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	<title>声で人生が変わる！「愛と再生」のボイス・ストーリー　ユアボイス・マイボイス &#187; 吹き替え</title>
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	<description>あなたは自分の「声」が好きですか？ あなたは「声」で損をしていませんか？</description>
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		<title>第3話5章　一流の条件</title>
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		<pubDate>Tue, 16 Sep 2014 05:17:58 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第3話　ボイスアクター編②　一流の証明]]></category>
		<category><![CDATA[ビル・ゲイツの英語]]></category>
		<category><![CDATA[リップシンク]]></category>
		<category><![CDATA[一流の条件]]></category>
		<category><![CDATA[世紀の対談]]></category>
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		<category><![CDATA[声優デビュー]]></category>
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		<category><![CDATA[神７]]></category>

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		<description><![CDATA[茂森愛由美から手紙が届いたのだ。メールではなく、郵便で届けられた封書の手紙。彼女らしい端正な字体で綴られた、美しい日本語の手紙。 それから僕と茂森愛由美は、半年後の今も、毎週のように顔を合わせている。それを一柳は知らない [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>茂森愛由美から手紙が届いたのだ。メールではなく、郵便で届けられた封書の手紙。彼女らしい端正な字体で綴られた、美しい日本語の手紙。<br />
それから僕と茂森愛由美は、半年後の今も、毎週のように顔を合わせている。それを一柳は知らない。<span id="more-267"></span></p>
<p>（4章「<a href="http://kataribito.net/03/03-4/">一流の初恋</a>」のつづき）</p>
<p>1999年シアトルのワシントン大学で行われた、<b>ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットの夢の対談</b>。いわずと知れたマイクロソフトの創始者と投資の神様だ。当時、この世界No.1とNo.2の億万長者の顔合わせは「<b>世紀の対談</b>」といわれた。</p>
<p>翻訳作業は順調に進んでいくかに見えたが、あるところで苦戦を強いられにっちもさっちもいかなくなった（「にっちもさっちも」って、漢字で「二進も三進も」って書くんだって。知ってた？）</p>
<p><b>ビル・ゲイツの英語</b>は正確でわかりやすい。語り口も端正で言語明瞭。ユーモアも上品で洗練されていて、なんの問題もない。</p>
<p>参考までにここで一例として、ふたりの生しゃべりを紹介しよう。<br />
ゲイツはこんな具合だ。</p>
<p>「ええ。大学を辞めて会社を興すことに不安はありませんでした。創業のころはリスクのことなんか考えもしませんでしたよ。ただひとつ怖かったのは、何だと思います？　それはね、<b>雇った友人が給料をほしがったこと</b>です（学生たちの大爆笑）」（語り人訳）</p>
