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	<title>声で人生が変わる！「愛と再生」のボイス・ストーリー　ユアボイス・マイボイス &#187; 丹田</title>
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	<description>あなたは自分の「声」が好きですか？ あなたは「声」で損をしていませんか？</description>
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		<title>過去からの贈り物（下）</title>
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		<pubDate>Sat, 13 Feb 2016 02:41:10 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[ボイスエッセイ]]></category>
		<category><![CDATA[バー]]></category>
		<category><![CDATA[丹田]]></category>
		<category><![CDATA[嫉妬]]></category>

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		<description><![CDATA[２０年ぶりに再会するその人は、間違いなく４５歳になっているはずだった。なのに、僕は幻覚を見ているのか。その容姿も体型も、髪形も服装も、眩いばかりの精神の溌剌さも、もう何から何まで、僕の記憶に鮮明に焼き付いている、２０年前 [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>２０年ぶりに再会するその人は、間違いなく４５歳になっているはずだった。なのに、僕は<b>幻覚を見ているのか</b>。その容姿も体型も、髪形も服装も、眩いばかりの精神の溌剌さも、もう何から何まで、僕の<b>記憶に鮮明に焼き付いている、２０年前の彼女そのまま</b>なのだ。<br />
「語り人さん！」昔のままの<b>澄んだ声</b>で彼女は僕を呼んだ。<br />
<b>タイムスリップした人のように僕はうろたえた</b>。<span id="more-609"></span></p>
<p><b>（</b><a title="過去からの贈り物（中）" href="http://kataribito.net/short/s0008/"><b>過去からの贈り物（中）</b></a><b>のつづき）</b></p>
<p>&nbsp;</p>
<p>と、ここまで書いて僕は筆を止める。<br />
まずい。このまま書き進めていけば、またしても<b>長大な物語</b>になる。</p>
<p>そもそも<b>本稿はエッセイだった</b>はず。しかし、エピソードの端緒を僕はすでに書いてしまった。ディテール描写はなるべく控えるので、どうかこのままお付き合い願いたい。</p>
<p>というわけで、<b>いきなり出てきた謎の女性「奈都子」とは何者なのか</b>。その話をするにはここでもう一人、<b>このエピソードに欠かせない重要人物</b>に登場してもらわねばならない。</p>
<p>僕と<b>同期入社で同い年</b>のその男は、最年少で役員に就任し、今や<b>次期社長</b>と目される大物だ。名前を岡本としておく。岡本とはおよそ10年ぶり、いや酒を酌み交わすのは25年ぶりだった。</p>
<p>僕たちは昔よく一緒に飲んだ<b>銀座のバー「ルパン」</b>にいた。</p>
<p><b>アルセーヌ・ルパン</b>の名前に由来したこの店は、昭和三年から続く<b>老舗の文壇バー</b>で、<b>川端康成</b>、<b>永井荷風</b>、<b>泉鏡花</b>、<b>菊池寛</b>など錚々たる作家たちの溜まり場だった。<b>太宰治や坂口安吾</b>も常連だったことで知られている。</p>
<p>場所柄もあってか、当時から<b>新聞社の人間</b>や、丸の内の<b>三菱系の会社員</b>も多く出入りしていた。</p>
<p>ビアジョッキ２杯を空けて、それから岡本は山崎１２年のオンザロック、僕はドライマティーニでふたたび乾杯した。それが合図だったみたいに岡本は急にあらたまった態度で言った</p>
<p>「語り人、あのときはすまなかった。おまえの味方をしてやれなかった。おまえはいつだっておれをかばってくれたのに」</p>
<p>彼がいつの何の話をしているのかすぐにわかったが「いったい何の話だ？」と僕はとぼけてみせた。岡本はそのときの出来事を苦渋の表情でぽつぽつ語り、最後にもう一度、僕に謝罪した。しかし岡本は全部を話していない。<b>核心的な部分を巧妙にぼかしていた</b>。</p>
<p>「昔のことだ。おれが覚えてるのは、おまえは人気者で、おれは嫌われ者だったということだけだ。<b>人気者には人気者の仕事があり、嫌われ者には嫌われ者の仕事がある</b>。おれたちは結構、いいコンビだったよな」</p>
<p>僕がそう言って笑うと、岡本は目を潤ませて何度も頷いたあと、ふっと表情を緩めて言った。「変わってないな、語り人は。<b>そんなおまえに、おれはずっと嫉妬していたんだ</b>」</p>
<p>「嫉妬だって？ 冗談じゃない！」僕は呆れたように返した。岡本は同期で一番の出世頭で、若手の花形社員だった。同期の男子社員みんなが多かれ少なかれ<b>彼に嫉妬していた</b>のだ。</p>
