなかった</b>。平然と走り去る男を全速力で追いかけた。追いかけられていることに気づくと男はスピードを上げた。<b>ウォーカーの僕にジョガーの自分が負けるはずがない</b>と思ったのだろう。</p>
<p><b>左肘は皮膚が擦り剥け血にまみれた白い骨が露出していて、肩は激しい打撲のため痛みで動かない</b>。それでも僕は男を追って走った。至近距離まで追い詰めると、間合いを見定め男の背中に<b>強烈な飛び蹴り</b>を浴びせた。</p>
<p><b>コース内側の芝生の広場</b>に男は吹っ飛び、そのまま転がり落ちた。コンクリート地面に倒れ込まないように<b>蹴りの角度を調整する冷静さ</b>は、僕にもまだ残っているようだった。</p>
<p><b>男に怪我はないはずだ</b>。飛び蹴りを決めた僕のダメージのほうが大きかった。着地の衝撃で足首を痛めたようだ。これで逃げおおせるとみて男は再び走り出した。<b>もう追いかけられない！</b>僕が観念したそのときだった、男の前に長いリードに繫がれたドーベルマンが飛び出してきた。それを避けようと男は体勢を崩した。</p>
<p><b>不自然な転び方</b>をしたので足をくじいたのだろう。男は立ち上がることができなかった。僕は使い物にならなくなった左腕をかばいながら、ゆっくり男に近づいた。そして<b>恐怖に慄く表情</b>で僕を見ている男に「立て」と命じた。</p>
<p>「悪かった」と男は言った。<br />
「いいから立て」もう一度低い声で命じた。</p>
<p>恐る恐る立ち上がった男のみぞおちに、僕は腰を落とし無言で<b>中段の正拳突き</b>を食い込ませた。立ったばかりの膝は崩れ落ち、男は両手で腹を押さえたまま前のめりに蹲った。</p>
<p>「これがさっきおまえがやった<b>不意打ち</b>だ」と僕は男に言った。「危ないよ。頭を打ってたらどうなってたと思う？」</p>
<p>すでに戦意は喪失していたが、僕の怒りはまだ収まっていなかった。ジョージに対する<b>世間の無理解</b>が許せなかった。ジョージに<b>言葉の力を悪用</b>した自分が許せなかった。そしてこの男の<b>堪え性のない軽率な悪意</b>が許せなかった。</p>
<p>「ほら、立てよ」と言うと、男は泣き出した。口から涎を垂らしながら「もう勘弁してください」と許しを乞うた。</p>
<p><b>とどめを刺すつもりはなかった</b>。損傷を受けた左腕の代償を求めようと、<b>四つん這いになっている男の左腕を蹴り上げようとした</b>そのときだった。背後から英語で僕を呼ぶ声が聞こえた。<b>ジョージ？　ジョージなのか？</b></p>
<p>「語り人、何やってるんだ！」<br />
振り返ると、<b>そこにいたのはジョージではなくニックだった</b>。<br />
「あんた、ひどい怪我をしてるじゃないか！ 肩もやったな。とにかく診療所に行こう」</p>
<p>「だいじょうぶ。それよりどうした？」<br />
「傷の手当てが先だ。歩けるか？」<br />
「ニック、いいから話してくれ！」<br />
「ジョージのことで知らせがあったぞ」</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（<b>６章につづく</b>）</p>
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		<title>第4話4章　言葉の力</title>
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		<pubDate>Fri, 07 Aug 2015 12:50:18 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第4話　ジョージの伝言]]></category>
		<category><![CDATA[ニコラス・ケイジ]]></category>
		<category><![CDATA[不思議な能力]]></category>
		<category><![CDATA[将来設計]]></category>
		<category><![CDATA[英語脳]]></category>
		<category><![CDATA[言語脳]]></category>
		<category><![CDATA[超常的]]></category>

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		<description><![CDATA[大きくなった僕は、アメリカ人と喧嘩するどころかアメリカンガールに恋をして失恋して、そして今は変な米兵に弱みを見せまくり、やつといることに奇妙な安らぎさえ覚えるていたらくだ。そんな軟弱な息子を、父は天国から苦々しい思いで見 [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>大きくなった僕は、アメリカ人と喧嘩するどころか<b>アメリカンガールに恋をして失恋して</b>、そして今は<b>変な米兵に弱みを見せまくり、やつといることに奇妙な安らぎさえ覚えるていたらく</b>だ。そんな軟弱な息子を、父は天国から苦々しい思いで見ているのだろうか。<span id="more-571"></span><br />