<p>一方、バフェットはというと、軽妙洒脱なユーモア精神の持ち主で語りの名手としても名高いが、<b>自分のジョークに自分で笑う</b>という禁じ手も多い。こんな感じ。</p>
<p>「人々がよくいうセリフはこうだ。『好きでもないけど、あと10年はこの仕事をつづけて、そのあとにやりたかったことをやるんだ』って。笑っちゃうね！　これは<b>年寄りになったときのためにセックスを控えている</b>ようなもので、なんともばかげた話だと思わないか（自分で爆笑）」（語り人訳）</p>
<p>バフェットの話には、この手の喩えが頻繁に出てきて苦笑を禁じえないのだけど、それは別にして翻訳上の問題があった。彼の声はダミ声で、話し方はしばしば言語不明瞭。ときにスラングも飛び出す。もともとの音源の悪さも手伝って、聴き取りにくいことこの上ない。</p>
<p>そう、問題はウォーレン・バフェットだった。それでなくても僕は<strong>リスニング</strong>が苦手で、いくつかのフレーズはもうさっぱりお手上げで、<strong>ネイティブスピーカー</strong>に教えを乞わなければならかった（それでもわからない単語や言い回しは残った）。</p>
<p>そんなわけで、結局そこは前後の文脈から無難で適切と思われる日本語をあてることになった。一柳だったらきっとそこは<b>下ネタ風のアレンジ</b>を加えるんだろうな、と思いながら。</p>
<p>収録日の前々日、僕は一柳に<b>台本と映像</b>をメールで送った。<br />
当日の<b>初見読み</b>を宣言した一柳だったが、やつはきっと事前に台本に目を通したいはずだ。目を通したいどころか、映像と合わせてしっかり読み込みたいに決まっている。これは<b>ナレーション</b>じゃない。<b>吹き替え</b>なのだ。</p>
<p>吹き替えで映像の人物の口の動きに声を合わせることを<b>リップシンク</b>という。<b>完璧なリップシンク</b>になるように、翻訳した日本語はいつも以上に精査し、台本を仕上げた。</p>
<p>収録日当日。朝の10時にスタジオ入りした。この吹き替え収録を行なうときにいつも利用している<b>横浜のスタジオ</b>だ。</p>
<p>ドアを開けると待ってましたとばかりに、<b>スタジオのオーナー兼レコーディング・エンジニア</b>の寺さんこと寺田さんが、いきなり僕のみぞおちあたりをパンチで連打し、<b>興奮を押し殺した声</b>で言った。</p>
<p>「語り人くん、あの子、だれさ？　あの、しょんべんチビっちゃいそうな美人ちゃんだよ。どっかのアイドル？」</p>
<p>寺さんは、この横浜の地にスタジオを構えて30年のベテランだ。僕とは20年来の付き合いになる。</p>
<p>自分が産まれ育って親から譲り受けた７階建てのビルの地下で、「ここがおれの遊び場」と言いながら、毎日楽しそうに働いている。</p>
<p>あちこちのレコーディングスタジオが次々と廃業に追い込まれるなか、彼の少年のような親しみやすい人柄と、都内の半額以下という料金の安さもあって、都内からの利用者も呼び込む人気のスタジオなのだ。</p>
<p>マンガ大好きの寺さんの趣味は<b>フィギュア制作</b>だ。<br />
いや、趣味なんてもんじゃない。<b>副業か本業か</b>。そんなこともどうでもいいくらい、とにかく<strong>プロ</strong>なのだ。評判が評判を呼び全国から注文を受けるほどで、とりわけ彼の<b>美少女フィギュア</b>はマニア垂涎の的となっている。</p>
<p>スタジオの一画にフィギュアコーナーがあり、寺さん作のさまざまなフィギュアが特別仕様のケースに陳列されている。そしてそのセンターの座を占めるのが、彼の真骨頂というべき「美少女フィギュア」だ。その数30体で、これは非売品だそうだ。</p>
<p>「これ、おれのベスト30ね。1体50万で売ってくれって言われても売らなかったさ」と寺さんは、可愛いわが子を守り抜く父親のような顔で自慢する。</p>
<p>フィギュアの足元にはそれぞれ名札がついている。「水島愛理」とか「近藤優子」とか「足立香苗」とか、30体全員に名前があるのだ。</p>
<p>その人気はマニアたちがネットで<strong>ファン投票</strong>を行うほどの盛り上がりで、上位７人は「<b>神７</b>」と呼ばれている。センターは２年連続で水島愛理が取っており、アイリーンの愛称で呼ばれ絶大な人気を誇っている。</p>
