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	<title>声で人生が変わる！「愛と再生」のボイス・ストーリー　ユアボイス・マイボイス &#187; 発声</title>
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	<description>あなたは自分の「声」が好きですか？ あなたは「声」で損をしていませんか？</description>
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		<title>第1話3章　シャル・ウイ・キャッチボール？</title>
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		<pubDate>Wed, 14 May 2014 14:24:01 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第1話　ボイス講師編①　愛のレッスン]]></category>
		<category><![CDATA[ビフォー＆アフター]]></category>
		<category><![CDATA[リップノイズ]]></category>
		<category><![CDATA[吃音症]]></category>
		<category><![CDATA[呼吸]]></category>
		<category><![CDATA[呼気のコントロール]]></category>
		<category><![CDATA[声によるさまざまな表現]]></category>
		<category><![CDATA[心肺能力]]></category>
		<category><![CDATA[棒読み]]></category>
		<category><![CDATA[発声]]></category>
		<category><![CDATA[表情筋]]></category>
		<category><![CDATA[音読]]></category>
		<category><![CDATA[音読療法]]></category>

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		<description><![CDATA[「来週はキャッチボールをやりましょう。グラブとボールは私が用意します」 「えっ、キャッチボールは喩えではないのですか？」 Ｍさんは驚いたようだったが、言った僕自身がもっと驚いていた。 （２章「問わず語りの彼」のつづき）  [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「来週はキャッチボールをやりましょう。グラブとボールは私が用意します」<br />
「えっ、キャッチボールは喩えではないのですか？」<br />
Ｍさんは驚いたようだったが、言った僕自身がもっと驚いていた。<span id="more-17"></span><br />
（２章<a title="第1話2章　問わず語りの彼" href="http://kataribito.net/01/02/">「問わず語りの彼」</a>のつづき）</p>
<p>「もちろん、喩えですよ。でも、最初のメールでも言ったはずです。<b>精神論だけでは何も変わらない</b>と。覚えていますか？」</p>
<p>「はい、覚えています。ですから私は、語り人さんにボイスを習おうと決心したのです。そもそも語り人さんの評判を聞いたとき、私は３つの点で共感を覚えました」</p>
<p>僕がジロリと睨むとＭさんは首をすくめた。そうだＭさん、その反応だ。それがコミュニケーションだよ。なかなか良い兆候だと僕は思った。</p>
<p>「砂糖の甘さを今さら説明する必要がないのは」と僕は言った。<br />
「だれでも一度は砂糖を舐めたことがあるからです。どうですか？｣<br />
「はい、砂糖を舐めた経験ならあります。幼稚園のときでした」</p>
<p>Ｍさんは遠い目をしてつづけた。<br />
「母の目を盗んで砂糖入れに指を入れてこっそり舐めたのでした。甘美な経験でした。それが病みつきになった私は、３日で砂糖入れを空っぽにしてしまったのです。もちろん母にはずいぶんと叱られました」</p>
<p>３つの理由から彼はお母さんに叱られたはずだ。虫歯に肥満、もうひとつは泥棒というキーワードを挙げればじゅうぶんだろう。</p>
<p>「ご名答です。さすがです！　このように、あらゆる事象には３つの…」<br />
「もう結構。そんなこと誰にだってわかります」僕は先をつづけた。</p>
<p>「Ｍさんは砂糖を舐めた経験はあってもキャッチボールの経験はない」<br />
「ですから、私はキャッチボールを経験する必要があるのですね。素晴らしい！」と言ってMさんは拍手をした。</p>
<p>「素晴らしいのはＭさんのほうですよ」僕は拍手のお返しをした。<br />
「その間合いに、その返しです。いまのはナイスプレイですよ」<br />