（<a href="http://kataribito.net/04/04-3/">3章「日本のアメリカ」</a>）のつづき）</p>
<p>年が明けても僕たちは二日とあけず顏を合わせた。</p>
<p><b>基地のゲートを挟んで向かい合って言葉を交わす</b>。１時間以上話し込むこともあれば、2.3分で切り上げざるを得なかったり、ただ笑顔を交わすだけの日もあった。ジョージだって仕事をしているのだ。もちろん僕だって少しは忙しい。</p>
<p>おもしろいのは、目の前にいるのに<b>ジョージがいるところはアメリカで、僕がいるところは日本</b>ということだった。ジョージはそれをネタにした。</p>
<p>「僕たちは<b>38</b><b>度線に阻まれた恋人同士</b>みたいだね」<br />
「<b>問題発言を含む笑えないジョーク</b>だ」<br />
「毎日のように会いにきてくれるじゃないか」<br />
「きみこそ、いつも僕を待ってるじゃないか」</p>
<p>そうだよ。僕は毎日ジョージに会いたかった。初めて会った日、彼が予言したとおり、たしかに<b>僕はジョージを求めていた</b>。</p>
<p>それと同時に<b>男女の恋愛問題や、そこから派生する将来設計</b>といった煩わしい問題から自由になっていた僕は、ひたすら仕事に専心した。<b>声と言葉の力だけを信じて</b>。</p>
<p>どんな案件も気を抜くことなく全身全霊で打ち込んだ。以前は「<b>いい声ですね</b>」としか言われなかった収録現場で「<b>鳥肌が立ちました</b>」と言われるようになった。これって褒め言葉だよね？</p>
<p>自分で選択して飛び込んだ業界。<b>プロでも食べていけるのは３％といわれる、努力が報われることの極めて少ない業界</b>。<b>免許も資格もなく、仕事の保証などどこにもないリスキーな業界</b>。すでにベテランに仕分けされるほどの年月を、僕はここで闘ってきた。</p>
<p>ジョージと出会う前、プライベート面ばかりか仕事面でもスランプに陥っていた僕は、<b>自分の居場所</b>も<b>自分の言葉</b>さえも見失っていた。台本を読んでも言葉が上滑りして、何を読んでいるのかさっぱりわからない始末だった。</p>
<p>それがジョージと会話することで、僕の<b>言語脳</b>はどんどん研ぎ澄まされていった。<b>英語脳を活性化させた</b>ことが大きかったと思う。また英語を喋ることで、<b>日本語の発声</b>はこれまでにない響きを獲得していた。</p>
<p>そして何より、ジョージは<b>国境の向こう側</b>でいつも僕を待ってくれていた。<br />
<b>利害関係も力関係もない</b>。その純粋性が、僕を幸せな気持ちにしてくれた。<br />
<b>僕は独りだったけど一人じゃなかった。孤独だったけど寂しくはなかった。</b></p>
<p>そうして、引き籠るにはうってつけの<b>冬が終わり</b>、僕にとってはいささか面映ゆい<b>春が過ぎ</b>、恵みの<b>雨季がやってきた</b>。僕はこの季節が好きだ。ジョージにあげようと庭に咲くガクアジサイを何本か摘み、雨の中カッパを着て国境のゲートに向かった。</p>
<p>その日、ジョージの表情は暗かった。<br />
「語り人、<b>きみは僕のことが恐くないのか？</b>」<br />
「いきなりどうしたんだ？」<br />
「……」ジョージは黙ったまま俯いた。<br />
「きみの<b>不思議な能力</b>のこと？」</p>
<p>僕は<b>突出した本物の能力</b>に対してはそれが非常に特殊なもの、たとえば<b>超常的なもの</b>であれ<b>脳障害がもたらすもの</b>であれ、<b>畏敬の念をもって素直に受け止める公正さ</b>は持ち合わせているつもりだった。</p>
<p>「あのさ、世の中にはいろんな人がいるよ。何桁の数字もたちどころに暗記してしまう人。一度聴いた楽曲を正確に再現できる人。<b>絶対音感</b>を持っている人はどんな音もドレミで聴こえるそうだ。これは恐いことだと思うよ。どこにいても雑多な音が溢れていてさ、気軽に街も歩けやしない。もっと言おうか？」</p>
<p>「もういいよ。ありがとう」 ジョージの顔に輝きが戻った。「語り人がわかってくれればそれでいいんだ」<br />
「あのさジョージ、何が視えても、もう余計なことを言っちゃダメだよ。また誰かに苛められた？」<br />
「まあ、慣れてるけどね…」<br />
図星だったようだ。</p>
<p>落ち込んでいるジョージを見ていると、僕の中で唐突に悪戯心が湧き起った。ジョージと親しく話をするようになって10か月、僕の<b>英語脳</b>は大学生レベルまでには戻っていたと思う。だから僕は、きっと調子に乗っていたんだ。</p>
<p>「ああ、そうだよジョージ。僕はわかってる。きみの<b>能力の正体</b>をね」</p>
<p><b>名探偵</b>にでもなったつもりだったのか、僕は芝居っ気たっぷりに言ってみた。</p>
<p>「きみの能力は<b>簡単な心理学</b>だよ。つまりきみは、<b>人の顔色を読み取る能力</b>にとても優れている。それともうひとつ、きみは<b>話の誘導</b>が実にうまい。人の感じやすい部分をピタリと言い当ててるみたいだけど、でも本当は<b>多くの情報を相手の話の中から巧みに引き出している</b>」</p>