<p>「これ、みんな本名だよ。おれが今まで実際に会って、しょんべんチビりそうになった女の子たち」寺さんはフィギュアに興味を示すお客さんがくると、うれしそうに目を細める。</p>
<p>そんな、しょんべんチビっちゃうほどの美少女が突然、生身の姿で目の前に現れたものだから「これは一大事！」と、寺さんは朝から興奮しているのだ。</p>
<p>「えっ、もう来てますか？　10時半でいいって言ったのに」と僕は時計を見ながら言った。「彼女は今日、女性のパートを担当してもらう声優さん。まだ卵ですけどね」</p>
<p>「ねえ語り人くん、頼むよ。紹介してよ。おれ、久しぶりにビビッときちゃったよ。その、制作意欲をかきたてられたっていうかさ。あの子のフィギュアをさ、作りたいんだよね」</p>
<p>寺さんは来年還暦を迎えるというのにとても若々しく、なおかつシャイな人で、こんな商売をやっていながら女性とろくに話もできない純情派だ。</p>
<p>「いや、挨拶はしたよ。名前、名乗っただけだけどさ。おれ緊張しちゃって、チビりそうだったんでトイレ行ってさ。そのあと熱心に台本読んでるから話しかけるのも悪いし、邪魔しちゃいけないと思ってさ。ここで語り人くんがくるのを今か今かと待ってたわけよ。えっと、茂森さんっていったかな」</p>
<p>茂森愛由美──<br />
僕だって今でこそ慣れたけど、半年前に彼女と連絡先の交換をしたとき、緊張して何も言えなかった。ましてや女性に奥手で、フィギュアとしかまともに話しができない寺さんだ。無理もない。</p>
<p>「寺さん、まあ落ち着いて。とにかく行きましょう。ちゃんと紹介しますから」と言って、僕は奥のロビーに入っていった。</p>
<p>４卓ある丸テーブルのひとつに姿勢よく腰をかけ、ペンを手に真剣な表情で台本を読んでいる茂森愛由美がいた。僕の姿を認めると顔中に笑みが広がり、きびきびした動作で立ち上がった。</p>
<p>「おはようございます！　なんだか落ちつかなくて、早くきてしまいました。ご迷惑ではなかったでしょうか」</p>
<p>「おはよう」と僕は笑って返した。「僕は迷惑じゃない。だけど、スタジオの人はどうかな。迷惑だったかもしれないよ」</p>
<p>すると寺さんは顔を真っ赤にして割って入った。「迷惑だなんて、とんでもない！　営業は９時からだもん。もう１時間早くたってよかったさ。語り人くん、バカなこと言わないでよ」</p>
<p>ここで二人をそれぞれ紹介してから、僕はあらためて茂森愛由美に向かって言った。「現場には早くて15分前だ。それより早いと邪魔になる場合がある。早く着いてしまったときは近場でお茶をするか、軽い発声をしながら周辺を歩くといい」</p>
<p>「うちは問題ないさ！」寺さんがまた割って入った。「お茶はここで飲めばいいし、発声もここでやればいいよ。部屋は、じゃなくてブースは４つもあるんだ。いつきてくれたっていいさ」緊張しながらも、寺さんはなかなか大胆な発言をした。</p>
<p>「先生、常識が足りなくて申し訳ありませんでした。以後、肝に銘じます」茂森愛由美は僕に頭を下げてから、寺さんを見て言った。「ありがとうございます。お心遣いに感謝します」</p>
<p>茂森愛由美にそう言われ、寺さんはまた真っ赤になって「なーんも、なーんも！」と言いながら、顔の前で激しく片手を振った。</p>
<p>この辺でそろそろ説明する必要があるだろう。</p>
<p>半年前、僕は茂森愛由美から手紙をもらった。<br />
それは僕に、<b>個人レッスンを依頼する</b>内容の手紙だった。</p>
<p>養成所では１クラス20名もいて、とても一人一人フォローできる体制ではない。<b>自分はもっともっと学びたいし、もっともっと実践的な指導を欲している。</b><b></b></p>
<p>また<b>養成所の講師</b>に対しても、あることがあってから少なからず不信感を抱いている。<b>レッスンより男女交際に熱心な人</b>も見受けられる。<b>とにかく自分は集中したいのだ。</b>そんなことが書かれていた。</p>
<p>ほかでもない、こういう展開になることを僕は期待もし、同時に恐れてもいたのだ。その後のやり取りの詳細は省くが、とにかく僕は茂森愛由美の申し出を承諾した。</p>
<p>どうして断ることなどできただろう。断るとすれば、理由は何だ？</p>