Ｍさんはうれしそうにはにかんだ。</p>
<p>「私は実体験のともなわない机上の空論は好まない。 キャッチボールの比喩を使った以上、身体で証明しましょう」</p>
<p>「あの、語り人さん、レッスンでいつもキャッチボールをしていらっしゃるのですか？」Ｍさんはもっともな質問をした。<br />
「まさか！」と僕は答えた。「するわけないでしょう」</p>
<p>では、これは自分専用のメニューなのか、と彼は心配そうな顔をした。<br />
「キャッチボールは時間に入れませんからご心配なく」と僕は言った。<br />
「私が好きでやることだから気にしないで。１ヶ月でその声をなんとかする、Ｍさんはそれだけに集中してください」</p>
<p>「おちぇしゅをうかけしまっしゅ」<br />
あえて文字にすると、こんな音が彼の口から洩れた。どうやら「お手数をおかけします」と言ったようだった。</p>
<p>こうして文章にするとよどみなく話していると思うかもしれない。でも彼の発音は、万事こんな調子だった。</p>
<p>さてここで、Ｍさんの<b>呼吸</b>や<b>発声</b>、<b>音読</b>などのレッスンを通して気づいた特筆すべき点について言及してみたいと思う。そしてこれをもって、いい加減そろそろ、Ｍさんとのレッスンブログのまとめへと突入したい。</p>
<p>まず彼は、驚くべき<b>心肺能力</b>の持ち主だった。<br />
心肺能力、つまり息が長いのだ。腹式による呼気を測定した結果、彼のワンブレスまでの息は50秒、最終的に１分をクリアした。</p>
<p>毎日トレーニングをしているプロの僕でさえ、1分の壁は厚い。オペラ歌手で80秒という怪物がいるそうだが、それはこのさい度外視しよう。普通はだいたい20秒前後。10秒に満たない人もいる。20秒程度で問題はないが、最低30秒はクリアしたい。40秒を超えれば、<b>声によるさまざまな表現</b>が可能になる。</p>
<p>もちろん呼気が長いのは有利には違いないが、問題はその使い方。<b>呼気に声が過不足なくのっかっていなくては意味がない</b>。というより有害でさえある。</p>
<p>実際Ｍさんの発声はあきらかに息漏れを起こしていて、声が出ない割に息だけは、まるで蝋燭の火を吹き消すような盛大な風を起こした。そのため彼と対面したとき、僕はしばしば顔をそむけなければならなかった。</p>
<p>必要なのは<b>呼気のコントロール</b>。これは３回目のレッスンで改善された。</p>
<p>また喋るとき、彼の唇はネチャネチャ、ピチャピチャと、実に耳ざわりで不快な音を立てた。<b>リップノイズ</b>だ。これはその後、<b>正しい</b><b>50</b><b>音の発声</b>と、<b>口周りを中心にした表情筋のトレーニング</b>で克服した。</p>
<p>また<b>音読レッスン</b>に、僕は<b>新聞のコラム</b>を使用しているのだが、Ｍさんは初見でスラスラ読めた。ほとんどつっかえる場面がないのだ（スラスラといってもあの発声、あの発音だが）。訊いてみると、彼は<b>活字の音読</b>に関しては習熟しているのだという。</p>
<p>「小さい頃、吃音（どもり）がひどかったのです」<br />
「その治療に<b>音読療法</b>を？」僕は重ねて尋ねた。<br />
「それはご両親とか学校の先生のススメで始めたのですか？」<br />
Ｍさんは首を横に振った。<br />
「では、自分から？」</p>
<p>驚いた。実は僕も幼少の頃、軽度の<b>吃音症</b>を抱えていたのだが、それを治したくて、自ら進んで音読を始めた経緯があった。Ｍさんとの思わぬ符号を見つけた僕は、もう何がなんでも彼の<b>声と話し方を改善</b>させてやろうと、あらたな闘志を燃やしたのだった。</p>
<p>とはいえＭさんの音読は前述したとおり、句読点をまったく無視した、ただ先へ先へと機械的に流していく<b>棒読み</b>で、加えて例の発声・発音である。</p>
<p><b>本の音読</b>において、僕の場合は幼い頃より、ドラマティックに読み上げたり、声を演じ分けるという遊びに無上の楽しみを見出していたが、Ｍさんの場合はロボットの声真似に終始した。その違いが今、教える側と教わる側に分岐したのかと思うと、感慨深いものを覚えずにはいられなかった。</p>
<p>そこで僕は、Ｍさんの音読をこっそり録音した。意識せずに読んでほしかったからだが、それをあとで聞かされたＭさんの反応は、想像以上だった。彼はがっくりと肩を落とし、「ひどい…」と、ひと言つぶやいた。</p>
<p>余談だが、<b>ほとんどの人が自分の声や話し方を２割り増しプラスに捉えている</b>。でも録音した自分の声を聞いてみると、はっきりわかる。<b>発音や話し方のイヤな癖が耳につく。声も、なんか変。</b>「えー、これが私の声？ 」そう、それがふだん他人が聞いている、あなたの本当の声なのだ。</p>
<p>「<b>ビフォー＆アフター</b>のビフォーです。アフターが楽しみでしょ！」<br />
そう言って、僕はＭさんを激励した。でも正直、どの程度改善されるのか見当もつかなかった。</p>