<p>僕はたぶん、自分の<b>言葉の力</b>を試そうとしていた。</p>
<p>「たとえばきみは、僕の仕事を言い当てようと<b>ニコラス・ケイジの言葉</b>を引用したね。<b>それは役者の言葉だ</b>と僕はいなした。するときみは、すぐに<b>表現者</b>と言い換えた。<b>人は誰もが表現者</b>だよ。またきみは、相手の何かを指摘したあと『違う？』と確認を促す。人はこの<b>念押し確認</b>に弱いんだ。『そのとおりだ。違わない』となる。これらは<b>心理学の誘導法</b>で説明できる」</p>
<p>芝居なのか芝居じゃないのか、もうわからない。僕は自分を止めることができなかった。</p>
<p>「もっと言おうか。僕がボストンの女の子と付き合った事実は、<b>僕の英語を聴けばわかる人にはわかる</b>ことだよ。アメリカに行ったことがないのは、<b>僕の英語がその子の影響しか受けていない</b>ことから容易に判断できるだろう。<b>僕の話す英語が</b><b>30</b><b>年前と変わっていない</b>からだ。つまり<b>僕の英語脳は青臭い</b><b>19</b><b>歳のまま成長が止まっている</b>ということ。そこで身長がぴたりと止まったみたいにね。きみはそれに気づいた」</p>
<p>ひと呼吸置いて、僕は自嘲するように続けた。</p>
<p>「ていうか、僕はうっかりヒントをあげちゃったよね。<b>もう四半世紀以上、まともに英語を話していない</b>って」</p>
<p>そうして僕は、泣きそうになりながら<b>言葉の銃口</b>をジョージに向けると、とどめを刺した。</p>
<p>「<b>それがきみの能力の正体だ。インチキ教祖とかエセ霊能者がよく使う手口だよ。違う？</b>」</p>
<p>ジョージは呆気にとられたような顔で目を見開いて僕を見ていたが、一瞬だけ悲しげな、困ったような微笑を浮かべた。そして文字どおり瞬きをする間に普段の笑顔を取り戻すと、今度は声をあげて笑った。</p>
<p>「そのとおりだ。違わないよ。それにしても見事な演説だ！」と拍手をしながら言った。「語り人にはかなわないね。きみこそ、何でもお見通しってわけだ」</p>
<p>ジョージの顏を見たのは、それが最後だった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（５章につづく）</p>
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		<title>第4話3章　日本のアメリカ</title>
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		<pubDate>Mon, 03 Aug 2015 06:32:38 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第4話　ジョージの伝言]]></category>
		<category><![CDATA[アメリカンガール]]></category>
		<category><![CDATA[強迫観念]]></category>
		<category><![CDATA[治外法権]]></category>

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		<description><![CDATA[それにしても、この黒人にしては華奢でハンサムな男は、いったい何者なのだ。僕の過去や現在が視えるとでもいうのか。「たしかに視えている」としかいいようのない事態に、僕はひどくうろたえた。 （2章　遠いアメリカのつづき） ジョ [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>それにしても、この黒人にしては華奢でハンサムな男は、いったい何者なのだ。僕の<b>過去や現在が視える</b>とでもいうのか。「<b>たしかに視えている</b>」としかいいようのない事態に、僕はひどくうろたえた。<span id="more-566"></span></p>
<p>（<a href="http://kataribito.net/04/04-2/">2章　遠いアメリカ</a>のつづき）</p>
<p>ジョージは<b>僕のことをよく知っていた</b>。<br />
これまで<b>僕の身に起こったいくつかの重大な出来事や選択した物事</b>、あるいはまた、<b>三日後に起こるであろうハプニング</b>などを次々に言い当て、僕を驚かせた。</p>
<p>あるときなんかは、<b>翌日起こるはずだったいささかやっかいなトラブル</b>を、ジョージの忠告のおかげで未然に回避することさえできた。けれども、僕はジョージに苦言を呈した。</p>
<p>「教えてくれたことには感謝してるよ。でも、もう言わないでくれるかな。自分で解決したいんだ。<b>何が起こるかわからないのが人生</b>だろ？　<b>僕はこの人生を修行の場だと思ってる</b>んだ」</p>
<p>「修行の場か。<b>どんな経験も甘んじて受ける</b>。語り人らしいね。みんな僕を利用するか、気味悪がって逃げていくかどっちかなのに」</p>
<p>それからというもの、僕たちは会えば肩を叩き合い、いろいろな話をするようになった。ジョージの屈託のない笑顔を見ていると心が軽くなり、気づけばいつのまにか、誰にも言えないようなことまで打ち明けていた。</p>