<p><b>愚鈍な中年男</b>になるのが怖い。それもある。でもそれ以上の理由がある。<br />
僕は彼女に、実は<b>方向転換してほしい</b>と思っていた。<b>声優ではなく、</b><b>別の道に進んでほしい</b>と。</p>
<p>ならば申し出を断るのではなく受けることで、つまり<b>彼女と関わることで、その見極めをしよう</b>。そう考えたのだ。</p>
<p><b>週に一回、</b><b>90</b><b>分の個人レッスン</b>。場所は四谷三丁目。彼女がアルバイトをしている焼鳥屋。店長の山田さんがぜひ使ってくれと、店にある個室スペースを提供してくれた。もちろん開店前の時間帯だ。</p>
<p>レッスンが終わると茂森愛由美はそのまま勤務につく。そして僕はといえば、まことにありがたいことに、店長の好意で賄いをご馳走になる。</p>
<p>賄いは料理の得意なスタッフが作ってくれることになっていたが、茂森愛由美はそれでは申し訳ないと、レッスンの日は自ら腕を奮ってくれている。そして、その日の復習をしながら一緒にいただく。</p>
<p>仕事のない日はそのまま少し飲んで帰る。また近場で仕事が終わったときは顔を出し、ときには人を連れて暖簾をくぐるようにもなった。</p>
<p>つまり週に2.3回、僕は茂森愛由美と顔を合わせていることになる。山田店長とは今ではすっかり同士のような仲になり、店のスタッフたちとも気の置けない関係になった。</p>
<p>茂森愛由美は着実に力をつけていた。<b>できなかったことができるようになる喜び、楽しさ</b>。これを幼いころから勉強と空手の稽古で知っている彼女は、<b>ひとつひとつの課題を確実にものにするコツ</b>を心得ていた。</p>
<p><b>感情や気分のばらつきが少なく、勤勉であり高い集中力を持っている。何より素直で可愛げがあり礼儀正しかった。</b><b></b></p>
<p>こうした資質こそが、僕に言わせれば<b>一流の条件</b>であり、<b>成功者の適正</b>なのだ。それがこの半年間で得た、茂森愛由美に対する僕の評価だった。</p>
<p><b>そしていよいよ、彼女にとって実践のときが訪れた。<br />
</b>ちょうどタイミングよく、女性の声が必用な案件が回ってきた。しかも、彼女にぴったりの役どころが。（タイミングのよさも彼女のえがたい才能のひとつだ）。</p>
<p>ひとつはアメリカのある<b>テレビ局のアナウンサー</b>の役。話題の人をゲストに迎え、女性アナウンサーがインタビューする番組。ゲストは作家でありカリスマ・マーケターとして日本でも有名な人物。その声は僕が担当する。</p>
<p>そしてもうひとつの役が、<b>米国コロンビア大学のエリート女子学生</b>だ。例のビル・ゲイツとウォーレン・バフェットの対談で、ふたりに質問する女子学生の役を、声を変えて二人分やってもらうことにした。四人いる男子学生の役は、一柳と僕で分担するつもりでいた。</p>
<p>僕が正式にオファーを出すと、茂森愛由美は初めての声の仕事に飛び上って喜んだ。その勢いで僕に抱きつくと「わたし、先生にお会いできて本当によかった」と涙声で言った。</p>
<p>「喜ぶのはまだ早いぞ」体を引き離してから、僕はわざと冷たく言い放った。<br />
「レッスンはこれからもっと厳しくなる。<b>正確な母音</b>と<b>キレのある子音の発音</b>。<b>拗音の精度</b>も上げていかなきゃ。語尾が弱くなる弱点も克服してもらう。<b>アナウンサーの語尾を強く響かせる発声法</b>をマスターするんだ」</p>
<p>「はい、先生についていきます」茂森愛由美は鼻をすすりながら言った。</p>
<p>「その声だ！」僕は雑念を払い、彼女の声だけに集中した。<br />
「いま鼻声になったことで<b>艶と響き</b>が加わった」そう言って、<b>アナウンサーがやっている鼻で響かせる鼻共鳴と鼻うがいの方法</b>を教えた。</p>
<p>それからノートパソコンを開いて映像を見せた。正味20分ほどのインタビューだ。ひと通り見終わると茂森愛由美は、<b>翻訳台本</b>はいつもらえるのかと訊いた。</p>
<p>「僕は<b>ゲイツとバフェットの翻訳</b>に傾注したい。だからインタビューのほうは、下訳を誰かに頼もうと思っている」というと、彼女は僕の目を真っ直ぐに見据えて言った。</p>
