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	<title>声で人生が変わる！「愛と再生」のボイス・ストーリー　ユアボイス・マイボイス &#187; 第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない</title>
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	<description>あなたは自分の「声」が好きですか？ あなたは「声」で損をしていませんか？</description>
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		<title>第2話4章　魔除けのシーサー</title>
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		<pubDate>Thu, 26 Jun 2014 12:03:14 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[ひとりボケツッコミ]]></category>
		<category><![CDATA[ドラゴンボール]]></category>
		<category><![CDATA[レコーディングブース]]></category>
		<category><![CDATA[丹田発声法]]></category>
		<category><![CDATA[時の異次元空間]]></category>
		<category><![CDATA[時間の感覚]]></category>
		<category><![CDATA[異空間]]></category>
		<category><![CDATA[精神と時の部屋]]></category>

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		<description><![CDATA[どうやってエンディングを迎えたのか、よく覚えていない。 こうしてすべての収録を終えた。 海底から地上に戻り、僕は大きく息を吐いた。 （3章「ナレーターズハイ」のつづき） レコーディングブースの分厚い扉が重たい音をたてて開 [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>どうやってエンディングを迎えたのか、よく覚えていない。<br />
こうしてすべての収録を終えた。<br />
海底から地上に戻り、僕は大きく息を吐いた。<span id="more-195"></span></p>
<p>（3章「<a href="http://kataribito.net/02/03/">ナレーターズハイ</a>」のつづき）</p>
<p><b>レコーディングブース</b>の分厚い扉が重たい音をたてて開くと、空気の組成が一瞬にして変化したのがわかった。<b>異空間</b>から戻ってきた人のように、僕はすっかり<b>時間の感覚</b>を失っていた。</p>
<p>そう、外の音を完全に遮断しているレコーディングブースは異空間だ。異空間といえば『<b>ドラゴンボール</b>』に出てくる「<b>精神と時の部屋</b>」が思い出される（またドラゴンボールか！）。</p>
<p>別名「<b>時の異次元空間</b>」と呼ばれるその部屋は、時間の流れが外界とは違う。外界での1日が、この部屋では1年（365日）に相当する。戦士が短期間にパワーアップするための、修行に最適な環境だ。神の神殿の最下層にあるとされ、本来は<b>賢者になるための修行部屋</b>として存在する。</p>
<p>ところで、この「精神と時の部屋」という言葉、現在は別の用法で使われるらしい。引用しよう。</p>
<blockquote><p>「転じて、部屋にこもって<b>トレーニング</b>すること、缶詰になって<b>勉強</b>すること、自分の部屋に引きこもって<b>ネット</b>や<b>ゲーム</b>をしていると、時間があっという間にすぎてしまうこと（はてなキーワードより）」</p></blockquote>
<p>なるほど、部屋にこもってトレーニングや勉強はいいとして、ネットやゲームというのはいかがなものか。「精神と時の部屋」の使用目的に適合しないだろう。神様からも原作者の鳥山明氏からも、使用許可は下りないはずだ。そもそもここは、<b>己との限界を超える闘い</b>をし、<b>強く賢くなる</b>ことを目的とする部屋なのだから。</p>
<p>ならば、僕が台本を読むレコーディングブースを「精神と時の部屋」と称していることを、神様と鳥山明氏は許してくれるだろうか。許してくれますよね。少なくとも僕は、ここで限界を超える闘いをしています。おかげでずいぶんと強くなりました。賢くなったかどうかは疑問だけれど。</p>
<p>さて、ADさんの「お疲れさまでした！」の声で現実に呼び戻された僕は、ぐったりした足取りで「精神と時の部屋」を出ると、シーサーさんはじめスタッフたちのいるMA室へ入っていった。前回と同じく、全員がスタンディングオベーションで迎えてくれた。</p>
<p>「語り人ちゃん、ブラボーよ。今回もすごかったわ。<br />
どう？　何か問題があったかしら」<br />
「ひとつだけ」<br />