<p>12月、<b>街がクリスマスの狂騒に包まれる浮かれた季節</b>がやってきた。それは<b>年に一度決まって襲ってくる強迫観念の発作</b>のように僕には思えた。</p>
<p>そんなとき、ジョージの特別な計らいで<b>米軍基地</b>に招待された。</p>
<p>そこは<b>横浜市民</b>とはいえ、おいそれと日本人（外国人）が立ち入ることは許されない領域。僕たち住民が「<b>フェンスの向こう側</b>」と呼ぶ未知のエリアだ。その意味でここもまた、<b>近くて遠いアメリカ</b>だった。</p>
<p>「<b>入国</b>」するためには、まずは日本を「<b>出国</b>」しなければならなかった。パスポートを持ってくるようジョージに言われたときはびっくりしたが、考えてみれば当然といえば当然のことだった。</p>
<p>たしかに<b>そこはアメリカ</b>だった！</p>
<p>住宅棟とは別に野球やサッカーができるグラウンド、室内のトレーニングジムにプール、テニスコートも三面ある。アメリカの食品や日用品などを揃えたスーパーマーケットもあった。</p>
<p>戸外でバーベキューパーティーが頻繁に行われているらしく、道具類が散乱するスペースがあちこちにあった。そんなところも<b>いかにアメリカ</b>だった。</p>
<p>驚いたのは……いや、やめておく。<b>フェンス内は治外法権</b>とはいえ、機密事項に抵触する恐れがある。これ以上の描写は控えるとしよう。</p>
<p>ジョージに連れられ広大な基地内を見学しながら、僕は父のことを思い出していた。むかし父が言った言葉を。</p>
<p>「<b>日本は戦争に負けるわけだ</b>」</p>
<p>1960年代初頭、僕の父は仕事で山口県の<b>岩国基地</b>を訪れた。「<b>そこはまさに別世界だった</b>」。そんな話を、のちに小学校高学年のころ聞かされたことを覚えている。</p>
<p>「当時の日本人が、新しい生活の象徴といわれた<b>三種の神器</b>（白黒テレビ・冷蔵庫・洗濯機）を持つことが夢だった時代、そこには、<b>日本のアメリカにはぜんぶがあった</b>」と父は言った。</p>
<p>広いリビングには巨大な冷蔵庫にカラーテレビまである。靴を履いたまま室内に通された父は、<b>ある種の罪悪感とともに圧倒的な敗北感を味わった</b>という。</p>
<p>何がきっかけで父がそんな話をしたのかは覚えていないが、ふだん子どもとろくに言葉も交わさなかった昭和ひと桁生まれの厳格な父が、珍しく上機嫌で饒舌だったことが僕には嬉しくもあり、記憶に焼き付いているのだ。</p>
<p>「いいか、よく覚えておけ」と父は少し怖い顔をして言った。「父さんは<b>アメリカが嫌いだ</b>。でも<b>喧嘩するにはやつらの言葉が必要だった</b>。もっとも父さんは、追従笑いをしてペコペコ頭を下げてばかりで、喧嘩もできやしなかった。<b>おまえは大きくなったら、やつらと対等に喧嘩しろ</b>」</p>
<p>大きくなった僕は、アメリカ人と喧嘩するどころか<b>アメリカンガールに恋をして失恋して</b>、そして今は<b>変な米兵に弱みを見せまくり、やつといることに奇妙な安らぎさえ覚えるていたらく</b>だ。そんな軟弱な息子を、父は天国から苦々しい思いで見ているのだろうか。</p>
<p>「因縁浅からぬ話だね。半世紀以上の時を経て、父に継いで息子が<b>日本のアメリカに降り立った</b>わけだ」僕の話に頷きながら耳を傾けていたジョージが感慨深げに言った。</p>
<p>「まるで月に降り立ったみたいな言い方だな」僕がそう返すと、<br />
「まあ、そのようなもんだろ」とジョージは笑いながら言った。</p>
<p>「語り人、きみは<b>もう一生アメリカに行くことはない</b>と思ってた。違う？」<br />
「違わないよ」僕は素直に認めた。</p>
<p>「<b>アメリカと日本が辿ってきた歴史</b>はともかく、きみは今まさにアメリカにいる。アメリカにきたんだよ。こんな<b>効率的な体験</b>ってあるかい？」<br />
「効率的ではあるけど<b>感動的とはいえない</b>な。パスポートを出したのに飛行機にも乗ってないんだよ。まるで<b>どこでもドア</b>から入ってきたみたいだ」</p>
<p>「どこでもドア？」<br />
「うん。<b>ドラえもん</b>。アニメ・映画にもなっている<b>日本が誇る国民的マンガ</b>」<br />
「おお、ドラえもん！ ここの子どもたちも大好きだよ。未来からやってきたネコ型ロボットだろ」</p>
<p>僕は<b>ドラえもんの道具</b>をいくつか説明してあげた。ジョージは興味しんしんといった様子で聴いていたが、どうやらひとつの道具にしか興味がないようだった。僕の下手くそな英語のせいかもしれない。</p>
<p>「どこでもドアか、それがあればなあ」。溜め息まじりにそう言うと、やがて下を向いてぽつんと呟いた。「結局、僕は<b>誰ひとり救えない</b>んだ」</p>
<p>このときどうしてジョージの心情に寄り添ってあげることができなかったのか。こんな意味深長な言葉をどうして僕はやり過ごしたのか。もっと自分に余裕があったら、もっと英語で深くものを考えられたら……。今となっては悔やまれてならない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（3章につづく）</p>
