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	<title>声で人生が変わる！「愛と再生」のボイス・ストーリー　ユアボイス・マイボイス &#187; 初見読み</title>
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	<description>あなたは自分の「声」が好きですか？ あなたは「声」で損をしていませんか？</description>
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		<title>第3話5章　一流の条件</title>
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		<pubDate>Tue, 16 Sep 2014 05:17:58 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第3話　ボイスアクター編②　一流の証明]]></category>
		<category><![CDATA[ビル・ゲイツの英語]]></category>
		<category><![CDATA[リップシンク]]></category>
		<category><![CDATA[一流の条件]]></category>
		<category><![CDATA[世紀の対談]]></category>
		<category><![CDATA[個人レッスン]]></category>
		<category><![CDATA[初見読み]]></category>
		<category><![CDATA[吹き替え]]></category>
		<category><![CDATA[声優デビュー]]></category>
		<category><![CDATA[成功者の適正]]></category>
		<category><![CDATA[神７]]></category>

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		<description><![CDATA[茂森愛由美から手紙が届いたのだ。メールではなく、郵便で届けられた封書の手紙。彼女らしい端正な字体で綴られた、美しい日本語の手紙。 それから僕と茂森愛由美は、半年後の今も、毎週のように顔を合わせている。それを一柳は知らない [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>茂森愛由美から手紙が届いたのだ。メールではなく、郵便で届けられた封書の手紙。彼女らしい端正な字体で綴られた、美しい日本語の手紙。<br />
それから僕と茂森愛由美は、半年後の今も、毎週のように顔を合わせている。それを一柳は知らない。<span id="more-267"></span></p>
<p>（4章「<a href="http://kataribito.net/03/03-4/">一流の初恋</a>」のつづき）</p>
<p>1999年シアトルのワシントン大学で行われた、<b>ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットの夢の対談</b>。いわずと知れたマイクロソフトの創始者と投資の神様だ。当時、この世界No.1とNo.2の億万長者の顔合わせは「<b>世紀の対談</b>」といわれた。</p>
<p>翻訳作業は順調に進んでいくかに見えたが、あるところで苦戦を強いられにっちもさっちもいかなくなった（「にっちもさっちも」って、漢字で「二進も三進も」って書くんだって。知ってた？）</p>
<p><b>ビル・ゲイツの英語</b>は正確でわかりやすい。語り口も端正で言語明瞭。ユーモアも上品で洗練されていて、なんの問題もない。</p>
<p>参考までにここで一例として、ふたりの生しゃべりを紹介しよう。<br />
ゲイツはこんな具合だ。</p>
<p>「ええ。大学を辞めて会社を興すことに不安はありませんでした。創業のころはリスクのことなんか考えもしませんでしたよ。ただひとつ怖かったのは、何だと思います？　それはね、<b>雇った友人が給料をほしがったこと</b>です（学生たちの大爆笑）」（語り人訳）</p>
<p>一方、バフェットはというと、軽妙洒脱なユーモア精神の持ち主で語りの名手としても名高いが、<b>自分のジョークに自分で笑う</b>という禁じ手も多い。こんな感じ。</p>