<p>「あの先生、わたしがやってはだめですか？」</p>
<p>英検１級、TOEICは900点超。茂森愛由美が英語に堪能なことを聞いていた僕は、その選択肢も考えないわけではなかった。でもいくら英語ができても翻訳はヘタクソという人を僕はたくさん知っている。<b>翻訳は英語力以上に日本語力が求められる</b>からだ。</p>
<p>それになんといっても今は、<b>声優のトレーニングに専心させるべきときだ</b>という思いもあった。たとえこの先、方向転換させるにしても。</p>
<p>「だれかに頼むなら、わたしにやらせてください。先生は、<b>自分が声をあてるなら翻訳から責任を持ちたい</b>と、このお仕事を始められたと聞きました。わたしも、そうしたいです」</p>
<p>「大学の勉強とボイスレッスンとアルバイト、時間はあるのか？」<br />
「わたし、先生が目標なんです」<br />
「僕は根無し草だ。目標にしちゃいけない。君にはもっと…」</p>
<p>君には<b>もっと高いところを目指してほしい</b>。そう言おうとする僕を、茂森愛由美は遮った。「ピシャリ」と音がするような見事な遮り方。本当に間のいい子だ。</p>
<p>「時間はだいじょうぶです。では、そういうことで。あと、<b>ゲイツとバフェットの映像</b>もお願いします。学生のパートも、わたしが訳します」</p>
<p>そう言って頑固な性質を垣間見せた彼女だが、結論を言うと、完成した翻訳は想像以上にできていた。「ざっとした下訳でいい。あとは僕が調整する」と念を押していたのに、すでに<b>吹き替え翻訳</b>の体をなしていた。</p>
<p>ときどき顔を覗かせる<b>翻訳調の言い回し</b>、訳としては正しくても、<b>誤訳を恐れずあえて大胆に意訳すべき語句</b>、そして<b>語尾の収め方</b>など、いくつか修正を要するポイントはあるものの、それでもじゅうぶん合格点をあげていい完成度だった。</p>
<p>英語に関しては僕なんかよりはるかに高い能力を持っていることはわかっていた。なにしろ僕は、英検１級の二次試験を３回受験して３回落ちた劣等性だ。TOEICには挑戦すらしていない。900点なんてとんでもない。たぶん700点もいかないだろう。</p>
<p>翻訳が完成したら、あとはひたすら<b>読み込み</b>だ。レッスンで、<b>映像を流しながら実際に声をあてていく練習</b>を何度も繰り返した。勘がいいうえに努力家の彼女は、みるみる役をものにしていった。</p>
<p>そのようにして、僕たちは収録の日を迎えた。茂森愛由美にとっては<b>記念すべき声優デビューの日</b>を。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（次章につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>パートナーを選ぶとき重視すべきは<span style="color: #ff6600;"><b>お金に対する価値観</b></span>だと思う。つまりお金にきれいかどうか。それは事業も結婚も同じだ。</li>
<li>やりたいことを諦めきれず<span style="color: #ff6600;"><b>再チャレンジ</b></span>する。一度目はダメだった。二度目もドロップアウトする人は、<span style="color: #ff6600;"><b>一度目になぜダメだったのか</b></span>を正しく理解しないまま進むからだ。</li>
<li>「こっちが<span style="color: #ff6600;"><b>本業</b></span>であっちが<span style="color: #ff6600;"><b>副業</b></span>」などと言っているうちは、どっちもたかが知れている。</li>