<p>「おまえは嫉妬なんかしないだろ？」<br />
僕の目を覗き込むようにして岡本は言った。<br />
「いかにも。それが<b>嫌われ者の流儀</b>でござる」<br />
僕がおどけてそう言うと、岡本はからだを揺すって大声で笑った。</p>
<p>途中から僕は気づいていたが、<b>彼もまた過去の後悔を引きずっていた</b>。そして禊（みそぎ）のために、今の自分を書き直すために僕に会いに来たのだ。ならば、僕も腹をくくろう。今こそ岡本と僕がそれぞれに隠し持ってきた<b>パンドラの箱</b>を開けるべきときだった。</p>
<p>「おれにもある。<b>おまえに謝らなければならないこと</b>が」<br />
声のトーンを変えて僕が言うと、岡本は「きたか」という顔をした。そのくせ表情とは裏腹な言葉を口にした。「そんなもん、おまえにはないだろう」</p>
<p>「<b>飯倉奈都子</b>。覚えてるか？」<br />
「忘れるはずがない。<b>おれたちのアイドル</b>だった」<br />
僕の問いかけに岡本は即答した。</p>
<p>その当時、僕たちの部署に<b>編集アシスタントの女子大生</b>がいた。今でいうインターンシップ生だ。大学三年生の彼女は、卒業後この会社への就職を志望していた。</p>
<p>「いい子だったよな。<b>美人で頭が良くて</b>、そのうえ<b>素直で気立てが良くて</b>。<b>ミステリアスな雰囲気</b>も魅力だった。おまえの意見は？」</p>
<p>岡本は<b>飯倉奈都子の熱烈な讃美者</b>だった。</p>
<p>「<b>声がきれい</b>で、<b>話すときと食べるときの口元もきれい</b>だった」<br />
僕が答えると、岡本は大きく頷いて言った。「<b>パーフェクトな女</b>だった」</p>
<p>岡本だけじゃない。若手男子社員のほぼ全員が、彼女の気を引こうとやっきになっていた。</p>
<p>そんなあるとき、岡本のかけ声のもと「<b>飯倉奈都子の純潔を守る会</b>」という、なんとも馬鹿げた会が発足した。</p>
<p>いわく、<b>飯倉奈都子に個人的感情を抱いてはならない</b>。いわく、<b>飯倉奈都子を個人的に食事および飲みに誘ってはならない</b>。他にも１０項目くらいあったと思うが、結びの言葉はこうだった。<b>飯倉奈都子に手を出すやつはこの岡本が許さない</b>。</p>
<p>「あの子は内定を控えたうちのアイドルだ。我が社にきれいなかたちで入社できるよう、みんなで大切に守って応援してあげようじゃないか！」</p>
<p>岡本がなぜ急にこんなことを言い出したのか、僕は知っている。岡本はひた隠しにしていたが、<b>真っ先に飯倉奈都子に個人的感情を告白したのは他ならぬ彼だった</b>。その事実を僕は飯倉奈都子本人から聞いていた。</p>
<p>彼女は岡本からの交際の申し出を、遺恨が残らないよう上手に断った。<b>卒業してこの会社に入社するまでは誰とも恋愛するつもりはない</b>。だからお願いだ。そのときまで静かに見守っていてほしいと。</p>
<p>自信家の岡本は、これを拒絶とは取らなかった。むしろ控えめな肯定と捉え、ますます熱を上げた。<b>飯倉奈都子にふさわしい男は自分しかいない</b>。だからそのときまでは<b>誰にも、断じて、指一本触れさせない</b>。あの子をものにするのは自分なのだ。</p>
<p>「飯倉奈都子がどうした？」岡本はロックグラスを揺らしながら眉間に皺を寄せて険しい顏をした。このとき僕は確信した。この男は知っている。やはり岡本は、<b>飯倉奈都子と僕の関係を知っていた</b>のだ。</p>
<p>「その後おまえが海外に赴任してまもなく、彼女は突然うちを辞めた。せっかく手にした内定も返上した。それは…」ここで岡本は言葉を止めた。<b>絶妙な「間」</b>だと感心している自分が可笑しかった。</p>
<p>「それは、おれのせいだと思っていた。はじめはな。いや、やっぱりおれのせいだろう」<b>ひねりを入れた巧妙な言い方</b>に、僕はまたしても感心してしまった。しかし感心ばかりしている場合じゃない。<b>岡本は僕に自白させようとしている</b>。だからここへ呼び出したのだ。</p>
<p>「そうだよ。おれは<b>抜け駆け</b>をした」僕はすんなり自白した。<br />
「それはおれの抜け駆けの前かあとか、つまり、おれが<b>飯倉奈都子の純潔を守る会</b>をつくった前かあとか、どっちだ？」岡本も自分が抜け駆けしていたことを自白した。</p>
<p>「あとだ」と僕は正直に答えた。<br />
「そうか、あとか…」岡本は拍子抜けしたような顔をした。<br />
「だからおれは裁かれて<b>島流しの刑</b>に処された」ひと息で僕は言った。<br />
「どっちにしろおれはフラれて、おまえは受け入れられた。彼女は…」岡本はまた間を取った。</p>
<p>「<b>嫌われ者の支持者</b>だった」と僕は引き取った。<br />
「彼女に何をしたんだ？」と岡本は訊いた。<br />
「彼女が好きだと言った<b>チェーホフ</b>の話で盛り上がった。<b>『かもめ』</b>のトリゴーリンの台詞をおれが口ずさむと、彼女はニーナの台詞で返してきた。それがきっかけだ」</p>
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<p>「どんな台詞だ？ いや、待て。やらんでいい。もうわかった。とにかくおまえは自分の得意分野に持ち込んで、<b>得意技を使って彼女を口説き落とした</b>」</p>