<p>「人々がよくいうセリフはこうだ。『好きでもないけど、あと10年はこの仕事をつづけて、そのあとにやりたかったことをやるんだ』って。笑っちゃうね！　これは<b>年寄りになったときのためにセックスを控えている</b>ようなもので、なんともばかげた話だと思わないか（自分で爆笑）」（語り人訳）</p>
<p>バフェットの話には、この手の喩えが頻繁に出てきて苦笑を禁じえないのだけど、それは別にして翻訳上の問題があった。彼の声はダミ声で、話し方はしばしば言語不明瞭。ときにスラングも飛び出す。もともとの音源の悪さも手伝って、聴き取りにくいことこの上ない。</p>
<p>そう、問題はウォーレン・バフェットだった。それでなくても僕は<strong>リスニング</strong>が苦手で、いくつかのフレーズはもうさっぱりお手上げで、<strong>ネイティブスピーカー</strong>に教えを乞わなければならかった（それでもわからない単語や言い回しは残った）。</p>
<p>そんなわけで、結局そこは前後の文脈から無難で適切と思われる日本語をあてることになった。一柳だったらきっとそこは<b>下ネタ風のアレンジ</b>を加えるんだろうな、と思いながら。</p>
<p>収録日の前々日、僕は一柳に<b>台本と映像</b>をメールで送った。<br />
当日の<b>初見読み</b>を宣言した一柳だったが、やつはきっと事前に台本に目を通したいはずだ。目を通したいどころか、映像と合わせてしっかり読み込みたいに決まっている。これは<b>ナレーション</b>じゃない。<b>吹き替え</b>なのだ。</p>
<p>吹き替えで映像の人物の口の動きに声を合わせることを<b>リップシンク</b>という。<b>完璧なリップシンク</b>になるように、翻訳した日本語はいつも以上に精査し、台本を仕上げた。</p>
<p>収録日当日。朝の10時にスタジオ入りした。この吹き替え収録を行なうときにいつも利用している<b>横浜のスタジオ</b>だ。</p>
<p>ドアを開けると待ってましたとばかりに、<b>スタジオのオーナー兼レコーディング・エンジニア</b>の寺さんこと寺田さんが、いきなり僕のみぞおちあたりをパンチで連打し、<b>興奮を押し殺した声</b>で言った。</p>
<p>「語り人くん、あの子、だれさ？　あの、しょんべんチビっちゃいそうな美人ちゃんだよ。どっかのアイドル？」</p>
<p>寺さんは、この横浜の地にスタジオを構えて30年のベテランだ。僕とは20年来の付き合いになる。</p>
<p>自分が産まれ育って親から譲り受けた７階建てのビルの地下で、「ここがおれの遊び場」と言いながら、毎日楽しそうに働いている。</p>
<p>あちこちのレコーディングスタジオが次々と廃業に追い込まれるなか、彼の少年のような親しみやすい人柄と、都内の半額以下という料金の安さもあって、都内からの利用者も呼び込む人気のスタジオなのだ。</p>
<p>マンガ大好きの寺さんの趣味は<b>フィギュア制作</b>だ。<br />
いや、趣味なんてもんじゃない。<b>副業か本業か</b>。そんなこともどうでもいいくらい、とにかく<strong>プロ</strong>なのだ。評判が評判を呼び全国から注文を受けるほどで、とりわけ彼の<b>美少女フィギュア</b>はマニア垂涎の的となっている。</p>
<p>スタジオの一画にフィギュアコーナーがあり、寺さん作のさまざまなフィギュアが特別仕様のケースに陳列されている。そしてそのセンターの座を占めるのが、彼の真骨頂というべき「美少女フィギュア」だ。その数30体で、これは非売品だそうだ。</p>
<p>「これ、おれのベスト30ね。1体50万で売ってくれって言われても売らなかったさ」と寺さんは、可愛いわが子を守り抜く父親のような顔で自慢する。</p>
<p>フィギュアの足元にはそれぞれ名札がついている。「水島愛理」とか「近藤優子」とか「足立香苗」とか、30体全員に名前があるのだ。</p>
<p>その人気はマニアたちがネットで<strong>ファン投票</strong>を行うほどの盛り上がりで、上位７人は「<b>神７</b>」と呼ばれている。センターは２年連続で水島愛理が取っており、アイリーンの愛称で呼ばれ絶大な人気を誇っている。</p>
<p>「これ、みんな本名だよ。おれが今まで実際に会って、しょんべんチビりそうになった女の子たち」寺さんはフィギュアに興味を示すお客さんがくると、うれしそうに目を細める。</p>
<p>そんな、しょんべんチビっちゃうほどの美少女が突然、生身の姿で目の前に現れたものだから「これは一大事！」と、寺さんは朝から興奮しているのだ。</p>