<li>ろくに本も読まないくせに<span style="color: #ff6600;"><b>声優・ナレーターになりたがる人</b></span>が多いのはどうしたものか。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>できなかったことができるようになる。</b></span>その嬉しさ・楽しさをそこで終わらせないように。まぐれではなく<span style="color: #ff6600;"><b>法則化させ習慣化させ、そして身体化させ技化させていく</b>。</span></li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>感情や気分のばらつきがなく、勤勉であり高い集中力を持っている。何より素直で可愛げがあり礼儀正しい。</b></span>そんな人は少ない。だから一流なのだ。</li>
</ol>
</div>
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		</item>
		<item>
		<title>第3話1章　一流への序章</title>
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		<pubDate>Thu, 31 Jul 2014 04:01:14 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第3話　ボイスアクター編②　一流の証明]]></category>
		<category><![CDATA[ちなみに]]></category>
		<category><![CDATA[ウィスパーボイス]]></category>
		<category><![CDATA[ウォーレン・バフェット]]></category>
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		<description><![CDATA[「申し訳ないっすけど、語り人さんのその仕事、受けられないっす」 僕が海外映像の吹き替えを請け負っている音声制作の仕事があって、キャスティングのため連絡を取った相手は、その申し出を言下に断った。 彼の名前は一柳成人（いちや [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「申し訳ないっすけど、語り人さんのその仕事、受けられないっす」</p>
<p>僕が<b>海外映像の吹き替え</b>を請け負っている<b>音声制作</b>の仕事があって、<b>キャスティング</b>のため連絡を取った相手は、その申し出を言下に断った。<span id="more-208"></span></p>
<p>彼の名前は一柳成人（いちやなぎなるひと）。僕は親しみを込めて「いちりゅう」と呼んでいる。<b>ナレーター</b>としてかつて同じ事務所に所属した後輩だ。いや、実はもっと昔からの因縁浅からぬ付き合いなのだけど、その話はあとにしよう。</p>
<p>「受けられないって、それはギャラの問題かな？」<br />
「うっす。今の自分は…」<br />
「もっと高いナレーターってことだ」<br />
「少なくとも、それを目指してるっす。ホント申し訳ないっす」</p>
<p>謝ることはない。<b>志の高い男</b>は気持ちがいい。僕は大好きだよ。<br />
ただ一柳は、僕が海外映像の吹き替え案件だと言うと、すぐに<strong>ギャラの額面</strong>を聞いてきた。メディア情報とかキャスティングの詳細説明に入る前に。</p>
<p>噂は耳に入ってきていた。一柳が最近、ずっと付き合いのあった<b>制作会社</b>や<b>キャスティング会社</b>からのオファーを断わっているという噂だ。「もう日の当たらない安い仕事は受けない」という理由で。</p>
<p>この噂はいうまでもなく、ナレーター仲間たちによって、一柳を非難する口調で流布されていた。「あいつ、おれたちを二流扱いしやがった。いったい何様のつもりだ！」と。</p>
<p>なるほど。こうしておまえは仲間や関係者を敵に回しているのか。<br />
「一柳、おまえにとって<b>志の高さはギャラの高さとイコール</b>なのか」という言葉を飲み込んで、僕はできるだけそっけなく返した。</p>
<p><b>そっけなさを表現する声</b>を作るには、<b>鼻共鳴</b>が有効だ。<br />
鼻に意識をもっていけばすぐできる。鼻から息を抜く<b>鼻歌</b>のイメージ。<br />