<p>「おれが持ち込んだわけじゃない。口説き落としてもいない」<br />
「<b>自然に惹かれ合った</b>と言いたいのか。おれと違って」岡本は鼻で笑った。</p>
<p>「おれが<b>邪魔だった</b>みたいだな」僕はそう言ってみた。<br />
「そのときは<b>嫉妬に狂ってた</b>。だから…」岡本はまた間を取ろうとする。<br />
「だからおれが<b>海外に飛ばされるよう画策した</b>」間を取らせないよう僕が引き取った。</p>
<p>「知ってたのか？ 最初から」岡本は悲壮な表情を見せた。<br />
「いや、いま知った」僕は嘘をついた。「こう見えておれは鈍感なんだ」<br />
「<b>飯倉奈都子を取られたくなかった</b>。おまえにだけは」岡本は絞り出すように言った。</p>
<p>「取ったとか取られたとか嫉妬に狂ったとか、<b>反吐が出るほど陳腐な台詞</b>だな。とにかく、おれが日本を離れてるあいだ、おまえは奈都子を…」<br />
「……」岡本も黙った。間を取ったわけではないようだった。</p>
<p>「同じ質問をする。彼女に何をした？」僕は少し凄んで言った。<br />
「そうだよ。おれは<b>陳腐な卑怯者</b>だ！」追い込まれた人がそうするように岡本は開き直った。</p>
<p>「そんな言葉じゃ足りないな」<br />
「ああ、おれは<b>友情を踏みにじった下劣な男</b>だ」</p>
<p>「安い友情を語るな。<b>おまえが踏みにじったのは飯倉奈都子の青春だ</b>」<br />
「結果、おれは<b>永遠に彼女を失った</b>」</p>
<p>「相変わらず自分のことばかりだな、おまえは。まあ、出世は勝ち取ったじゃないか。社長就任を目前にして、今さら<b>青春の過ちを懺悔</b>ってか？ 虫のいい話だな」</p>
<p>「語り人、おれは何をすればいい？ 教えてくれ」<br />
「自分で考えろ。今やおまえは<b>大企業の頂点に立つ男</b>だろ」</p>
<p>「おまえが帰国後、会社を辞めたのはおれのせいだ。<b>飯倉奈都子と別れる原因</b>をつくったのも、きっとおれだろう。その後いろいろあったことは聞いて知ってる。おまえらしく生きてるようだが、おれに出来ることがあったら言ってくれ」</p>
<p>「そうか。じゃあ頼みがある」思い切って僕は言ってみた。<br />
「おまえはうちのＯＢだ。<b>グループ会社の重役のポスト</b>くらいならすぐ空けられるぞ。社長がいいならちょっと調整が必要だが、まあ何とかなる」</p>
<p>「バカか、おまえは。おれは今の<b>ナレーター稼業を愛してる</b>んだ」<br />
「たいして稼げないだろう。年収はいくらだ？」<br />
「余計なお世話だ。生活に困らない程度に仕事はある」<br />
「もっと欲を出せ、語り人。じゃあ今後は<b>声案件でサポート</b>させてもらう。で、頼みって何だ？」</p>
<p>さあここからだ。身体の重心を丹田に落として僕は言った。<br />
「<b>おれを大阪に行かせてくれ</b>」</p>
<p>「大阪？ ああ、おまえのエッセイは読んだ。それが頼みごとか？ わかった。<b>大阪の仕事</b>をつくればいいんだな？ すぐに大阪本社に連絡を取って何かみつくろわせよう」</p>
<p>さすが岡本だ。話が早い。えっ、エッセイを読んだ？<br />
（ボイスエッセイ「<a title="大阪へゆきたし（上）" href="http://kataribito.net/short/s0005/"><b>大阪へゆきたし</b></a>」参照）</p>
<p>「<b>大阪本社</b>はまずいんじゃないか。<b>東京本社</b>とは昔から良好な関係とはいえないだろう」心配して僕は言った。</p>
<p>「だいじょうぶだ。同期の森田が、いま大阪の広告局長をやってる」<br />
「えっ、あの森田が？ なんで大阪へ行かされたんだ。しかも広告だって？」<br />
「それはまた詳しく説明する。森田はおまえに懐いてたからな。喜ぶぞ！」</p>
<p>「岡本、おまえも一緒に来い」<br />
「おれも大阪にか？ なんでだ」<br />
「おれたちの<b>青春を書き直す</b>んだ」<br />
「大阪で青春を書き直す？ どういう意味だ」<br />
「この流れだ。少しは想像してみろ」</p>
<p>「まさか、<b>飯倉奈都子が大阪にいる</b>って話か？」<br />
「ああ、<b>あのときのままの飯倉奈都子</b>がな」</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（「過去からの贈り物（完）」につづく）</p>
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		<title>第2話3章　ナレーターズハイ</title>
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		<pubDate>Thu, 19 Jun 2014 10:34:56 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[βエンドルフィン]]></category>