「何かしら？」<br />
「腹ペコで、もう何も出ない」<br />
「ごめんね。長時間、いつもいろんなことをやらせて。<br />
もう何も出さなくていいのよ。もう男を張らなくていいの」</p>
<p>そう言ってシーサーさんは、お腹をゆさゆさ揺すりながら豪快に笑うと、無抵抗の僕を強引にハグし、耳元で囁いた。</p>
<p>「<b>いかにせよ、これでワタシの報復はすんだわ</b>」<br />
この言葉を聞いた瞬間、僕の脳内シナプスが繋がった。</p>
<p>「いかにせよ…」そうだ、これだ！　シーサーさんの口癖。<br />
彼は今日、この口癖を一度も口にしなかった。<br />
ということはつまり、意識的に封印していたことになる。</p>
<p>「報復って、もしかして…」僕は恐る恐る口にした。<br />
「いかにせよ心当たりがあるようね。語り人ちゃん、あなたワタシのことをあることないこと、面白おかしくネタにしてくれたみたいじゃない」</p>
<p>やっぱり、そうか…。恐れていたことが起こったというべきだろう。<br />
なぜこのことに思い至らなかったのか。愚かな自分を呪った。<br />
シーサーさんはこのブログを、第２話１章「声優ほど素敵な商売はない」を読んだのだ。</p>
<p>「ごめんなさい！　あ、あれは…」<br />
「いいのよ、とてもおもしろかったし、あの髭面のディレクターがワタシじゃなければ感動さえしてたわよ。でもさあ、いかにせよもすこしだけ、カッコよく書いてほしかったわぁ。なんかワタシ、おバカみたいじゃない」</p>
<p>「いえ、そんなつもりは…」<br />
「どうせ、今日のことも書くんでしょ」<br />
「いえ、もう書きません」<br />
「いいえ、書くのよ」<br />
「書きません」<br />
「書きなさい！」<br />
「カッコよくは書けません」<br />
「いいのよ、ありのままのワタシで」<br />
「書かせていただきます！」</p>
<p>こんな問答がひとしきりつづいたあと、シーサーさんは晴れやかな笑顔で言った。</p>
<p>「ありがと、語り人ちゃん。いかにせよ、アナタと沖縄を旅行できて幸せだったわ。このオーディオブック、ワタシの宝物よ」</p>
<p>「僕も幸せだった。僕の&#8221;読み&#8221;を最後まで信じてくれて、そして導いてくれて、感謝します。ありがとう、シーサーさん」</p>
<p>「とうぜんよ。ワタシの目に狂いはないわ」と言ってシーサーさんは片目を閉じて開いた（今のはなかなかステキなウインクだったよ、シーサーさん）。「あっ、なによ、アナタいま＂オカマの直感に狂いはないのか＂って顔をしたわね」</p>
<p>そう言って<b>ひとりボケツッコミ</b>を決めたシーサーさんは、僕をキッと睨みつけると、すぐに満面の笑顔に切り替えて言った（なんて表情の豊かな人だろう）。</p>
<p>「それより、ねえねえ、次回はどこへ行こうかしら。ハワイ？　マイアミもいいわね」わかると思うけど、僕はどっちも気が進まなかった（マイアミはとくに困る！）。</p>
<p>「今は何も考えられない。まずはゆっくり休みたいです」<br />
僕はそう言ってごまかしたが、タフな試合を戦い抜いた直後のボクサーみたいなコメントをした自分を笑った。</p>
<p>「そうね。ワタシはどこでもいいの。語り人ちゃんと一緒なら」<br />
「もちろん、いつでもご一緒しますよ。<strong>脳内旅行</strong>なら」<br />
「リアルよりむしろそそられるわ。語り人ちゃんが<b>夢先勧誘員</b>で、ワタシが…」<br />
「シーサーさんこそ、一流の<b>夢先案内人</b>です」<br />
「あら、やっとわかってくれたのね。いかにせよワタシたち、<b>お似合いのカップル</b>だと思わない？」<br />
「いえ、カップルという言葉は不適切です。<b>名コンビ</b>ぐらいにしておきましょう」</p>
<p>「いいわねぇ。<b>一流のオカマ＆</b><b>101</b><b>回ゲイに間違えられた男</b>。お似合いのカップルにして名コンビだわぁ。いかにせよ、ふたりで事件でも解決しちゃう？」<br />
「その力技のマッチングに無理な設定、やめてもらえます？　それに101回も間違えられてませんし」</p>
<p>「アナタのいつかの文章にあったわ。数字はイメージでしょ。でもあれよね、小保方ちゃんもさあ、STAP細胞の作成に200回成功してます、なんて言っちゃったけど、いかにせよ＂数字はイメージよ＂って付け加えるべきだったわよね」</p>
<p>「小保方ちゃんって、知り合いですか。科学の世界で＂数字はイメージ＂はありえませんから。ともかく僕のブログ、ずいぶん読み込んでいただいているようで痛み入ります」</p>
<p>「本はとことん読み込み、男にはとことん入れ込むのが、ワタシにとって<b>無条件に楽しい仕事</b>よ。いかにせよ、<b>100回断られたからって何なの。薔薇に棘があることが、美しさを損なう理由になるかしら。なりはしないわ</b>。ってアナタ、うまいこと言うわね」</p>
<p>「いや、そこのくだりは<b>オネエ言葉</b>じゃなくて…」<br />
「だからそこはさぁ、ワタシが言ったことにして書き直してよ」<br />
「無理です。そこはシーサーさん、まだ登場してませんから」<br />
「だからぁ、いかにせよもっと早くにワタシを登場させてほしいわけよ」<br />