<p>「えっ、もう来てますか？　10時半でいいって言ったのに」と僕は時計を見ながら言った。「彼女は今日、女性のパートを担当してもらう声優さん。まだ卵ですけどね」</p>
<p>「ねえ語り人くん、頼むよ。紹介してよ。おれ、久しぶりにビビッときちゃったよ。その、制作意欲をかきたてられたっていうかさ。あの子のフィギュアをさ、作りたいんだよね」</p>
<p>寺さんは来年還暦を迎えるというのにとても若々しく、なおかつシャイな人で、こんな商売をやっていながら女性とろくに話もできない純情派だ。</p>
<p>「いや、挨拶はしたよ。名前、名乗っただけだけどさ。おれ緊張しちゃって、チビりそうだったんでトイレ行ってさ。そのあと熱心に台本読んでるから話しかけるのも悪いし、邪魔しちゃいけないと思ってさ。ここで語り人くんがくるのを今か今かと待ってたわけよ。えっと、茂森さんっていったかな」</p>
<p>茂森愛由美──<br />
僕だって今でこそ慣れたけど、半年前に彼女と連絡先の交換をしたとき、緊張して何も言えなかった。ましてや女性に奥手で、フィギュアとしかまともに話しができない寺さんだ。無理もない。</p>
<p>「寺さん、まあ落ち着いて。とにかく行きましょう。ちゃんと紹介しますから」と言って、僕は奥のロビーに入っていった。</p>
<p>４卓ある丸テーブルのひとつに姿勢よく腰をかけ、ペンを手に真剣な表情で台本を読んでいる茂森愛由美がいた。僕の姿を認めると顔中に笑みが広がり、きびきびした動作で立ち上がった。</p>
<p>「おはようございます！　なんだか落ちつかなくて、早くきてしまいました。ご迷惑ではなかったでしょうか」</p>
<p>「おはよう」と僕は笑って返した。「僕は迷惑じゃない。だけど、スタジオの人はどうかな。迷惑だったかもしれないよ」</p>
<p>すると寺さんは顔を真っ赤にして割って入った。「迷惑だなんて、とんでもない！　営業は９時からだもん。もう１時間早くたってよかったさ。語り人くん、バカなこと言わないでよ」</p>
<p>ここで二人をそれぞれ紹介してから、僕はあらためて茂森愛由美に向かって言った。「現場には早くて15分前だ。それより早いと邪魔になる場合がある。早く着いてしまったときは近場でお茶をするか、軽い発声をしながら周辺を歩くといい」</p>
<p>「うちは問題ないさ！」寺さんがまた割って入った。「お茶はここで飲めばいいし、発声もここでやればいいよ。部屋は、じゃなくてブースは４つもあるんだ。いつきてくれたっていいさ」緊張しながらも、寺さんはなかなか大胆な発言をした。</p>
<p>「先生、常識が足りなくて申し訳ありませんでした。以後、肝に銘じます」茂森愛由美は僕に頭を下げてから、寺さんを見て言った。「ありがとうございます。お心遣いに感謝します」</p>
<p>茂森愛由美にそう言われ、寺さんはまた真っ赤になって「なーんも、なーんも！」と言いながら、顔の前で激しく片手を振った。</p>
<p>この辺でそろそろ説明する必要があるだろう。</p>
<p>半年前、僕は茂森愛由美から手紙をもらった。<br />
それは僕に、<b>個人レッスンを依頼する</b>内容の手紙だった。</p>
<p>養成所では１クラス20名もいて、とても一人一人フォローできる体制ではない。<b>自分はもっともっと学びたいし、もっともっと実践的な指導を欲している。</b><b></b></p>
<p>また<b>養成所の講師</b>に対しても、あることがあってから少なからず不信感を抱いている。<b>レッスンより男女交際に熱心な人</b>も見受けられる。<b>とにかく自分は集中したいのだ。</b>そんなことが書かれていた。</p>
<p>ほかでもない、こういう展開になることを僕は期待もし、同時に恐れてもいたのだ。その後のやり取りの詳細は省くが、とにかく僕は茂森愛由美の申し出を承諾した。</p>
<p>どうして断ることなどできただろう。断るとすれば、理由は何だ？</p>
<p><b>愚鈍な中年男</b>になるのが怖い。それもある。でもそれ以上の理由がある。<br />
僕は彼女に、実は<b>方向転換してほしい</b>と思っていた。<b>声優ではなく、</b><b>別の道に進んでほしい</b>と。</p>
<p>ならば申し出を断るのではなく受けることで、つまり<b>彼女と関わることで、その見極めをしよう</b>。そう考えたのだ。</p>
<p><b>週に一回、</b><b>90</b><b>分の個人レッスン</b>。場所は四谷三丁目。彼女がアルバイトをしている焼鳥屋。店長の山田さんがぜひ使ってくれと、店にある個室スペースを提供してくれた。もちろん開店前の時間帯だ。</p>