このさい<b>腹式</b>は使用しない。つまりお腹で支える必要はない。<b>鼻でつぶやく</b>感じ。要所に<b>ウィスパー</b>（ささやき声）を混ぜればなお素敵だ。中音域の<b>クールなイケメンボイス</b>の出来上がり。</p>
<p>「了解。友人のよしみで真っ先に声をかけたんだけど、どうやら噂は本当だったらしい。まあいい。大物の吹き替えだ。ちなみにバフェットなんだけどね。やりたいやつはいくらでもいる」</p>
<p>「ちょ、ちょっと待ってください！」<br />
案の定、このひと言に一柳は食いついた。</p>
<p>「語り人さん、バフェットってなんすか。<br />
もしかして<b>ウォーレン・バフェット</b>のことっすか？」<br />
「そうだよ。ちなみに<b>ビル・ゲイツ</b>はおれがやるんだけどね」<br />
週末の予定でも話すみたいに僕は答えた。</p>
<p>ところで、僕のキライな言葉に「<b>ちなみに</b>」がある。最近やたらめったら使う人がいて、ほとほとうんざりしている。僕もいま２回使っちゃったけど、これは正しく使えば、<strong>意図することを印象深く伝える</strong>ことができる、実に便利な言葉であることを示したかったからだ。</p>
<p>ちなみに（因みに）とは、前に述べた事柄に、あとから簡単な補足を付け加えるときに用いる接続詞。「それに関連して」「ついでに言うと」という意味。「ちなみに」のあとに「言う」などの動詞を伴って「ちなみに言えば」「ちなみに申しますと」と副詞的にも用いる。（「goo辞書」参照）</p>
<p><b>「ちなみに明日、何時だっけ？」<br />
</b>これは完全に誤用。何も因んでいない。<br />
「要するに」が要していない。<br />
「逆に言えば」が逆になっていない。<br />
「いわゆる」がいわゆっていない。<br />
それと同様のケースだ。</p>
<p><b>「ちなみに親戚はみんな医者系だったりします」<br />
</b><b>「ちなみに友達はテレビ局に勤めてたりします」<br />
</b>これは誤用とは言えないが、けっこう耳にする不快感を催させる使い方だ。「だから何？」「それがどうした？」「おまえ自身はどうなんだ？」と口に出さないまでも突っ込まずにはいられない。加えて「～たりします」と「～系」が不快感を増大させる。</p>
<p>そこで特別企画です。あなたのあんな「ちなみに」、こんな「ちなみに」を大募集します。素敵で印象深い「ちなみに」、思わず唸ってしまう「ちなみに」を送ってくれた方には、語り人のサイン入り色紙をプレゼントします。ふるってご応募ください！（誰がほしがるか！）</p>
<p>閑話休題。話を戻そう。<br />
ウォーレン・バフェットにつづいて登場したビル・ゲイツというビッグネームに、一流好きの一柳は気色ばんだ。</p>
<p>「ビル・ゲイツって、まさか…。1999年、シアトルのワシントン大学で行われた<b>ゲイツとバフェットの夢の対談</b>。たしか字幕版のDVDが出ていて、かなりの高値で売られてるはずっす。その吹き替えをやるって、そういう話っすか！」</p>
<p>なぜ知っている？　有名国立大学を出て芝居の道に進んだ親不孝な一柳は（このエピソードは物語の進行とともに明らかになる）、とにかくいろんなことをよく知っている。依頼を受けるまでそんなこと知らなかった僕は、その無知をおくびにも出さず、引きつづきそっけない調子で、しかし<b>一言一句聞き逃さずにいられない発声と話法</b>で応答した。</p>
<p>どうやるかって？　具体的に言うと<b>抑揚を排し早口で一気に、だけど一音たりともなおざりにしない滑舌</b>で、「今さら君に説明してもしょうがないけど、そんなに知りたければ後学のために教えてあげるよ」といったニュアンスを言外に含ませるのだ。僕は次のように返答した。</p>
<p>「ああ、そうだよ。エリート学生たちとの質疑応答を交えながら、ふたりが仕事と人生、<strong>成功の極意</strong>などを自由自在に語り合った、<strong>お宝映像の日本語吹き替え版</strong>だ。いま翻訳の真っ最中で、<strong>バフェットの声</strong>を誰にやってもらおうか思案してたんだ。でも、気にしないでくれ。候補はいくらでもいる。<strong>仕事はギャラで選ぶ</strong>という君の志には敬意を表するよ。時間を取らせたな。また落ち着いたら飲もう。じゃあ、また」</p>