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		<description><![CDATA[自分の仕事ができること以上に大事なことなんてこの世にありはしない。 だから、返事は決まっている。「もちろん、やります」。 そう応えて僕は、孤独なナレーションブースに潜り込んだ。 深い海底にたった一人で潜る潜水夫みたいに。 [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>自分の仕事ができること以上に大事なことなんてこの世にありはしない。<br />
だから、返事は決まっている。「もちろん、やります」。<br />
そう応えて僕は、孤独なナレーションブースに潜り込んだ。<br />
深い海底にたった一人で潜る潜水夫みたいに。<span id="more-187"></span></p>
<p>（2章「<a href="http://kataribito.net/02/02-2/">身体の中心で愛を叫ぶ</a>」のつづき）</p>
<p>オーディオブック『脳内沖縄紀行』後編は、<b>世界遺産</b>としての<b>沖縄のグスク</b>（首里城を代表とする城跡）から、<b>琉球王国の歴史をひもとく語り</b>で幕を開けた。</p>
<p>「ここは重厚にね。だけど重苦しいのはダメよ。淡々と流して。でも言うまでもないけど、<b>立てるところは立てて</b>よ」<br />
ヘッドホンからシーサーさんのガラガラ声が飛び込んでくる。</p>
<p>「立てますとも！　それが男っしょ！」<br />
いつもの流れでそう返そうとしたが、今日はそれどころじゃない。しかも、シーサーさんは<b>いざ収録が始まると人が変わる</b>ことを、<b>集中力のギアが数段上がる</b>ことを、僕は知っている。ふだんは全開の<b>下ネタ</b>も<b>ジョーク</b>も、このときばかりは通じないのだ。オネエ言葉だけは変わらないのだけれど。</p>
<p>「そう、いいわよ。その調子。次は琉球王国を支配したふたりの男の物語。説明するわよ、よく聞いて。ふたりは奄美との交易の主導権をめぐって争ったライバル同士なの。（中略）…わかったわね。<b>男の美学</b>をしっかり表現するのよ。セリフはふたりの<b>キャラを際立たせる声</b>を使い分けてちょうだい」</p>
<p>シーサーさんの演出を挟みながら、僕は無我夢中で読み進めていく。<br />
彼の指示は的確だった。 いや、指示というより啓示だ。その声は<b>天の啓示</b>のごとく、<b>表現の深い海の底</b>にいる僕を覚醒させコントロールした。</p>
<p>「さあ次は、<b>沖縄の食と酒の歴史</b>よ。権力欲・征服欲のあとは食欲を満たしてあげましょ。ガラリと変わるわよ。ちょっとやってみて。そう、いいわね！」</p>
<p>「はい、そして沖縄といえば&#8221;ソーキそば&#8221;。擬音もちょうだい。おいしそうに啜ってみて。そう、そしてセリフよ」</p>
<p>「アンタも食べるといいサー」<br />
「いいわ。完璧な<b>アクセント</b>よ」</p>
<p>「そして琉球泡盛、30年ものの古酒（クースー）、呑みたいわね！<br />
飲む前の<b>ワクワク感</b>、飲んだ後の<b>幸福感</b>をきちっと押さえてね」<br />
言われたとおり、僕は酒好きのおじさんになりきった。<br />
「ノッテきたわね、語り人ちゃん。ほんとうに酔っぱらってるみたいだわ」</p>
<p>そうだ、僕はノッテきた。「やべー、キモチいい！」という陶酔状態。と同時に意識は明晰で心は落ち着いている。「冷静と情熱のあいだ」というより、両者がなんの矛盾もなく共存している状態。</p>
<p>収録が始まって３時間。だいたいいつもこのくらいの時間。待ちに待った瞬間を迎える。<b>ランナーズハイ</b>だ。ご存知のかたも多いと思うが、ここで少し説明しておこう。</p>
<p>ランナーズハイ（runner’s high）とは、長時間のランニングなどのさいに経験される<b>陶酔状態</b>のこと。走っている最中に苦しさがいつしか<b>高揚感</b>に変わり「空を飛んでいる」ような<b>快楽現象</b>が起こる。</p>
<p>その正体は<b>脳内麻薬</b>といわれる<b>βエンドルフィン</b>の存在だ。この快感物質、βエンドルフィンには麻酔作用があって、<b>覚醒効果</b>や<b>鎮痛効果</b>があると報告さられている。</p>
<p>マラソンなどで身体が苦痛やストレスを感じると、脳は自らβエンドルフィンを作り出し、苦痛やストレスを和らげようとする。それが快楽現象を生んでいるというのだ。この現象を僕は、自分に当てはめて<b>ナレーターズハイ</b>と呼んでいる。</p>
<p>通常オーディオブックは一冊の書籍を丸ごと音声化する。たとえば三百ページの本なら、だいたい７時間ほどの音声データになる。収録時間でいうと（読み手によって差異はあるが）その２倍から３倍の時間を要する。これを２～３日で収録するのだから、どれほどの長丁場かわかるだろう。</p>
<p>15秒のテレビＣＭはもちろん、１時間ものの番組でも経験することのできないランナーズハイ（ナレーターズハイ）を、このオーディオブックで体感することができるのだ。<b>声の長距離アスリート</b>。僕は自分をそう呼んではばからない。</p>
<p>「聞いてるの？　語り人ちゃん」おっと、シーサーさんが呼んでいる。</p>
<p>「さあ次よ。景色を変えてちょうだい。頭の中で映像を切り替えるのよ。はい、ナレーションから、スタート！」</p>
<p>（ここはコザの街、アメリカの田舎町といった風情だ。そこかしこで英語が飛び交っている。とあるレコードショップ。ウインドウから見える古いジャズの名盤に誘われて、貧しいミュージシャン風の若い男が入ってきた）。</p>