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		<title>第4話2章　遠いアメリカ</title>
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		<pubDate>Tue, 21 Jul 2015 12:06:27 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第4話　ジョージの伝言]]></category>
		<category><![CDATA[BBC英語]]></category>
		<category><![CDATA[ニコラス・ケイジ]]></category>
		<category><![CDATA[ベルベットボイス]]></category>
		<category><![CDATA[ボストン]]></category>
		<category><![CDATA[交換留学生]]></category>

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		<description><![CDATA[「そんなに悲しいのは、本気で愛したからでしょ？」 「それ、どういう意味？　僕に言ってるの？」 「ほかに誰がいる。だいたい、きみが僕を呼んだんだよ」 「なに？　呼んだ覚えはないけど」 「じゃあ、きみが僕を求めた、と言い換え [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「<b>そんなに悲しいのは、本気で愛したからでしょ？</b>」<br />
「それ、どういう意味？　僕に言ってるの？」<br />
「ほかに誰がいる。だいたい、<b>きみが僕を呼んだ</b>んだよ」<br />
「なに？　呼んだ覚えはないけど」<br />
「じゃあ、<b>きみが僕を求めた</b>、と言い換えようか」</p>
<p>そう言うと男は、その無邪気な笑顔に真っ白な歯を添えた。<br />
それがジョージとの最初の出会いだった。<span id="more-558"></span></p>
<p>（<a href="http://kataribito.net/04/04-1/">1章「米兵ジョージ</a>」のつづき）</p>
<p>最初に言ったように、僕の<b>ウォーキングコース</b>はこの公園だけじゃない。ここに来るのは週２～３回。曜日も時間もばらばら。ジョージが門衛につくローテーションも知らない。でも<b>なぜかいつもジョージの姿はそこにあった</b>。</p>
<p>彼の名前を知ったのは２回目に会ったときだった。</p>
<p>「日本人みたいだろう」と言って白い歯を見せた。<br />
「ジョージ・ワシントン」と僕は言ってみた。<br />
「ああ、尊敬している。親父がね」<br />
「君は違うの？」<br />
「わからない。時代が違うしね」<br />
ジョージの表情が一瞬、曇った。</p>
<p>「ところで、聞かせてくれるかな」<br />
最初に彼が放った<b>言葉の真意</b>を知りたかった。</p>
<p><b>そんなに悲しいのは、本気で愛したからでしょ？</b></p>
<p>彼が看破したとおり、そのときの僕は<b>生涯守り抜くはずだった人との別れ</b>を経験したばかりで、我と我が身を責め苛んでいた。</p>
<p>「きみに<b>ニコラス・ケイジの言葉</b>を贈るよ。<b>『僕は本気で愛して失恋したい。欲しいのはその経験だ』</b>」そういうとジョージはにっこり笑った。</p>
<p>「それは<b>役者の言葉</b>だろう」僕は少し投げやりな口調で言った。<br />
「きみは違うの？」ジョージは首を傾げた。<br />
「……」<br />
「役者だけじゃない。表現者の宿命だ。<b>魂は経験によってのみ磨かれる</b>んだ。好むと好まざるとにかかわらずね。きみはいつだって<b>あまり賢明とはいえない、あまり効率的とはいえない経験</b>を好んで求めた。違う？」</p>
<p>ちがうちがう、そうじゃない。<br />
ちがうちがう、…ちがわない。<br />
たしかに僕にはその傾向が強くある。</p>
<p>「<b>僕が君を求めた</b>って、どういうこと？」<br />
「そのうちわかるよ。ところで、まだ名前を聞いてなかったと思うけど」<br />
「失礼」と言って、僕はファーストネームを名乗った。</p>
<p>「わお、グレイト！　君は日本一の人なのか！」<br />
「名前だけだ。だから語り人と呼んでくれ」と僕は言った。</p>
<p>それから僕たちは、自分の名前にまつわる悲喜こもごもの歴史、簡単にいうと<b>名前で得したこと・損したこと</b>などを面白おかしく披露し合った。</p>
<p>ジョージの英語は<b>西海岸で話される標準的な米語</b>で、正確で訛りもない。とはいえ相当な早口で、脳が言葉の意味を咀嚼するのに少なからず時間を要した。まともに英語を話さなくなってから四半世紀になる。だから<b>噛んで含めるように話してくれ</b>と頼んだ。</p>
<p>「君の英語は若々しくて美しいよ。<b>東海岸</b>だね。<b>学園都市</b>。そう、<b>ボストン</b>の香りがする」とジョージはゆっくり刻むように言った。「でも君は、<b>アメリカには行ったことがない</b>、だろう？」</p>