<p>レッスンが終わると茂森愛由美はそのまま勤務につく。そして僕はといえば、まことにありがたいことに、店長の好意で賄いをご馳走になる。</p>
<p>賄いは料理の得意なスタッフが作ってくれることになっていたが、茂森愛由美はそれでは申し訳ないと、レッスンの日は自ら腕を奮ってくれている。そして、その日の復習をしながら一緒にいただく。</p>
<p>仕事のない日はそのまま少し飲んで帰る。また近場で仕事が終わったときは顔を出し、ときには人を連れて暖簾をくぐるようにもなった。</p>
<p>つまり週に2.3回、僕は茂森愛由美と顔を合わせていることになる。山田店長とは今ではすっかり同士のような仲になり、店のスタッフたちとも気の置けない関係になった。</p>
<p>茂森愛由美は着実に力をつけていた。<b>できなかったことができるようになる喜び、楽しさ</b>。これを幼いころから勉強と空手の稽古で知っている彼女は、<b>ひとつひとつの課題を確実にものにするコツ</b>を心得ていた。</p>
<p><b>感情や気分のばらつきが少なく、勤勉であり高い集中力を持っている。何より素直で可愛げがあり礼儀正しかった。</b><b></b></p>
<p>こうした資質こそが、僕に言わせれば<b>一流の条件</b>であり、<b>成功者の適正</b>なのだ。それがこの半年間で得た、茂森愛由美に対する僕の評価だった。</p>
<p><b>そしていよいよ、彼女にとって実践のときが訪れた。<br />
</b>ちょうどタイミングよく、女性の声が必用な案件が回ってきた。しかも、彼女にぴったりの役どころが。（タイミングのよさも彼女のえがたい才能のひとつだ）。</p>
<p>ひとつはアメリカのある<b>テレビ局のアナウンサー</b>の役。話題の人をゲストに迎え、女性アナウンサーがインタビューする番組。ゲストは作家でありカリスマ・マーケターとして日本でも有名な人物。その声は僕が担当する。</p>
<p>そしてもうひとつの役が、<b>米国コロンビア大学のエリート女子学生</b>だ。例のビル・ゲイツとウォーレン・バフェットの対談で、ふたりに質問する女子学生の役を、声を変えて二人分やってもらうことにした。四人いる男子学生の役は、一柳と僕で分担するつもりでいた。</p>
<p>僕が正式にオファーを出すと、茂森愛由美は初めての声の仕事に飛び上って喜んだ。その勢いで僕に抱きつくと「わたし、先生にお会いできて本当によかった」と涙声で言った。</p>
<p>「喜ぶのはまだ早いぞ」体を引き離してから、僕はわざと冷たく言い放った。<br />
「レッスンはこれからもっと厳しくなる。<b>正確な母音</b>と<b>キレのある子音の発音</b>。<b>拗音の精度</b>も上げていかなきゃ。語尾が弱くなる弱点も克服してもらう。<b>アナウンサーの語尾を強く響かせる発声法</b>をマスターするんだ」</p>
<p>「はい、先生についていきます」茂森愛由美は鼻をすすりながら言った。</p>
<p>「その声だ！」僕は雑念を払い、彼女の声だけに集中した。<br />
「いま鼻声になったことで<b>艶と響き</b>が加わった」そう言って、<b>アナウンサーがやっている鼻で響かせる鼻共鳴と鼻うがいの方法</b>を教えた。</p>
<p>それからノートパソコンを開いて映像を見せた。正味20分ほどのインタビューだ。ひと通り見終わると茂森愛由美は、<b>翻訳台本</b>はいつもらえるのかと訊いた。</p>
<p>「僕は<b>ゲイツとバフェットの翻訳</b>に傾注したい。だからインタビューのほうは、下訳を誰かに頼もうと思っている」というと、彼女は僕の目を真っ直ぐに見据えて言った。</p>
<p>「あの先生、わたしがやってはだめですか？」</p>
<p>英検１級、TOEICは900点超。茂森愛由美が英語に堪能なことを聞いていた僕は、その選択肢も考えないわけではなかった。でもいくら英語ができても翻訳はヘタクソという人を僕はたくさん知っている。<b>翻訳は英語力以上に日本語力が求められる</b>からだ。</p>
<p>それになんといっても今は、<b>声優のトレーニングに専心させるべきときだ</b>という思いもあった。たとえこの先、方向転換させるにしても。</p>
<p>「だれかに頼むなら、わたしにやらせてください。先生は、<b>自分が声をあてるなら翻訳から責任を持ちたい</b>と、このお仕事を始められたと聞きました。わたしも、そうしたいです」</p>
<p>「大学の勉強とボイスレッスンとアルバイト、時間はあるのか？」<br />