「もっとオレの出番を増やせと、そういうことですね」<br />
「オレじゃなくてワタシ！　ワタシがオレって言っちゃったらオネエじゃなくなるじゃない。<b>オネエだから何でもあり</b>なんだからっ」<br />
「確信犯か！」</p>
<p>そんな埒もないオチもない<b>言葉のキャッチボール</b>にふたりして大笑いしたが、僕の力ない笑い声はシーサーさんの猛獣の雄叫びのような笑い声にかき消された。</p>
<p>「さあさあ、おしゃべりはこのくらいにして、いかにせよ今は、語り人ちゃんのお腹をペッタンコにさせちゃったお詫びをするのが先決ね。ずいぶん遅いお昼になっちゃったけど、付き合ってくれるわよね。気のきいた沖縄のお店、チェックしておいたのよ」</p>
<p>「よろこんで、と言いたいところですが…」<br />
僕はもうこれ以上しゃべれない。魂はまだ沖縄を浮遊している。<br />
ひとりでクールダウンして、<strong>自分を取り戻す</strong>必要があった。</p>
<p>「わかったわ。アナタはもうお口チャックね。ワタシの顔も見たくないなら、離れた席でもいいのよ。お腹だけ満たさせて。さあ、行きましょっ」</p>
<p>これ以上抵抗する元気は、もう残っていなかった。<br />
シーサーさんがウインク（らしきもの）をしてMA室を出て行こうとする、そのときだった。ADさんが消え入るようなか細い声でおそるおそる発言した。</p>
<p>「あ、あの…シーサーさん、も、盛り上がっているときに、も、申し上げにくいんですが、そ、その…休憩を取る時間は、な、ないと思われます。す、すぐに編集にかかりませんと」</p>
<p>その声にぎょっとして鬼の形相で仁王立ちしたシーサーさんは、気の毒なADさんにひとしきり悪態をついてから、優しい目を僕に向けた。</p>
<p>「ごめんね、語り人ちゃん。お聞きのとおりよ。この借りは近いうちに必ず返すわ。ゴーヤチャンプルーにソーキそばにタコライス、それからもちろん、最高級の琉球泡盛をつけてね」</p>
<p>思わぬ助け舟に安堵した僕は、これからもうひとがんばりしなくてはならないシーサーさんとスタッフたちに深々と頭を下げて、MA室をあとにした。</p>
<p>ぼんやりした頭で僕は思った。あのか細い声のADさんに、<b>丹田発声法</b>を教えてあげよう。<b>堂々として自信に溢れた声</b>が出せるように。シーサーさんに悪態をつかれないですむように。</p>
<p>地下スタジオから1階に上がりビルを出ると、日はすでに西に傾きはじめていた。ここは何処だ？　僕は自分のいる場所と方角を見失っていた。</p>
<p>たしか、僕は沖縄にいたはずだ。珊瑚が砕けた白砂を踏みしめた感触が、<br />
足裏に生々しく残っている。海の鼓動に全身全霊をゆだねた痺れるような至福感も、脳内に澱のように沈殿している。</p>
<p>竜宮城から戻った浦島太郎さながらに僕は途方に暮れた。でも幸いなことに、僕の手に玉手箱はなかった。握りしめていたのは、シーサーさんからもらった魔除けのシーサーだった。</p>
<p>「いかにせよ、終わったわ。地上に戻れたのよ」</p>
<p>声にならない言葉を呟いてみたが、鼓膜を震わせたのは自分の声ではなく、シーサーさんの声だった。</p>
<p>「戻れたのよ、語り人ちゃん。もとのアナタに」</p>
<p><b>でも、いつも僕は思う。<br />
</b><b>戻ったとき、そこはもう元の場所じゃない。<br />
少しだけ、自分の立ち位置が変わっている。<br />
景色が違う。風の匂いが違う。言葉使いが違う。<br />
人はそれを、シンプルな言葉で「成長」と呼ぶ。</b></p>
<p>手を開いてシーサーを見た。獅子を模したといわれるそのいかつい顔は、シーサーさんそのものだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（おわり）</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>ブログや<span style="color: #ff6600;">SNS</span>などに特定の知人を登場させるときは、<span style="color: #ff6600;"><b>２割増し素敵にカッコよく</b></span>書いてあげよう。あとで報復行為を受けないためにも。</li>
<li>自分を追い込んで<span style="color: #ff6600;"><b>限界を超える</b></span>。そこではじめて見えてくる景色がある。するとまた次の景色が見たくなる。何かを成し遂げるとはそういうことだ。</li>
<li>とはいえ、いきなり限界を超えようとするのは無謀だ。ひとつの<span style="color: #ff6600;"><b>型（フォルム、スタイル）を体得</b></span>したら限界を超える試みをする。その繰り返しだ。</li>
<li>たまには<span style="color: #ff6600;"><b>「我を忘れる」</b></span>経験をしよう。でも自分に戻ることを忘れないように。<span style="color: #ff6600;"><b>「行ったら戻る」</b></span>が鉄則。大切なひと、大事なものを失わないために。</li>