<p>たしかに僕はアメリカに行ったことがない。これまで幾度となく渡米の機会は巡ってきたが、なぜかいつもすんでのところで邪魔が入り計画は頓挫した。</p>
<p>でも、なぜわかる？<br />
「でも、<b>ボストンから来た女の子</b>と付き合ったことがある、違う？」</p>
<p>もうわかったよ。そうだ。大学生のとき僕の通う大学に、ボストンの大学から<b>交換留学生</b>としてやってきた女の子がいた。彼女の<b>お世話係</b>を任されたのが事の始まりだった。</p>
<p><b>僕たちはたちまち惹かれ合った。</b><b></b></p>
<p>彼女の屈託のない笑顔と、その笑顔を裏切る<b>愁いを帯びたベルベットボイス</b>に、僕は一発でやられてしまった。<b>利発というより聡明で、活発というより思慮深い彼女</b>に夢中になった。</p>
<p>ポップなリズムでまくしたてる鼻にかかったべちゃっとした米語ではなく、どちらかといえば<b>BBC</b><b>英語</b>に近いがそれでいてスノッブさを感じさせない、<b>クラシカルで気品のある英語を話す彼女</b>に恋をした。</p>
<p>そして彼女は、僕の黒い瞳と黒い髪が好きだと、ギターを弾くその指と、優しくて深い声、本を読んでいるときの横顔が好きだと言った。</p>
<p>そのくせいつも「<b>本と私、どっちが好きなの！</b>」と駄々をこねては僕の手から本をひったくり、そうして僕が教えた日本語「<b>書を捨てよ、町へ出よう</b>」をしつこく何度も復唱し、いやがる僕を外へ引っ張り出した。</p>
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=amebablog05d-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4041315220&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
<p><b>僕たちは文字どおり恋に落ちた。魂の物理法則に従って。</b><b></b></p>
<p>一年という留学期間は、<b>恋という熱病に侵された二人</b>にはあまりに短すぎた。僕たちは、どちらかがどちらかの国に住むという選択肢を真剣に話し合った。日本かアメリカか…。離れたくない思いは一緒だったはずだ。</p>
<p>「やっぱりあなたが交換留学生としてボストンにきて！ そうすれば少なくともあと一年は一緒にいられるわ」</p>
<p><b>少なくともあと一年？</b><br />
彼女は&#8221;long time&#8221;でも&#8221;forever&#8221;でもなく&#8221;at least one more year &#8221; と言った。彼女のこの言葉に、19歳の僕は勝手に傷ついたことを覚えている。</p>
<p>結果的に僕は交換留学生の資格を得ることは出来なかったし、彼女も期間を超えて日本に留まることは許されなかった。<b>アメリカは、僕にとってこんなにも近いのに、こんなにも遠かった。</b></p>
<p>「うん、そのときも辛い別れだったよね。<b>僕たちは選べないんだよ。恋の始まりも、終わりもね</b>」と、ジョージはまるで「両手の指は10本だよね」みたいな、それが当然であるような言い方をした。</p>
<p>「しかたないさ。二人はまだティーンエイジャーだったし、おとなが決めたことに従うしかなかったんだから」</p>
<p>もう三十年も前のことなのに、僕の中の忘れていた感情が、舌が酸味の刺激を敏感に捉えるように甦ってきた。 それを追い払おうと、僕は激しく頭を振った。</p>
<p>それにしても、この黒人にしては華奢な体型のハンサムな男は、いったい何者なのだ。僕の<b>過去や現在が視える</b>とでもいうのか。「<b>たしかに視えている</b>」としかいいようのない事態に、僕はひどくうろたえた。</p>
<p><b><br />
（３章につづく）</b></p>
<p>&nbsp;</p>
]]></content:encoded>
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		</item>
		<item>
		<title>第4話1章　米兵ジョージ</title>
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		<comments>http://kataribito.net/04/04-1/#comments</comments>
		<pubDate>Wed, 15 Jul 2015 11:44:37 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第4話　ジョージの伝言]]></category>
		<category><![CDATA[ウォーキングスピード]]></category>
		<category><![CDATA[ジョギング]]></category>
		<category><![CDATA[ダイエット]]></category>
		<category><![CDATA[バリトン]]></category>