「わたし、先生が目標なんです」<br />
「僕は根無し草だ。目標にしちゃいけない。君にはもっと…」</p>
<p>君には<b>もっと高いところを目指してほしい</b>。そう言おうとする僕を、茂森愛由美は遮った。「ピシャリ」と音がするような見事な遮り方。本当に間のいい子だ。</p>
<p>「時間はだいじょうぶです。では、そういうことで。あと、<b>ゲイツとバフェットの映像</b>もお願いします。学生のパートも、わたしが訳します」</p>
<p>そう言って頑固な性質を垣間見せた彼女だが、結論を言うと、完成した翻訳は想像以上にできていた。「ざっとした下訳でいい。あとは僕が調整する」と念を押していたのに、すでに<b>吹き替え翻訳</b>の体をなしていた。</p>
<p>ときどき顔を覗かせる<b>翻訳調の言い回し</b>、訳としては正しくても、<b>誤訳を恐れずあえて大胆に意訳すべき語句</b>、そして<b>語尾の収め方</b>など、いくつか修正を要するポイントはあるものの、それでもじゅうぶん合格点をあげていい完成度だった。</p>
<p>英語に関しては僕なんかよりはるかに高い能力を持っていることはわかっていた。なにしろ僕は、英検１級の二次試験を３回受験して３回落ちた劣等性だ。TOEICには挑戦すらしていない。900点なんてとんでもない。たぶん700点もいかないだろう。</p>
<p>翻訳が完成したら、あとはひたすら<b>読み込み</b>だ。レッスンで、<b>映像を流しながら実際に声をあてていく練習</b>を何度も繰り返した。勘がいいうえに努力家の彼女は、みるみる役をものにしていった。</p>
<p>そのようにして、僕たちは収録の日を迎えた。茂森愛由美にとっては<b>記念すべき声優デビューの日</b>を。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（次章につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>パートナーを選ぶとき重視すべきは<span style="color: #ff6600;"><b>お金に対する価値観</b></span>だと思う。つまりお金にきれいかどうか。それは事業も結婚も同じだ。</li>
<li>やりたいことを諦めきれず<span style="color: #ff6600;"><b>再チャレンジ</b></span>する。一度目はダメだった。二度目もドロップアウトする人は、<span style="color: #ff6600;"><b>一度目になぜダメだったのか</b></span>を正しく理解しないまま進むからだ。</li>
<li>「こっちが<span style="color: #ff6600;"><b>本業</b></span>であっちが<span style="color: #ff6600;"><b>副業</b></span>」などと言っているうちは、どっちもたかが知れている。</li>
<li>ろくに本も読まないくせに<span style="color: #ff6600;"><b>声優・ナレーターになりたがる人</b></span>が多いのはどうしたものか。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>できなかったことができるようになる。</b></span>その嬉しさ・楽しさをそこで終わらせないように。まぐれではなく<span style="color: #ff6600;"><b>法則化させ習慣化させ、そして身体化させ技化させていく</b>。</span></li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>感情や気分のばらつきがなく、勤勉であり高い集中力を持っている。何より素直で可愛げがあり礼儀正しい。</b></span>そんな人は少ない。だから一流なのだ。</li>
</ol>
</div>
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		</item>
		<item>
		<title>第2話2章　身体の中心で愛を叫ぶ</title>
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		<pubDate>Thu, 12 Jun 2014 03:02:51 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[センター・オブ・ボディ]]></category>