<p>映像を思い浮かべながら、というより<b>現場を俯瞰している目</b>になって、僕は読み進めていった。</p>
<p>「店番はでっぷり太った黒人女性よ。いい？ イメージして。若者が盗みを働きはしないかと睨みをきかせているわ。はい、黒人女性のセリフ！」</p>
<p>（Do you have any ID cards？）<br />
「すごいわ、語り人ちゃん。本物みたい！」</p>
<p>「さあ、いよいよエンディングよ。…あら、どうしたの？　声に張りがなくなってきたわよ！　それに、滑舌も少しあまくなってるわ」</p>
<p>シーサーさんの耳はだませない。もちろん、自分がいちばんわかっている。<br />
海に潜っておよそ６時間が経過していた。<b>僕の息は、僕の声は、いや息でも声でもない、お腹だ</b>。僕のお腹は限界を超えていた。</p>
<p>声と呼吸を支えるお腹が、疲労と空腹で機能不全に陥っている。そのため腹式が利かなくなり、必要以上に<b>声帯</b>に負荷をかけていた。<b>声の張りつや</b>がなくなってきたのはそれが原因だろう。</p>
<p>さらに、集中力を使いすぎたことによる<b>脳の酸素不足</b>が滑舌をあまくしていた。βエンドルフィンはすでに使い果たしている。いま一度再生するためには食事と休憩が必要だ。</p>
<p>気が遠くなってきた。頭が真っ白だ。景色が描けない…。<br />
そこへシーサーさんの金切り声が飛び込んできた。</p>
<p>「だめ！　まだよ、語り人ちゃん。まだイッちゃだめ！　男なら、我慢するの！　いっしょにイクのよ！」</p>
<p>シーサーさんは、萎えかけている僕をふたたび奮い立たせようと、収録中は絶対口にしないはずの<b>下ネタを解禁</b>して叫んだ。<br />
（ああ、シーサーさん！　僕のために、ごめんなさい。そしてありがとう）</p>
<p>僕は目を閉じ、脳にひとつの映像を呼び起こした。</p>
<div class="point"><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん<br />
</b><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん</b>
</div>
<p>&nbsp;</p>
<p>そこはサーカス小屋。<br />
天井から吊るされた空中ブランコが<br />
大きく揺れている。</p>
<div class="point"><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん<br />
</b><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん</b>
</div>
<p>&nbsp;</p>
<p><b>中原中也</b>の詩「サーカス」に出てくる、これはブランコの<b>擬音</b>だ。</p>
<p>この音を繰り返し唱えると心が静謐になり、<b>空を飛んでいるような高揚感</b>が全身を包む。本来、一定の条件下で無意識に分泌されるβエンドルフィンを意識的に、あるいは作為的に作り出そうという、これはある意味で危険な荒療治だった。</p>
<p>次に意識を<b>丹田（第３のチャクラ）</b>から<b>心臓（第４のチャクラ）</b>、そして<b>喉（第５のチャクラ）</b>、さらに<b>眉間（第６のチャクラ）</b>へと巡回させた。これは<b>生命エネルギーを全身に隈なく満たす</b>ための、僕が限界を超えなければならないときに自分に施す<b>応急蘇生法</b>だ。</p>
<p>まあ、どちらも「それって、<b>おまじない</b>みたいなものだよね」と言われればそれまでなんだけど。なんでもいい。どうか、僕に最後の力を！</p>
<p>そのとき、傷だらけで息も絶え絶えの<b>孫悟空</b>が両手を天にかざし、みんなから少しずつ分けてもらったパワーで、でっかい<b>元気玉</b>を作るシーンが浮かんだ。<br />
「少しでいい。おらに力を分けてくれ！」と悟空は言った。</p>
<p>スーパーサイヤ人の孫悟空でさえ、<b>自分の力だけではどうしようもないときがある</b>ことを知っていた。</p>
<p>「はーい、オールOKよ！」シーサーさんの声が終幕を告げた。<br />
どうやってエンディングを迎えたのか、よく覚えていない。</p>
<p>こうしてすべての収録を終えた。<br />
海底から地上に戻り、僕は大きく息を吐いた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（次回「最終章」につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>声優は腹で戦う</b></span>。だから「腹が減っては戦（いくさ）はできない」。</li>
<li>複数のキャラを演じるときは無理に声を変えよう、あるいは作ろうとしてはいけない。<span style="color: #ff6600;"><b>対象となる人格を瞬時にイメージし、それを丸ごとわが身に引き受ける</b></span>。「乗り移っちゃう感覚」といえばいいだろうか。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>ランナーズハイ</b></span>、長い「ひとり語り」はこれがあるから快感だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>ランナーズハイは身体に相当の負担がかかる</b></span>ことを忘れてはいけない。<span style="color: #ff6600;"><b>フィジカル・メンタル両面の強化</b></span>が不可欠だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>ダジャレと下ネタ</b></span>は脳の活性剤だ。</li>