		<category><![CDATA[健康]]></category>
		<category><![CDATA[根岸森林公園]]></category>
		<category><![CDATA[驚嘆]]></category>

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		<description><![CDATA[根岸森林公園── ここでは観光ガイドしての僕の出番はない。ただひたすら歩くのみ。 しかし、ここにも語るべき物語はある。今回はここで起きた不思議な話をしよう。もっとはっきり言えば、これは語り人に起こった奇跡の物語だ。 （序 [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p><b>根岸森林公園</b>──<br />
ここでは観光ガイドしての僕の出番はない。<b>ただひたすら歩く</b>のみ。<br />
しかし、ここにも<b>語るべき物語</b>はある。今回はここで起きた<b>不思議な話</b>をしよう。もっとはっきり言えば、これは語り人に起こった<b>奇跡の物語</b>だ。<span id="more-552"></span></p>
<p>（<a href="http://kataribito.net/04/04-prologue/">序章「ヨコハマウォーク」</a>のつづき）</p>
<p>ここ根岸森林公園は敷地内に<b>米軍の基地</b>がある。<br />
ジョギングコースに入るとき、基地のゲート前を通過する。ゲートには<b>迷彩服姿の米兵</b>が交代で門番を務めている。長年この門前を通っているので、ほとんどの米兵が顔見知りだ。</p>
<p>そのなかに、ジョージという名の新入りの男がいた。カリフォルニア州サンディエゴからきたハンサムな黒人。</p>
<p>彼には<b>おそろしい能力</b>がある。おそろしいといって悪ければ「<b>驚嘆すべき</b>」と言い換えてもいい。</p>
<p>ジョージと初めて会ったのは去年の初秋だった。ときおり夏が未練がましく舞い戻ってきたりする季節で、僕は帽子を目深に被り、いつものようにゲート前を通り過ぎようとしていた。</p>
<p>「かっこいいキャップだね。とてもよく似合ってる」<br />
聞きなれない声だと思って一瞥すると、はたして<b>新入りの米兵</b>だった。</p>
<p>繰り返すが、<b>僕のウォーキングスピードは速い</b>。どのくらい速いかというと、競歩の選手にはむろん敵わないにしても、たとえばダイエットのために決死の形相で走っているポッチャリ女性を軽くスルーしてしまう、つまりそのくらいの速さ。</p>
<p>とにかく僕が言いたいのは、ここにきているのは<b>ジョギングやウォーキングが目的じゃない</b>ってこと。<b>健康やダイエットのために歩いているわけじゃない</b>んだ。</p>
<p>だから、ジョギングスーツやランニングパンツなんか着用しないよ。だって、いかにもって感じでカッコわるいじゃないか。</p>
<p>なんていうか、<b>集中するために歩いてる。孤独と向き合うために歩いてる。考えるために歩いてる。考えないために歩いてる。</b>うまく言えないけど、そんな感じ。</p>
<p>だから新人門番の呼びかけにも立ち止まることなく「サンキュー、きみの帽子もなかなかだよ」と言って通り過ぎた。</p>
<p>３キロのコースを例のスピードで一周して再びゲート前にくると、その男がいた。ずっと待ち構えていたように僕のことを見ている。いやな予感。</p>
<p>彼とおしゃべりをする気もなかったのでキャップをさらに目深に被り、そのまま通り過ぎようとした。男の<b>響きのあるバリトン</b>が僕を捉えた。</p>
<p>「<b>そんなに悲しいのは、本気で愛したからでしょ？</b>」</p>
<p>思わず足を止めて男を見た。とても無邪気な笑顔。その表情から悪意は読み取れない。真意を確かめたくて訊いてみた。</p>
<p>「それ、どういう意味？　僕に言ってるの？」<br />
「ほかに誰がいる。だいたい、<b>きみが僕を呼んだ</b>んだよ」<br />
「なに？　呼んだ覚えはないけど」<br />
「じゃあ、<b>きみが僕を求めた</b>、と言い換えようか」</p>
<p>そう言うと男は、その無邪気な笑顔に真っ白な歯を添えた。<br />
それがジョージとの最初の出会いだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p><b>（２章へつづく）</b></p>
]]></content:encoded>
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		</item>
		<item>
		<title>第4話序章　ヨコハマウォーク</title>
		<link>http://kataribito.net/04/04-prologue/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=04-prologue</link>
		<comments>http://kataribito.net/04/04-prologue/#comments</comments>