<li>「<span style="color: #ff6600;"><b>男はこうあるべき</b></span>」「<span style="color: #ff6600;"><b>女はこうあらねば</b></span>」という固定観念は人生を窮屈にする。その意味で、社会的な性の認識に異議を唱える<span style="color: #ff6600;"><b>トランスジェンダー</b></span>の存在は興味深い。</li>
<li>「魔が差す」という言葉もあるように、人は思わぬ<span style="color: #ff6600;"><b>魔性に取り込まれてしまう</b></span>ことがある。シーサーに限らず魔除けのお守りは有効だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>潜在能力を引き出してくれる人</b></span>との仕事はいつだって刺激的だ。（シーサーさん、あなたのことですよ。ニンマリ）<b><br />
</b></li>
</ol>
</div>
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		</item>
		<item>
		<title>第2話3章　ナレーターズハイ</title>
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		<pubDate>Thu, 19 Jun 2014 10:34:56 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[βエンドルフィン]]></category>
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		<description><![CDATA[自分の仕事ができること以上に大事なことなんてこの世にありはしない。 だから、返事は決まっている。「もちろん、やります」。 そう応えて僕は、孤独なナレーションブースに潜り込んだ。 深い海底にたった一人で潜る潜水夫みたいに。 [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>自分の仕事ができること以上に大事なことなんてこの世にありはしない。<br />
だから、返事は決まっている。「もちろん、やります」。<br />
そう応えて僕は、孤独なナレーションブースに潜り込んだ。<br />
深い海底にたった一人で潜る潜水夫みたいに。<span id="more-187"></span></p>
<p>（2章「<a href="http://kataribito.net/02/02-2/">身体の中心で愛を叫ぶ</a>」のつづき）</p>
<p>オーディオブック『脳内沖縄紀行』後編は、<b>世界遺産</b>としての<b>沖縄のグスク</b>（首里城を代表とする城跡）から、<b>琉球王国の歴史をひもとく語り</b>で幕を開けた。</p>
<p>「ここは重厚にね。だけど重苦しいのはダメよ。淡々と流して。でも言うまでもないけど、<b>立てるところは立てて</b>よ」<br />
ヘッドホンからシーサーさんのガラガラ声が飛び込んでくる。</p>
<p>「立てますとも！　それが男っしょ！」<br />
いつもの流れでそう返そうとしたが、今日はそれどころじゃない。しかも、シーサーさんは<b>いざ収録が始まると人が変わる</b>ことを、<b>集中力のギアが数段上がる</b>ことを、僕は知っている。ふだんは全開の<b>下ネタ</b>も<b>ジョーク</b>も、このときばかりは通じないのだ。オネエ言葉だけは変わらないのだけれど。</p>
<p>「そう、いいわよ。その調子。次は琉球王国を支配したふたりの男の物語。説明するわよ、よく聞いて。ふたりは奄美との交易の主導権をめぐって争ったライバル同士なの。（中略）…わかったわね。<b>男の美学</b>をしっかり表現するのよ。セリフはふたりの<b>キャラを際立たせる声</b>を使い分けてちょうだい」</p>
<p>シーサーさんの演出を挟みながら、僕は無我夢中で読み進めていく。<br />
彼の指示は的確だった。 いや、指示というより啓示だ。その声は<b>天の啓示</b>のごとく、<b>表現の深い海の底</b>にいる僕を覚醒させコントロールした。</p>
<p>「さあ次は、<b>沖縄の食と酒の歴史</b>よ。権力欲・征服欲のあとは食欲を満たしてあげましょ。ガラリと変わるわよ。ちょっとやってみて。そう、いいわね！」</p>
<p>「はい、そして沖縄といえば&#8221;ソーキそば&#8221;。擬音もちょうだい。おいしそうに啜ってみて。そう、そしてセリフよ」</p>
<p>「アンタも食べるといいサー」<br />
「いいわ。完璧な<b>アクセント</b>よ」</p>
<p>「そして琉球泡盛、30年ものの古酒（クースー）、呑みたいわね！<br />
飲む前の<b>ワクワク感</b>、飲んだ後の<b>幸福感</b>をきちっと押さえてね」<br />
言われたとおり、僕は酒好きのおじさんになりきった。<br />
「ノッテきたわね、語り人ちゃん。ほんとうに酔っぱらってるみたいだわ」</p>
<p>そうだ、僕はノッテきた。「やべー、キモチいい！」という陶酔状態。と同時に意識は明晰で心は落ち着いている。「冷静と情熱のあいだ」というより、両者がなんの矛盾もなく共存している状態。</p>