<li>限界を感じたとき、それでもそこを超えなければならないとき、<span style="color: #ff6600;"><b>蘇生するためのおまじない</b></span>を持っているといい。僕は本文で紹介した<span style="color: #ff6600;"><b>中原中也の詩</b></span>「サーカス」に登場するブランコの擬音（<span style="color: #ff6600;"><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆあゆよん</b></span>）を繰り返し唱えることにしている。<span style="color: #ff6600;"><b>おまじないを侮ってはいけない</b></span>。それにしても中也の擬音のセンスは秀逸だ。</li>
<li>『<span style="color: #ff6600;"><b>ドラゴンボール</b></span>』が名作であるゆえん。それは、死んだ人を生き返らせることができる<span style="color: #ff6600;"><b>ドラゴンボール</b></span>によってではない。人間を含めた生きとし生けるものの「<span style="color: #ff6600;"><b>地球への愛</b></span>」が集結した<span style="color: #ff6600;"><b>元気玉</b></span>によってである。<b><br />
</b></li>
</ol>
</div>
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		<title>第2話2章　身体の中心で愛を叫ぶ</title>
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		<pubDate>Thu, 12 Jun 2014 03:02:51 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[センター・オブ・ボディ]]></category>
		<category><![CDATA[チャクラ]]></category>
		<category><![CDATA[ボイスメイク]]></category>
		<category><![CDATA[下調べ]]></category>
		<category><![CDATA[丹田]]></category>
		<category><![CDATA[丹田呼吸]]></category>
		<category><![CDATA[丹田発声]]></category>
		<category><![CDATA[初見読み]]></category>
		<category><![CDATA[勝負声]]></category>
		<category><![CDATA[役作り]]></category>
		<category><![CDATA[愛を叫ぶ]]></category>
		<category><![CDATA[瞑想状態]]></category>
		<category><![CDATA[胸式呼吸]]></category>

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		<description><![CDATA[「は～い、ぜーんぶいただいちゃいました。ブラボーよ、語り人ちゃん！」 終わって我に返ると、ブースの窓の向こうにスタッフみんなのスタンディングオベーションが見えた。ありがとう！ だからやめられない。声優ほど、素敵な商売はな [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「は～い、ぜーんぶいただいちゃいました。ブラボーよ、語り人ちゃん！」<br />
終わって我に返ると、ブースの窓の向こうにスタッフみんなのスタンディングオベーションが見えた。ありがとう！ だからやめられない。声優ほど、素敵な商売はない。<span id="more-181"></span></p>
<p>（１章「<a href="http://kataribito.net/02/01-2/">声優ほど素敵な商売はない</a>」のつづき）</p>
<p>「あ～ら、語り人ちゃん。お久しぶりねぇ。会いたかったわぁ！」</p>
<p>スタジオに入るやいなや、太いガラガラ声のオネエ言葉に迎えられた。<br />
１週間というタームが「久しぶり」に相当するかどうかの僕の考察を遮り、<br />
彼は上機嫌で畳みかけた。</p>
<p>「まあ、かたいこと言わないの。もっともこの１週間、先週録音した分の編集作業をずうっとやってたじゃない。だからワタシ、語り人ちゃんの声とともに寝起きしてた、といっても過言じゃないのよ。ちょっとハグさせてちょうだい」</p>