		<category><![CDATA[チャクラ]]></category>
		<category><![CDATA[ボイスメイク]]></category>
		<category><![CDATA[下調べ]]></category>
		<category><![CDATA[丹田]]></category>
		<category><![CDATA[丹田呼吸]]></category>
		<category><![CDATA[丹田発声]]></category>
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		<category><![CDATA[愛を叫ぶ]]></category>
		<category><![CDATA[瞑想状態]]></category>
		<category><![CDATA[胸式呼吸]]></category>

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		<description><![CDATA[「は～い、ぜーんぶいただいちゃいました。ブラボーよ、語り人ちゃん！」 終わって我に返ると、ブースの窓の向こうにスタッフみんなのスタンディングオベーションが見えた。ありがとう！ だからやめられない。声優ほど、素敵な商売はな [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「は～い、ぜーんぶいただいちゃいました。ブラボーよ、語り人ちゃん！」<br />
終わって我に返ると、ブースの窓の向こうにスタッフみんなのスタンディングオベーションが見えた。ありがとう！ だからやめられない。声優ほど、素敵な商売はない。<span id="more-181"></span></p>
<p>（１章「<a href="http://kataribito.net/02/01-2/">声優ほど素敵な商売はない</a>」のつづき）</p>
<p>「あ～ら、語り人ちゃん。お久しぶりねぇ。会いたかったわぁ！」</p>
<p>スタジオに入るやいなや、太いガラガラ声のオネエ言葉に迎えられた。<br />
１週間というタームが「久しぶり」に相当するかどうかの僕の考察を遮り、<br />
彼は上機嫌で畳みかけた。</p>
<p>「まあ、かたいこと言わないの。もっともこの１週間、先週録音した分の編集作業をずうっとやってたじゃない。だからワタシ、語り人ちゃんの声とともに寝起きしてた、といっても過言じゃないのよ。ちょっとハグさせてちょうだい」</p>
<p>いえ、遠慮願いたいです。という間もなく、毛むくじゃらの太い腕を強引に背中に巻き付けられた。<br />
「アナタ、相変わらずスマートだわね。羨ましいわぁ！　見てよ、ワタシなんかこのていたらくよ」</p>
<p>そう言って黒地に虎の絵がプリントされたＴシャツを首元までまくし上げ、でっぷりしたお腹をポンポンとふたつ叩いて盛大に笑うこの人。 オーディオブック『脳内沖縄紀行』の担当ディレクター、 ひげ面のオネエキャラ、虎田シーサーさんその人だ。</p>
<p>顔面ばかりか、腕から手の甲、お腹にまでびっしりと毛が密集している。<br />
「おいおい、腹毛で腹芸か！」という言葉をぐっと飲み込んだ僕は、彼の腹芸と僕のダジャレがこれ以上エスカレートしないようにと、さっそく仕事の話を切り出した。</p>
<p>「シーサーさん、<b>台本</b>は昨日いただいたもので全部ですか。各章の、おそらくエンディングにあたる部分が欠落しているように思えますが」<br />
きのうマネージャーから台本を受け取った僕は、一読して違和感を覚えたのだけど、マネージャーはこれで全部だという。</p>
<p>「そのとおりよ、語り人ちゃん。つづきはここにあるわ」<br />
そう言ってシーサーさんは、かなりの分量の紙束を手に取り、まるでハープでも弾くようにそれを５本の指ではじくと、不敵な笑みを見せた。</p>
<p>「えっ、それを今日、初見で読めということですか」<br />
「そうよ。それがどうしたの。プロフィールによると、あなたの特技欄に<b>初見読み</b>とあるわ。あら、大風呂敷を広げちゃったのかしら」</p>
<p>さっきとは打って変わって、冷ややかな攻撃的な口調でシーサーさんは言った。<br />
Ｔシャツにプリントされた虎が、今にも襲いかかってきそうな剣呑な空気だ。彼の腹芸にリアクションをしなかったことを怒っているのか。まさか！</p>