<p>収録が始まって３時間。だいたいいつもこのくらいの時間。待ちに待った瞬間を迎える。<b>ランナーズハイ</b>だ。ご存知のかたも多いと思うが、ここで少し説明しておこう。</p>
<p>ランナーズハイ（runner’s high）とは、長時間のランニングなどのさいに経験される<b>陶酔状態</b>のこと。走っている最中に苦しさがいつしか<b>高揚感</b>に変わり「空を飛んでいる」ような<b>快楽現象</b>が起こる。</p>
<p>その正体は<b>脳内麻薬</b>といわれる<b>βエンドルフィン</b>の存在だ。この快感物質、βエンドルフィンには麻酔作用があって、<b>覚醒効果</b>や<b>鎮痛効果</b>があると報告さられている。</p>
<p>マラソンなどで身体が苦痛やストレスを感じると、脳は自らβエンドルフィンを作り出し、苦痛やストレスを和らげようとする。それが快楽現象を生んでいるというのだ。この現象を僕は、自分に当てはめて<b>ナレーターズハイ</b>と呼んでいる。</p>
<p>通常オーディオブックは一冊の書籍を丸ごと音声化する。たとえば三百ページの本なら、だいたい７時間ほどの音声データになる。収録時間でいうと（読み手によって差異はあるが）その２倍から３倍の時間を要する。これを２～３日で収録するのだから、どれほどの長丁場かわかるだろう。</p>
<p>15秒のテレビＣＭはもちろん、１時間ものの番組でも経験することのできないランナーズハイ（ナレーターズハイ）を、このオーディオブックで体感することができるのだ。<b>声の長距離アスリート</b>。僕は自分をそう呼んではばからない。</p>
<p>「聞いてるの？　語り人ちゃん」おっと、シーサーさんが呼んでいる。</p>
<p>「さあ次よ。景色を変えてちょうだい。頭の中で映像を切り替えるのよ。はい、ナレーションから、スタート！」</p>
<p>（ここはコザの街、アメリカの田舎町といった風情だ。そこかしこで英語が飛び交っている。とあるレコードショップ。ウインドウから見える古いジャズの名盤に誘われて、貧しいミュージシャン風の若い男が入ってきた）。</p>
<p>映像を思い浮かべながら、というより<b>現場を俯瞰している目</b>になって、僕は読み進めていった。</p>
<p>「店番はでっぷり太った黒人女性よ。いい？ イメージして。若者が盗みを働きはしないかと睨みをきかせているわ。はい、黒人女性のセリフ！」</p>
<p>（Do you have any ID cards？）<br />
「すごいわ、語り人ちゃん。本物みたい！」</p>
<p>「さあ、いよいよエンディングよ。…あら、どうしたの？　声に張りがなくなってきたわよ！　それに、滑舌も少しあまくなってるわ」</p>
<p>シーサーさんの耳はだませない。もちろん、自分がいちばんわかっている。<br />
海に潜っておよそ６時間が経過していた。<b>僕の息は、僕の声は、いや息でも声でもない、お腹だ</b>。僕のお腹は限界を超えていた。</p>
<p>声と呼吸を支えるお腹が、疲労と空腹で機能不全に陥っている。そのため腹式が利かなくなり、必要以上に<b>声帯</b>に負荷をかけていた。<b>声の張りつや</b>がなくなってきたのはそれが原因だろう。</p>
<p>さらに、集中力を使いすぎたことによる<b>脳の酸素不足</b>が滑舌をあまくしていた。βエンドルフィンはすでに使い果たしている。いま一度再生するためには食事と休憩が必要だ。</p>
<p>気が遠くなってきた。頭が真っ白だ。景色が描けない…。<br />
そこへシーサーさんの金切り声が飛び込んできた。</p>
<p>「だめ！　まだよ、語り人ちゃん。まだイッちゃだめ！　男なら、我慢するの！　いっしょにイクのよ！」</p>
<p>シーサーさんは、萎えかけている僕をふたたび奮い立たせようと、収録中は絶対口にしないはずの<b>下ネタを解禁</b>して叫んだ。<br />
（ああ、シーサーさん！　僕のために、ごめんなさい。そしてありがとう）</p>
<p>僕は目を閉じ、脳にひとつの映像を呼び起こした。</p>
<div class="point"><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん<br />
</b><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん</b>
</div>
<p>&nbsp;</p>
<p>そこはサーカス小屋。<br />
天井から吊るされた空中ブランコが<br />
大きく揺れている。</p>
<div class="point"><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん<br />
</b><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆやゆよん</b>
</div>
<p>&nbsp;</p>
<p><b>中原中也</b>の詩「サーカス」に出てくる、これはブランコの<b>擬音</b>だ。</p>
<p>この音を繰り返し唱えると心が静謐になり、<b>空を飛んでいるような高揚感</b>が全身を包む。本来、一定の条件下で無意識に分泌されるβエンドルフィンを意識的に、あるいは作為的に作り出そうという、これはある意味で危険な荒療治だった。</p>