		<pubDate>Mon, 13 Jul 2015 03:19:44 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第4話　ジョージの伝言]]></category>
		<category><![CDATA[ベイブリッジ]]></category>
		<category><![CDATA[中華街]]></category>
		<category><![CDATA[山下公園]]></category>
		<category><![CDATA[根岸森林公園]]></category>
		<category><![CDATA[横浜港]]></category>
		<category><![CDATA[港の見える丘公園]]></category>

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		<description><![CDATA[朝夕、時間に余裕のあるとき1、2時間の散歩に出る。 散歩というよりウォーキング。ウォーキングというよりジョギングに近いかもしれない。僕のウォーキングは、つまりそのくらい速い。速いがもちろん競歩じゃない。 コースはだいたい [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>朝夕、時間に余裕のあるとき1、2時間の散歩に出る。<br />
<b>散歩というよりウォーキング。ウォーキングというよりジョギング</b>に近いかもしれない。僕のウォーキングは、つまりそのくらい速い。速いがもちろん競歩じゃない。<span id="more-544"></span></p>
<p>コースはだいたい決まっている。<br />
自宅から右に進めば「<b>港の見える丘公園</b>」、 左に行けば「<b>根岸森林公園</b>」。いずれもおよそ1.5キロの道程。どっちに歩を進めるかは、その日の気分次第。</p>
<p>港の見える丘公園は、<b>展望台から眼下に広がる横浜港やベイブリッジを臨む</b>、横浜を代表する観光コースのひとつ。この一帯は<b>開港当時、イギリス軍とフランス軍が駐屯する外国人居留地</b>だったことから、現在もイギリス館、フランス山としてその名残を留めている。</p>
<p>山手本通りをまっすぐ、<b>イタリア山庭園、山手教会、元町公園、外国人墓地</b>と左右に寄り道しながら進むコースだが、行く先々で声をかけられ呼び止められるので、ちょっと辟易する。</p>
<p>えっ、<b>語り人は有名人？</b><br />
ちがうちがう、そうじゃない。</p>
<p>観光客の「すみませーん。シャッター、押してもらっていいですかぁ」とか、地図を読めない女性たちの「あの、<b>人形の家</b>から<b>ローズガーデン</b>を通って<b>山下公園</b>に行って、そんでもって<b>中華街</b>にも行きたいんですけど」ってやつ。</p>
<p>えっ、<b>語り人は観光ガイド？</b><br />
ちがうちがう、そうじゃない。</p>
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=amebablog05d-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B00FVH4Z8K&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
<p>歌の文句のように否定を繰り返す語り人だが、実はこの流れで本当にガイドをするはめになり、あげく中華街で一緒にご飯まで食べて、すっかり仲良くなってしまったことが一度ならずある。</p>
<p><b>相手は男か女かって？</b>　訊くまでもないだろう。</p>
<p>そんなこともあって、こっちの観光コースには<b>よほど暇を持て余しているか、よほど人恋しいとき</b>にしか足を運ばないようにしている。そしてそんな状況を、できるだけつくらないように心がけている。</p>
<p>一方の<b>根岸森林公園</b>は幕末に造られた<b>日本最初の洋式競馬場</b>で、<b>日本の競場発祥の地</b>として知られている。</p>
<p>だから、とてつもなく広い。ジョギングコースを含む「<b>芝生の広場</b>」だけでも、<b>横浜スタジアム５個分</b>に相当するというから、<b>本格的なジョギングやウォーキング</b>を楽しむにはもってこいの公園。</p>
<p>また見事な<b>梅園や桜園</b>も有名で、その意味でここも<b>観光スポット</b>には違いないが、<b>横浜市民の憩いの場</b>ということで、家族連れや犬を連れた散歩者も多く、地元近隣の住民に親しまれている。</p>
<p>だから、ここでは観光ガイドしての僕の出番はない。<b>ただひたすら歩く</b>のみ。</p>
<p>しかし、ここにも<b>語るべき物語</b>はある。今回はここで起きた<b>不思議な話</b>をしよう。もっとはっきり言えば、これは語り人に起こった<b>奇跡の物語</b>だ 。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p><b>（１章へつづく）</b></p>
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