<p>いや、もっと正直に言おう。Ｍさんの<b>声と話し方を劇的に変える</b>なんて、どだい無理な相談だ。しかも１か月という短期間で…。そう思わなかったといえば、嘘になる。</p>
<p>僕は覚悟した。「ボイス講師の看板をおろすことになるかもしれない」と。<br />
でも、Ｍさんは頑張った。半端なく頑張った。</p>
<p>結論を言ってしまえば、最後のレッスンで録音した彼の声は、最初のものとは別人といってよかった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li><strong><span style="color: #ff6600;">精神論では何も変わらない</span></strong>。自ら体験し学習しよう。</li>
<li>呼気は長いほうが有利だが、問題は<strong><span style="color: #ff6600;">呼気のコントロールと声の乗せ方</span></strong>。</li>
<li><strong><span style="color: #ff6600;">新聞のコラムを音読する</span></strong>（例／読売「編集手帳」、朝日「天声人語」、日経「春秋」）</li>
<li><strong><span style="color: #ff6600;">自分の声を録音して聴いてみる</span></strong>（90％の人がガッカリするそうだ。10％の人は、すぐにこのブログを閉じてかまわない）。</li>
</ol>
</div>
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		</item>
		<item>
		<title>第1話序章　ボイス講師誕生</title>
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		<pubDate>Thu, 01 May 2014 03:00:43 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第1話　ボイス講師編①　愛のレッスン]]></category>
		<category><![CDATA[ナレーション]]></category>
		<category><![CDATA[ボイストレーナー]]></category>
		<category><![CDATA[付属養成所]]></category>
		<category><![CDATA[声のプレイヤー]]></category>
		<category><![CDATA[声優プロダクション]]></category>
		<category><![CDATA[声優界]]></category>
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		<category><![CDATA[朗読]]></category>
		<category><![CDATA[発声]]></category>
		<category><![CDATA[養成所の講師]]></category>
		<category><![CDATA[１ヵ月で声が良くなる]]></category>
		<category><![CDATA[ＣＭナレーション]]></category>

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		<description><![CDATA[「１ヵ月で声が良くなると言うのは本当でしょうか。 具体的にどの程度改善するのか教えてください。 急いでいます。10月中に声に自信が持てる自分になっていますか？」 こんなメールが届いたのは、ときおり夏が未練がましく顏を出す [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「<b>１ヵ月で声が良くなる</b>と言うのは本当でしょうか。 <b>具体的にどの程度改善するのか</b>教えてください。 急いでいます。10月中に<strong>声に自信が持てる自分</strong>になっていますか？」</p>
<p>こんなメールが届いたのは、ときおり夏が未練がましく顏を出す9月の中旬だった。差出人は、某大手企業に勤めるＭさん。社会人二年生。 IT系のインストラクターをしているという青年だ。</p>
<p>取り急ぎ、<strong>現在どのような声で、１ヵ月後にどのような声になり、何を達成したいのか</strong>聞いてみた。すぐに返信が届いた。</p>
<p>「<b>声に抑揚が無い、一本調子、ロボットのような口調、</b><b> </b><b>聴いていて疲れる</b>、等々指摘されております。 <b>よく通る声、人に不快感を与えない声になりたい</b>。インストラクター認定試験に合格し、1人前になることが当面の目標です」</p>
<p>なるほど、実に見上げた心がけだ。論旨も理路整然としている。それにしても、<strong>ロボットのような口調</strong>というのが気になった。</p>