<p>次に意識を<b>丹田（第３のチャクラ）</b>から<b>心臓（第４のチャクラ）</b>、そして<b>喉（第５のチャクラ）</b>、さらに<b>眉間（第６のチャクラ）</b>へと巡回させた。これは<b>生命エネルギーを全身に隈なく満たす</b>ための、僕が限界を超えなければならないときに自分に施す<b>応急蘇生法</b>だ。</p>
<p>まあ、どちらも「それって、<b>おまじない</b>みたいなものだよね」と言われればそれまでなんだけど。なんでもいい。どうか、僕に最後の力を！</p>
<p>そのとき、傷だらけで息も絶え絶えの<b>孫悟空</b>が両手を天にかざし、みんなから少しずつ分けてもらったパワーで、でっかい<b>元気玉</b>を作るシーンが浮かんだ。<br />
「少しでいい。おらに力を分けてくれ！」と悟空は言った。</p>
<p>スーパーサイヤ人の孫悟空でさえ、<b>自分の力だけではどうしようもないときがある</b>ことを知っていた。</p>
<p>「はーい、オールOKよ！」シーサーさんの声が終幕を告げた。<br />
どうやってエンディングを迎えたのか、よく覚えていない。</p>
<p>こうしてすべての収録を終えた。<br />
海底から地上に戻り、僕は大きく息を吐いた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（次回「最終章」につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>声優は腹で戦う</b></span>。だから「腹が減っては戦（いくさ）はできない」。</li>
<li>複数のキャラを演じるときは無理に声を変えよう、あるいは作ろうとしてはいけない。<span style="color: #ff6600;"><b>対象となる人格を瞬時にイメージし、それを丸ごとわが身に引き受ける</b></span>。「乗り移っちゃう感覚」といえばいいだろうか。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>ランナーズハイ</b></span>、長い「ひとり語り」はこれがあるから快感だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>ランナーズハイは身体に相当の負担がかかる</b></span>ことを忘れてはいけない。<span style="color: #ff6600;"><b>フィジカル・メンタル両面の強化</b></span>が不可欠だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>ダジャレと下ネタ</b></span>は脳の活性剤だ。</li>
<li>限界を感じたとき、それでもそこを超えなければならないとき、<span style="color: #ff6600;"><b>蘇生するためのおまじない</b></span>を持っているといい。僕は本文で紹介した<span style="color: #ff6600;"><b>中原中也の詩</b></span>「サーカス」に登場するブランコの擬音（<span style="color: #ff6600;"><b>ゆあーん　ゆよーん　ゆあゆよん</b></span>）を繰り返し唱えることにしている。<span style="color: #ff6600;"><b>おまじないを侮ってはいけない</b></span>。それにしても中也の擬音のセンスは秀逸だ。</li>
<li>『<span style="color: #ff6600;"><b>ドラゴンボール</b></span>』が名作であるゆえん。それは、死んだ人を生き返らせることができる<span style="color: #ff6600;"><b>ドラゴンボール</b></span>によってではない。人間を含めた生きとし生けるものの「<span style="color: #ff6600;"><b>地球への愛</b></span>」が集結した<span style="color: #ff6600;"><b>元気玉</b></span>によってである。<b><br />
</b></li>
</ol>
</div>
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=amebablog05d-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4845909286&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
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		</item>
		<item>
		<title>第2話2章　身体の中心で愛を叫ぶ</title>
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		<pubDate>Thu, 12 Jun 2014 03:02:51 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[センター・オブ・ボディ]]></category>
		<category><![CDATA[チャクラ]]></category>