<p>でも、言うべきことは言わなければ。鼻から息を吸い、たっぷり<b>丹田</b>（下腹）に溜め込んでから、僕は言葉を発した。</p>
<p>ちなみに「丹田」とは、臍（ヘソ）と恥骨（恥ずかしい骨って！）のあいだの部位。インドではここを<b>「チャクラ（生命エネルギーの集積所）」</b>といい、英語で<b>「センター・オブ・ボディ（身体の中心）」</b>という。<b>悟りを司る聖なるポイント</b>といわれている。</p>
<p><b>丹田呼吸</b>と呼ばれる呼吸法で<b>瞑想状態</b>に入ることで知られているが、発声ではここを使うことによって、深く力強い声を出すことができる。かつて日本の軍隊などで、上官が弱々しい声の兵士に<b>「臍下丹田に力を込めろ！」</b>と檄を飛ばしたと伝えられている。</p>
<p>もちろん、<b>丹田発声</b>を日々トレーニングしている僕は、仕事以外でもここぞというときにこの発声法を使う。</p>
<p>たとえば重要な交渉事などで相手を説得したいとき。たとえば相手に大事な用件を伝えるとき。たとえば騒がしい居酒屋なんかで、遠くにいる店員を呼びつけるとき（実際これはいつも僕の役割だ）。</p>
<p>それから男性諸君、女性を口説くときも有効だ。子宮に響くといわれる腹式低音ボイスをマスターし、存分に女性の下心をくすぐってくれたまえ（失礼！）。</p>
<p>そして女性のみなさん、高音の鼻にかかったカワいい声だけが男を舞い上がらせるわけじゃないよ。少し低めの艶のあるカッコいい声を<b>「勝負声」</b>にすることをおすすめする。男の前立腺を刺激することうけあいだ（失礼！）。</p>
<p>センター・オブ・ボディ。<b>身体の中心を開いて、愛を叫ぶのだ！</b><b></b></p>
<p>話を戻そう。<br />
言うべきことを言うために、僕は丹田発声を用いてシーサーさんに言った。</p>
<p>「いえ、<b>特技</b>というにはおこがましいですが、<b>初見読みに対応する訓練</b>は積んでいるつもりです。ですが、それはモノによるのではないでしょうか」</p>
<p>ある種の<b>ナレーション台本</b>、たとえば<b>テレビ・ラジオ</b><b>CM</b>や<b>生放送</b>なんかの場合、 初見で読むことはままある。</p>
<p>だけどこれはオーディオブック。やはり、 じっくり読み込んで、満を持して臨むべきだろう。<b>下調べ</b>だって、<b>役作り</b>だって必要なのだ。</p>
<p>以上のことを僕は、自分の正当性を声高にではなく、<b>誠実さがしっかり伝わる深く安定した声</b>で主張した。</p>
<p>人は相手に攻撃されたり何か理不尽な扱いを受けたりしたとき、自衛本能から感情がたかぶり、心拍数が上昇する。だから呼吸が浅くなり、声が高くなりうわずったりする。これは<b>胸式呼吸</b>になっていることが原因だ。</p>
<p>まさにその見本となる例を、僕たちはテレビのニュース等で最近何度も目にしている。STAP細胞の存在の有無を詰問された小保方晴子さんが発した「STAP細胞はあります」という言葉。いや、<b>言葉ではなく声</b>だ。とくに「あります」の部分は不自然に高く震え、完全にうわずっていた。</p>
<p>こんなときこそ<b>腹式（丹田）呼吸</b>で、<b>お腹にしっかり支えられた声</b>で「あります」と、小保方さんは力強く主張しなければいけなかった。ヘアメイクもフェイスメイクも完璧だったのに、もうひとつ大事なメイクを彼女は怠った。それは<b>ボイスメイク</b>だ。</p>
<p>おっと、うまいオチがついたと悦に入っている場合じゃない。小保方さんは今、研究者として絶体絶命のピンチを迎えている。いや、今は自分の心配をしよう。かくいう僕だって（狭い世界だけど）、ナレーターとして絶体絶命のピンチを迎えている。ナレーター生命を脅かされているといっていい。</p>
<p>たとえば、こんな噂が流れたら、僕のナレーター生命は風前の灯火となる。</p>
<p><b>（語り人、「特技は初見読み」はウソだった！）<br />
</b><b>（語り人は初見読みにビビって現場から逃げ出したらしい）<br />
（語り人はシーサーさんのギャグをスルーして彼の逆鱗に触れたらしい）</b></p>
<p>ああ見えてシーサーさんはCMやPV、ドキュメンタリー番組など幅広いジャンルでヒット作を量産する、気鋭の演出家として知られている。彼を怒らせて仕事をほされたナレーターを、僕は三人知っている。ここでしくじったら僕だってただではすまない。</p>