<p>数年前から、ある人のすすめがあって、<b>ボイストレーナー</b>として活動している。しかし、僕はあくまでも<b>声のプレイヤー</b>を自任している。だから<strong>トレーナー教育</strong>も受けていない（そんなものがあるのかどうか知らないけど）。</p>
<p>そもそも、もう10年くらい前になるだろうか、 そのとき所属していた<b>声優プロダクション</b>、 そこの<b>付属養成所</b>で<b>声優の卵たち</b>を指導したのがきっかけだった。</p>
<p>あるとき代表に呼ばれた。これは何か、僕の命運を左右するような、ぶっちゃけ代表作となるような大きな仕事が入ったに違いない。喜び勇んで、僕は事務所に代表を訪ねた。</p>
<p>「ありがとうございます。とうとう僕に、ブラピの役が回ってきましたか！」<br />
駆けつけ一番、大口をたたく僕をチラ見した代表は、チッチッチッと舌を鳴らしながら、 左手の人差し指を左右に振った。</p>
<p>「なるほど、レオナルドのほうですね」 僕は<b>滑舌の良さ</b>を誇示して言った。<br />
「語り人くん、きみ、相変わらすデカプリオなことを言うね」<br />
「……」 笑えなかった。</p>
<p>なぜって、実はこの少し前、代表と僕は<strong>NHK-BSのドキュメンタリー番組</strong>に連れ立って声の出演をしたのだけど、そのときの一件を思い出したからだ。それは<strong>ジェームズ・ディーン</strong>の特番だった。</p>
<p>他の多くの声優が、この稀代の名優の名前を「ジェームス・ディーン」と発音していたことに、代表はひどく憤慨していた。「ジェームスじゃない、ジェームズだ。まったく、近ごろの声優はなってない！」と。</p>
<p>そんな彼が冗談でも、<strong>ディカプリオをデカプリオと発音すること</strong>に、僕は異議を唱えたかったわけだけど、まあ、そこはさわらぬ神にたたりなし。黙ってやり過ごすのが賢明だろう。</p>
<p>だって彼の世代の多くが、たとえば「ディー」と言えず「デー」と発音してしまうことを僕は知っていた。代表はまじめに「デカプリオ」と言ったのかもしれないじゃないか。</p>
<p>気を取り直して僕は、次のプレゼンに移った。<br />
「ありがとうございます。とうとうきましたか。<strong>ジェットストリームのナレーション</strong>は僕の長年の夢でした」そう言って僕は、あの往年の<strong>名ナレーター、城達也さん</strong>の語りを披露した。</p>
<blockquote><p>満点の星をいただく　果てしない光の海を<br />
豊かに流れゆく風に 心を開けば<br />
煌く星座の物語も聞こえてくる<br />
夜の静寂の　なんと饒舌なことでしょうか</p>
<p>（中略）</p>
<p>日本航空があなたにお送りする「音楽の定期便」<br />
ジェットストリーム<br />
皆様の夜間飛行のお供をするパイロットは私 語り人です</p></blockquote>
<p>「気がすんだかね。夢を見るのはきみの自由だが、ジェットストリームはもうナレーターの手を離れている。<strong>今は有名俳優がキャステイングされる時代</strong>だ。もう忘れなさい」</p>
<p>「わかりました。となると、ト○タ自動車の<b>ＣＭナレーション</b>の年間契約ですね！」<br />
「きみはス○ル自動車をやっていたから、それは無理に決まってるだろう。もういい。もうたくさんだ。それくらいにしておきなさい」</p>
<p>「それともまさか、ＮＨＫの子ども番組『お母さんといっしょ』の<strong>歌のお兄さん</strong>じゃないでしょうね。それは困ります！　歌はともかく、僕は顔出しはしないと…」</p>
<p>「もう、よろし。黙らっしゃい！」 言われたとおり僕は黙った。<br />
大きな咳払いをひとつして、代表は言った。</p>
<p>「語り人くん、きみ、養成所のほうで<b>発声</b>と<b>ナレーション</b>、<b>朗読</b>のクラスをもってくれないかね」<br />
「……」<br />
「そろそろ<strong>講師</strong>の経験をしておくといい」<br />
「……」<br />
「急だが、来月から毎週水曜日の19時だ」<br />
「……」<br />
「どうした？　なぜ返事をしないのかね」<br />
「黙らっしゃいとおっしゃいましたので」</p>
<p>「ここは喋るところでしょ。わたしはきみと漫才をやってるわけじゃない」<br />
「僕にもそのつもりはありません。相方にはうまいボケをかませる人を」<br />
「もう、よろし！　それで、どうなんだね。悪い話じゃないだろう」</p>
<p>「僕が<b>養成所の講師</b>を？　お言葉ですが、それは僕にとっても生徒にとっても、悪い話にカテゴライズされるでしょう」僕はもってまわった言い回しで反抗した。</p>
<p>「だいたい僕は、<strong>学校にも養成所にも行かずこの世界に入った不届き者</strong>ですよ。みんなに言われています。あいつはけしからん、つぶしてやれって」</p>
<p>「語り人くん、言わせてもらえば」代表はジロリと僕を睨んで言った。<br />