		<category><![CDATA[ボイスメイク]]></category>
		<category><![CDATA[下調べ]]></category>
		<category><![CDATA[丹田]]></category>
		<category><![CDATA[丹田呼吸]]></category>
		<category><![CDATA[丹田発声]]></category>
		<category><![CDATA[初見読み]]></category>
		<category><![CDATA[勝負声]]></category>
		<category><![CDATA[役作り]]></category>
		<category><![CDATA[愛を叫ぶ]]></category>
		<category><![CDATA[瞑想状態]]></category>
		<category><![CDATA[胸式呼吸]]></category>

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		<description><![CDATA[「は～い、ぜーんぶいただいちゃいました。ブラボーよ、語り人ちゃん！」 終わって我に返ると、ブースの窓の向こうにスタッフみんなのスタンディングオベーションが見えた。ありがとう！ だからやめられない。声優ほど、素敵な商売はな [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>「は～い、ぜーんぶいただいちゃいました。ブラボーよ、語り人ちゃん！」<br />
終わって我に返ると、ブースの窓の向こうにスタッフみんなのスタンディングオベーションが見えた。ありがとう！ だからやめられない。声優ほど、素敵な商売はない。<span id="more-181"></span></p>
<p>（１章「<a href="http://kataribito.net/02/01-2/">声優ほど素敵な商売はない</a>」のつづき）</p>
<p>「あ～ら、語り人ちゃん。お久しぶりねぇ。会いたかったわぁ！」</p>
<p>スタジオに入るやいなや、太いガラガラ声のオネエ言葉に迎えられた。<br />
１週間というタームが「久しぶり」に相当するかどうかの僕の考察を遮り、<br />
彼は上機嫌で畳みかけた。</p>
<p>「まあ、かたいこと言わないの。もっともこの１週間、先週録音した分の編集作業をずうっとやってたじゃない。だからワタシ、語り人ちゃんの声とともに寝起きしてた、といっても過言じゃないのよ。ちょっとハグさせてちょうだい」</p>
<p>いえ、遠慮願いたいです。という間もなく、毛むくじゃらの太い腕を強引に背中に巻き付けられた。<br />
「アナタ、相変わらずスマートだわね。羨ましいわぁ！　見てよ、ワタシなんかこのていたらくよ」</p>
<p>そう言って黒地に虎の絵がプリントされたＴシャツを首元までまくし上げ、でっぷりしたお腹をポンポンとふたつ叩いて盛大に笑うこの人。 オーディオブック『脳内沖縄紀行』の担当ディレクター、 ひげ面のオネエキャラ、虎田シーサーさんその人だ。</p>
<p>顔面ばかりか、腕から手の甲、お腹にまでびっしりと毛が密集している。<br />
「おいおい、腹毛で腹芸か！」という言葉をぐっと飲み込んだ僕は、彼の腹芸と僕のダジャレがこれ以上エスカレートしないようにと、さっそく仕事の話を切り出した。</p>
<p>「シーサーさん、<b>台本</b>は昨日いただいたもので全部ですか。各章の、おそらくエンディングにあたる部分が欠落しているように思えますが」<br />
きのうマネージャーから台本を受け取った僕は、一読して違和感を覚えたのだけど、マネージャーはこれで全部だという。</p>
<p>「そのとおりよ、語り人ちゃん。つづきはここにあるわ」<br />
そう言ってシーサーさんは、かなりの分量の紙束を手に取り、まるでハープでも弾くようにそれを５本の指ではじくと、不敵な笑みを見せた。</p>
<p>「えっ、それを今日、初見で読めということですか」<br />
「そうよ。それがどうしたの。プロフィールによると、あなたの特技欄に<b>初見読み</b>とあるわ。あら、大風呂敷を広げちゃったのかしら」</p>
<p>さっきとは打って変わって、冷ややかな攻撃的な口調でシーサーさんは言った。<br />
Ｔシャツにプリントされた虎が、今にも襲いかかってきそうな剣呑な空気だ。彼の腹芸にリアクションをしなかったことを怒っているのか。まさか！</p>
<p>でも、言うべきことは言わなければ。鼻から息を吸い、たっぷり<b>丹田</b>（下腹）に溜め込んでから、僕は言葉を発した。</p>
<p>ちなみに「丹田」とは、臍（ヘソ）と恥骨（恥ずかしい骨って！）のあいだの部位。インドではここを<b>「チャクラ（生命エネルギーの集積所）」</b>といい、英語で<b>「センター・オブ・ボディ（身体の中心）」</b>という。<b>悟りを司る聖なるポイント</b>といわれている。</p>
<p><b>丹田呼吸</b>と呼ばれる呼吸法で<b>瞑想状態</b>に入ることで知られているが、発声ではここを使うことによって、深く力強い声を出すことができる。かつて日本の軍隊などで、上官が弱々しい声の兵士に<b>「臍下丹田に力を込めろ！」</b>と檄を飛ばしたと伝えられている。</p>