<p>いえ、遠慮願いたいです。という間もなく、毛むくじゃらの太い腕を強引に背中に巻き付けられた。<br />
「アナタ、相変わらずスマートだわね。羨ましいわぁ！　見てよ、ワタシなんかこのていたらくよ」</p>
<p>そう言って黒地に虎の絵がプリントされたＴシャツを首元までまくし上げ、でっぷりしたお腹をポンポンとふたつ叩いて盛大に笑うこの人。 オーディオブック『脳内沖縄紀行』の担当ディレクター、 ひげ面のオネエキャラ、虎田シーサーさんその人だ。</p>
<p>顔面ばかりか、腕から手の甲、お腹にまでびっしりと毛が密集している。<br />
「おいおい、腹毛で腹芸か！」という言葉をぐっと飲み込んだ僕は、彼の腹芸と僕のダジャレがこれ以上エスカレートしないようにと、さっそく仕事の話を切り出した。</p>
<p>「シーサーさん、<b>台本</b>は昨日いただいたもので全部ですか。各章の、おそらくエンディングにあたる部分が欠落しているように思えますが」<br />
きのうマネージャーから台本を受け取った僕は、一読して違和感を覚えたのだけど、マネージャーはこれで全部だという。</p>
<p>「そのとおりよ、語り人ちゃん。つづきはここにあるわ」<br />
そう言ってシーサーさんは、かなりの分量の紙束を手に取り、まるでハープでも弾くようにそれを５本の指ではじくと、不敵な笑みを見せた。</p>
<p>「えっ、それを今日、初見で読めということですか」<br />
「そうよ。それがどうしたの。プロフィールによると、あなたの特技欄に<b>初見読み</b>とあるわ。あら、大風呂敷を広げちゃったのかしら」</p>
<p>さっきとは打って変わって、冷ややかな攻撃的な口調でシーサーさんは言った。<br />
Ｔシャツにプリントされた虎が、今にも襲いかかってきそうな剣呑な空気だ。彼の腹芸にリアクションをしなかったことを怒っているのか。まさか！</p>
<p>でも、言うべきことは言わなければ。鼻から息を吸い、たっぷり<b>丹田</b>（下腹）に溜め込んでから、僕は言葉を発した。</p>
<p>ちなみに「丹田」とは、臍（ヘソ）と恥骨（恥ずかしい骨って！）のあいだの部位。インドではここを<b>「チャクラ（生命エネルギーの集積所）」</b>といい、英語で<b>「センター・オブ・ボディ（身体の中心）」</b>という。<b>悟りを司る聖なるポイント</b>といわれている。</p>
<p><b>丹田呼吸</b>と呼ばれる呼吸法で<b>瞑想状態</b>に入ることで知られているが、発声ではここを使うことによって、深く力強い声を出すことができる。かつて日本の軍隊などで、上官が弱々しい声の兵士に<b>「臍下丹田に力を込めろ！」</b>と檄を飛ばしたと伝えられている。</p>
<p>もちろん、<b>丹田発声</b>を日々トレーニングしている僕は、仕事以外でもここぞというときにこの発声法を使う。</p>
<p>たとえば重要な交渉事などで相手を説得したいとき。たとえば相手に大事な用件を伝えるとき。たとえば騒がしい居酒屋なんかで、遠くにいる店員を呼びつけるとき（実際これはいつも僕の役割だ）。</p>
<p>それから男性諸君、女性を口説くときも有効だ。子宮に響くといわれる腹式低音ボイスをマスターし、存分に女性の下心をくすぐってくれたまえ（失礼！）。</p>
<p>そして女性のみなさん、高音の鼻にかかったカワいい声だけが男を舞い上がらせるわけじゃないよ。少し低めの艶のあるカッコいい声を<b>「勝負声」</b>にすることをおすすめする。男の前立腺を刺激することうけあいだ（失礼！）。</p>
<p>センター・オブ・ボディ。<b>身体の中心を開いて、愛を叫ぶのだ！</b><b></b></p>
<p>話を戻そう。<br />
言うべきことを言うために、僕は丹田発声を用いてシーサーさんに言った。</p>
<p>「いえ、<b>特技</b>というにはおこがましいですが、<b>初見読みに対応する訓練</b>は積んでいるつもりです。ですが、それはモノによるのではないでしょうか」</p>
<p>ある種の<b>ナレーション台本</b>、たとえば<b>テレビ・ラジオ</b><b>CM</b>や<b>生放送</b>なんかの場合、 初見で読むことはままある。</p>
<p>だけどこれはオーディオブック。やはり、 じっくり読み込んで、満を持して臨むべきだろう。<b>下調べ</b>だって、<b>役作り</b>だって必要なのだ。</p>
<p>以上のことを僕は、自分の正当性を声高にではなく、<b>誠実さがしっかり伝わる深く安定した声</b>で主張した。</p>
<p>人は相手に攻撃されたり何か理不尽な扱いを受けたりしたとき、自衛本能から感情がたかぶり、心拍数が上昇する。だから呼吸が浅くなり、声が高くなりうわずったりする。これは<b>胸式呼吸</b>になっていることが原因だ。</p>
<p>まさにその見本となる例を、僕たちはテレビのニュース等で最近何度も目にしている。STAP細胞の存在の有無を詰問された小保方晴子さんが発した「STAP細胞はあります」という言葉。いや、<b>言葉ではなく声</b>だ。とくに「あります」の部分は不自然に高く震え、完全にうわずっていた。</p>
<p>こんなときこそ<b>腹式（丹田）呼吸</b>で、<b>お腹にしっかり支えられた声</b>で「あります」と、小保方さんは力強く主張しなければいけなかった。ヘアメイクもフェイスメイクも完璧だったのに、もうひとつ大事なメイクを彼女は怠った。それは<b>ボイスメイク</b>だ。</p>