「きみに、つぶしてやりたいと<strong>嫉妬を買うほどの華やかな実績</strong>があったかね」</p>
<p>うっ。ボディに効いた。しかし腹筋は鍛えてある。まだ反撃は可能だ。</p>
<p>「では、なおさら僕は適任ではないでしょう」<br />
「後進の指導も大事な仕事だよ、語り人くん」<br />
「わからないですね。なぜ、僕なのですか？」</p>
<p>「それがわたしにもよくわからないのだよ。ともかくきみは、養成生やジュニアの若い子たちに人気があるようだね。それで決まりだ。現場だけじゃなく、教室でも彼らの面倒をみてあげなさい」</p>
<p>「面倒って、あの、代表、僕は自分の面倒をみるだけで手一杯です。無理です。ほんとうに勘弁してください」</p>
<p>そう懇願すると、代表はコホンと咳払いをしてから、パソコンのモニター画面を僕のほうに向けた。最初からこうなることを予想して準備しておいたのだろう。「<b>所属タレントのスケジュール一覧</b>」が開かれていた。</p>
<p>「きみのスケジュール、わたしの頭と同じだね」<br />
そう言って代表は、９割がた白くなった頭髪をいまいましそうに両手でかきむしった。面白くもないジョークにパフォーマンスだが、言いたいことはわかった。</p>
<p>「ほぼ真っ白です」しかたなく僕は付き合った。<br />
「そうなんだよ。寂しいねえ。黒くしたいねえ。クローは買ってでもシローってねえ」<br />
哀しげに、ため息まじりに代表は言った。</p>
<p>「＂若いときの苦労は買ってでもしろ＂ということわざで僕を励まし、なおかつそこにスケジュールの黒白をからめて、実にお見事です」<br />
ああ、なんという茶番。僕は代表が書いたシナリオどおりに喋らされていた。</p>
<p><b>芝居の上手さ</b>には定評のある代表だが、ときおり挟まずにいられないらしい<b>ギャグの稚拙さ</b>にも定評があった。</p>
<p>「きみの物分かりのよさとギャグ分かりのよさ、わたしは大好きだよ。語り人くん、やはりわたしとコンビを組まないかね」</p>
<p>ここでニヤリと不敵な笑みを見せる、その<strong>老練な演技</strong>。さすが<b>声優界</b><strong>の草分けにして重鎮</strong>。今度こそ、僕は本当に黙るしかなかった。</p>
<p>そんな経緯で<strong>発声や語りの基礎</strong>を教えるハメになったのだけど、だいぶあとになってマネージャーから「実はですね…」と真相を打ち明けられた。</p>
<p>はじめ僕よりも人気、実績ともに華やかな<b>所属声優</b>が受け持つことになっていたが、彼に大きな<b>レギュラーの仕事</b>が入った。そこで急きょ、スケジュールに空白の目立つ僕にお鉢が回ってきたらしい。人気、実績とも地味な僕に。</p>
<p>「だ、代表…だましたな。おのれ、タヌキじじいめ！」 とマネージャーの襟首を掴んだが、もちろん彼が怒られる謂れはない。</p>
<p>「でも語り人さんの授業、評判いいっスよ」<br />
おしゃべりなマネージャーくんは、またしても余計なことを言ってしまったようだ。<br />
「あのねえ、<strong>クライアントや制作会社の評判が命</strong>なの、オレたちは」</p>
<p>「でも語り人さん、楽しそうに教えてるじゃないっスか。ノリノリで」<br />
と言いながらマネージャーくんは腰をクネクネと揺らした。どうやら僕のマネをしているつもりらしい。</p>
<p>「オレはそんなカッコわるい腰の振り方はしない。 いや、だいたい腰なんか振らない！」<br />
「いや、あれが色っぽいって評判が」<br />
「評判って、教え方じゃないのか。もういい！」</p>
<p>閑話休題。<br />
僕はいったい、何の話をしていたのか。 そうだ、大手企業に勤務するＭさんの話だった。</p>
<p>ええ、その話は、また次回ということで。<br />
とりあえず今日は「<b>語り人はいかにしてボイス講師になったか</b>」<br />
というお話でした。では、ご免！</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li><span style="color: #ff6600;">声や話し方をどう変えて、何を成し遂げたいか</span>、目的を明確にする。</li>
<li><span style="color: #ff6600;">うまい話や巧妙な誘い</span>にはまず裏があると心得よ。</li>
<li>自分を大きく売り込むには<span style="color: #ff6600;">ユーモアのセンス</span>が不可欠だ。</li>
<li>目上の人のヘタな（あるいは寒い）ギャグにどれだけ付き合えるか。これは<span style="color: #ff6600;">成功の秘訣</span>が10あるとすれば、3位くらいにランクインするんじゃないかと僕は確信している。</li>
</ol>
</div>
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