<p>ひと息でそう言って電話を切ろうとする間合いに、一柳の切迫した声が割り込んできた。持ち前の<b>響きのあるバリトン</b>が<strong>ファルセット</strong>に転調し、おまけに<strong>ヨーデル</strong>のようにひっくり返っている。それほど興奮し慌てているのだ。</p>
<p>「だから待ってくださいよ！　いやだなぁ、語り人さんも人が悪いっす。それならそうと早く言ってくださいよぉ。ていうか、オレが先輩の申し出を断るわけないじゃないっすかぁ。ていうか、バフェットの声はオレしかいないじゃないっすかぁ！」</p>
<p>僕は知っている。一柳が「ていうか」を連発するときは、何かを必死にごまかそうとしているときだ。</p>
<p>「調子のいいやつだ。ギャラを聞いて早々とNG出したじゃないか。以前のおまえならよろこんで受けた額だろ。でもおまえは変わった。敵を作ってでも、ナレーターとしてさらなる高みを目指している。おめでとう、と言うべきだろう」</p>
<p>「語り人さん、誤解っす。ていうか、その件は今度ゆっくり説明しますから。とにかく、オレがやりますっ。ていうか、やらせてください！」</p>
<p>こうして、<strong>ギャラと志の高低の問題</strong>に自ら決着をつけた一柳は、だけどそのあと驚くべきことを口にした。</p>
<p>「ただし、条件があります。ギャラは…」<br />
「だから、あれ以上は出せないって言ってるだろう」<br />
ギャラギャラとうるさいやつだ（お金の音はジャラジャラだけど）。<br />
まあいい。僕は譲歩した。</p>
<p>「わかったよ。<strong>収録後にキャッシュで</strong>払おう。<strong>プラス飲み代</strong>でどうだ」<br />
こんな待遇が許されたのは<b>映画評論家の淀川長治</b>さんぐらいだぞ、そう返そうとした瞬間だった。彼はその驚くべき提案を口にしたのだ。</p>
<p>「いや、そうじゃないっす。ていうか、ギャラはいらないっす」<br />
「なんだって？」</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（次章につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>何事によらず申し出を断わることは受ける以上に覚悟がいる。<span style="color: #ff6600;"><b>NOと言えない自分</b></span>を美化してはいけない。</li>
<li><span style="color: #ff6600;">YES</span>と言ってあとで不平を口にするなら、はじめから<span style="color: #ff6600;"><b>NOと言える勇気と英断</b></span>を持とう。「断れない性格なんだよね」といい人ぶって、苦笑交じりに言わないこと。</li>
<li>「<span style="color: #ff6600;"><b>志</b></span>」とは、ある方向を目指す気持ち。心に思い定めた目的や目標のことだ。<span style="color: #ff6600;"><b>信念</b></span>ともいう。<span style="color: #ff6600;"><b>お金は大事</b></span>だが、それは<span style="color: #ff6600;"><b>前提ではなく結果</b></span>であってほしい。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>無自覚に言っている口癖</b></span>は真意を読まれやすいのでやめたほうが賢明だ。まして誤用は知性を疑われかねない。</li>
<li>声のプロの道を閉ざす大きな原因のひとつは、<span style="color: #ff6600;"><b>発音や発声のひとりよがりの癖</b></span>だ。<span style="color: #ff6600;"><b>癖と個性は違う</b></span>ということを肝に銘じよう。</li>
</ol>
</div>
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