<p>おっと、うまいオチがついたと悦に入っている場合じゃない。小保方さんは今、研究者として絶体絶命のピンチを迎えている。いや、今は自分の心配をしよう。かくいう僕だって（狭い世界だけど）、ナレーターとして絶体絶命のピンチを迎えている。ナレーター生命を脅かされているといっていい。</p>
<p>たとえば、こんな噂が流れたら、僕のナレーター生命は風前の灯火となる。</p>
<p><b>（語り人、「特技は初見読み」はウソだった！）<br />
</b><b>（語り人は初見読みにビビって現場から逃げ出したらしい）<br />
（語り人はシーサーさんのギャグをスルーして彼の逆鱗に触れたらしい）</b></p>
<p>ああ見えてシーサーさんはCMやPV、ドキュメンタリー番組など幅広いジャンルでヒット作を量産する、気鋭の演出家として知られている。彼を怒らせて仕事をほされたナレーターを、僕は三人知っている。ここでしくじったら僕だってただではすまない。</p>
<p>（考えろ、語り人！　おまえは<b>１本の葦のように弱い存在</b>だ。でも考えることはできる。<b>ピンチをチャンスに変える逆転の発想</b>を考えるんだ！）とフランスの哲学者パスカルに仮託して、僕は自分を鼓舞した。</p>
<p>しかし、どう考えてもわからない。各章の肝心のエンディング部分だけが、きのうの時点で未入稿だったとはどうしても考えにくい。それは不自然だ。とすると答えはひとつ。シーサーさんはきのう、原稿の一部をわざと抜いて提出したと考えられる。</p>
<p>ではなぜ、そんな手の込んだ嫌がらせを？　僕が何をしたというのか。<br />
僕の声は、シーサーさんの身体の中心を貫くことができなかったのか。子宮を響かせることはできなかったのか（できなかったのだろう。その理由は言うまでもない）。</p>
<p>不自然といえば、今日のシーサーさんはどこか違う。いつものシーサーさんじゃない。オネエしゃべりは健在なのだけど、何かが足りないのだ。決定的な何かが。記憶を司る脳の海馬に鞭を当ててみたが、ダメだ。思い出せない。</p>
<p>１本の葦と化した僕に、シーサーさんはさらに冷ややかな口調で追い打ちをかけた。<br />
「まあ、なんでもいいわ。できるの？　それともできないの？」</p>
<p><b>言われてしまった。男が決して言われてはいけない言葉。<br />
言わせてしまった。女に決して言わせてはいけない言葉。</b></p>
<p>「まあ、なんでもいいわ。できるの？　それともできないの？」</p>
<p>僕は考えることをやめた。１本の葦であることをやめた。<br />
<b>自分の仕事ができること以上に大事なことなんてこの世にありはしない。<br />
</b></p>
<p>だから、返事は決まっている。「もちろん、やります」。<br />
そう応えて僕は、<b>孤独なナレーションブース</b>に潜り込んだ。<br />
深い海底にたった一人で潜る潜水夫みたいに。</p>
<p>長い潜水になりそうだ。<br />
息はつづくだろうか。<br />
そこに景色はあるだろうか。<br />
いや、景色を創るのは僕の仕事だ。</p>
<p>（次章につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>履歴書やプロフィールの<span style="color: #ff6600;"><b>「特技」</b></span>は試されることを想定して記入しよう。あなたが痛い目に遭わないことを祈る。</li>
<li>言うべきことを堂々と言いたいなら、<span style="color: #ff6600;"><b>腹式（丹田）呼吸</b></span>をマスターすべきだ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>正しいことを言うとき</b></span>こそ高圧的になってはいけない。<span style="color: #ff6600;"><b>誠実さが伝わる優しい安定した深い声で</b></span>。</li>
<li>ヘアメイク、フェイスメイク、ボディメイクときて、さあ次は<span style="color: #ff6600;"><b>ボイスメイク</b></span>の番だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>勝負下着</b></span>も大事だが、<span style="color: #ff6600;"><b>勝負声</b></span>にもこだわりたい。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>身体の中心で愛を叫ぶ</b></span>ときは、できるだけ<span style="color: #ff6600;"><b>紳士・淑女</b></span>でありたい。</li>
<li>言われてはいけない言葉・言わせてはいけない言葉、今日の１位は<span style="color: #ff6600;"><b>「できるの？</b><b> </b></span><b><span style="color: #ff6600;">できないの？」</span><br />
</b></li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>自分の仕事ができること</b></span>以上に大事なことなんてこの世に存在しない。</li>
</ol>
</div>
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