<p>（考えろ、語り人！　おまえは<b>１本の葦のように弱い存在</b>だ。でも考えることはできる。<b>ピンチをチャンスに変える逆転の発想</b>を考えるんだ！）とフランスの哲学者パスカルに仮託して、僕は自分を鼓舞した。</p>
<p>しかし、どう考えてもわからない。各章の肝心のエンディング部分だけが、きのうの時点で未入稿だったとはどうしても考えにくい。それは不自然だ。とすると答えはひとつ。シーサーさんはきのう、原稿の一部をわざと抜いて提出したと考えられる。</p>
<p>ではなぜ、そんな手の込んだ嫌がらせを？　僕が何をしたというのか。<br />
僕の声は、シーサーさんの身体の中心を貫くことができなかったのか。子宮を響かせることはできなかったのか（できなかったのだろう。その理由は言うまでもない）。</p>
<p>不自然といえば、今日のシーサーさんはどこか違う。いつものシーサーさんじゃない。オネエしゃべりは健在なのだけど、何かが足りないのだ。決定的な何かが。記憶を司る脳の海馬に鞭を当ててみたが、ダメだ。思い出せない。</p>
<p>１本の葦と化した僕に、シーサーさんはさらに冷ややかな口調で追い打ちをかけた。<br />
「まあ、なんでもいいわ。できるの？　それともできないの？」</p>
<p><b>言われてしまった。男が決して言われてはいけない言葉。<br />
言わせてしまった。女に決して言わせてはいけない言葉。</b></p>
<p>「まあ、なんでもいいわ。できるの？　それともできないの？」</p>
<p>僕は考えることをやめた。１本の葦であることをやめた。<br />
<b>自分の仕事ができること以上に大事なことなんてこの世にありはしない。<br />
</b></p>
<p>だから、返事は決まっている。「もちろん、やります」。<br />
そう応えて僕は、<b>孤独なナレーションブース</b>に潜り込んだ。<br />
深い海底にたった一人で潜る潜水夫みたいに。</p>
<p>長い潜水になりそうだ。<br />
息はつづくだろうか。<br />
そこに景色はあるだろうか。<br />
いや、景色を創るのは僕の仕事だ。</p>
<p>（次章につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>履歴書やプロフィールの<span style="color: #ff6600;"><b>「特技」</b></span>は試されることを想定して記入しよう。あなたが痛い目に遭わないことを祈る。</li>
<li>言うべきことを堂々と言いたいなら、<span style="color: #ff6600;"><b>腹式（丹田）呼吸</b></span>をマスターすべきだ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>正しいことを言うとき</b></span>こそ高圧的になってはいけない。<span style="color: #ff6600;"><b>誠実さが伝わる優しい安定した深い声で</b></span>。</li>
<li>ヘアメイク、フェイスメイク、ボディメイクときて、さあ次は<span style="color: #ff6600;"><b>ボイスメイク</b></span>の番だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>勝負下着</b></span>も大事だが、<span style="color: #ff6600;"><b>勝負声</b></span>にもこだわりたい。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>身体の中心で愛を叫ぶ</b></span>ときは、できるだけ<span style="color: #ff6600;"><b>紳士・淑女</b></span>でありたい。</li>
<li>言われてはいけない言葉・言わせてはいけない言葉、今日の１位は<span style="color: #ff6600;"><b>「できるの？</b><b> </b></span><b><span style="color: #ff6600;">できないの？」</span><br />
</b></li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>自分の仕事ができること</b></span>以上に大事なことなんてこの世に存在しない。</li>
</ol>
</div>
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