<p>もちろん、<b>丹田発声</b>を日々トレーニングしている僕は、仕事以外でもここぞというときにこの発声法を使う。</p>
<p>たとえば重要な交渉事などで相手を説得したいとき。たとえば相手に大事な用件を伝えるとき。たとえば騒がしい居酒屋なんかで、遠くにいる店員を呼びつけるとき（実際これはいつも僕の役割だ）。</p>
<p>それから男性諸君、女性を口説くときも有効だ。子宮に響くといわれる腹式低音ボイスをマスターし、存分に女性の下心をくすぐってくれたまえ（失礼！）。</p>
<p>そして女性のみなさん、高音の鼻にかかったカワいい声だけが男を舞い上がらせるわけじゃないよ。少し低めの艶のあるカッコいい声を<b>「勝負声」</b>にすることをおすすめする。男の前立腺を刺激することうけあいだ（失礼！）。</p>
<p>センター・オブ・ボディ。<b>身体の中心を開いて、愛を叫ぶのだ！</b><b></b></p>
<p>話を戻そう。<br />
言うべきことを言うために、僕は丹田発声を用いてシーサーさんに言った。</p>
<p>「いえ、<b>特技</b>というにはおこがましいですが、<b>初見読みに対応する訓練</b>は積んでいるつもりです。ですが、それはモノによるのではないでしょうか」</p>
<p>ある種の<b>ナレーション台本</b>、たとえば<b>テレビ・ラジオ</b><b>CM</b>や<b>生放送</b>なんかの場合、 初見で読むことはままある。</p>
<p>だけどこれはオーディオブック。やはり、 じっくり読み込んで、満を持して臨むべきだろう。<b>下調べ</b>だって、<b>役作り</b>だって必要なのだ。</p>
<p>以上のことを僕は、自分の正当性を声高にではなく、<b>誠実さがしっかり伝わる深く安定した声</b>で主張した。</p>
<p>人は相手に攻撃されたり何か理不尽な扱いを受けたりしたとき、自衛本能から感情がたかぶり、心拍数が上昇する。だから呼吸が浅くなり、声が高くなりうわずったりする。これは<b>胸式呼吸</b>になっていることが原因だ。</p>
<p>まさにその見本となる例を、僕たちはテレビのニュース等で最近何度も目にしている。STAP細胞の存在の有無を詰問された小保方晴子さんが発した「STAP細胞はあります」という言葉。いや、<b>言葉ではなく声</b>だ。とくに「あります」の部分は不自然に高く震え、完全にうわずっていた。</p>
<p>こんなときこそ<b>腹式（丹田）呼吸</b>で、<b>お腹にしっかり支えられた声</b>で「あります」と、小保方さんは力強く主張しなければいけなかった。ヘアメイクもフェイスメイクも完璧だったのに、もうひとつ大事なメイクを彼女は怠った。それは<b>ボイスメイク</b>だ。</p>
<p>おっと、うまいオチがついたと悦に入っている場合じゃない。小保方さんは今、研究者として絶体絶命のピンチを迎えている。いや、今は自分の心配をしよう。かくいう僕だって（狭い世界だけど）、ナレーターとして絶体絶命のピンチを迎えている。ナレーター生命を脅かされているといっていい。</p>
<p>たとえば、こんな噂が流れたら、僕のナレーター生命は風前の灯火となる。</p>
<p><b>（語り人、「特技は初見読み」はウソだった！）<br />
</b><b>（語り人は初見読みにビビって現場から逃げ出したらしい）<br />
（語り人はシーサーさんのギャグをスルーして彼の逆鱗に触れたらしい）</b></p>
<p>ああ見えてシーサーさんはCMやPV、ドキュメンタリー番組など幅広いジャンルでヒット作を量産する、気鋭の演出家として知られている。彼を怒らせて仕事をほされたナレーターを、僕は三人知っている。ここでしくじったら僕だってただではすまない。</p>
<p>（考えろ、語り人！　おまえは<b>１本の葦のように弱い存在</b>だ。でも考えることはできる。<b>ピンチをチャンスに変える逆転の発想</b>を考えるんだ！）とフランスの哲学者パスカルに仮託して、僕は自分を鼓舞した。</p>
<p>しかし、どう考えてもわからない。各章の肝心のエンディング部分だけが、きのうの時点で未入稿だったとはどうしても考えにくい。それは不自然だ。とすると答えはひとつ。シーサーさんはきのう、原稿の一部をわざと抜いて提出したと考えられる。</p>
<p>ではなぜ、そんな手の込んだ嫌がらせを？　僕が何をしたというのか。<br />
僕の声は、シーサーさんの身体の中心を貫くことができなかったのか。子宮を響かせることはできなかったのか（できなかったのだろう。その理由は言うまでもない）。</p>
<p>不自然といえば、今日のシーサーさんはどこか違う。いつものシーサーさんじゃない。オネエしゃべりは健在なのだけど、何かが足りないのだ。決定的な何かが。記憶を司る脳の海馬に鞭を当ててみたが、ダメだ。思い出せない。</p>
<p>１本の葦と化した僕に、シーサーさんはさらに冷ややかな口調で追い打ちをかけた。<br />
「まあ、なんでもいいわ。できるの？　それともできないの？」</p>
<p><b>言われてしまった。男が決して言われてはいけない言葉。<br />
言わせてしまった。女に決して言わせてはいけない言葉。</b></p>
<p>「まあ、なんでもいいわ。できるの？　それともできないの？」</p>
<p>僕は考えることをやめた。１本の葦であることをやめた。<br />
<b>自分の仕事ができること以上に大事なことなんてこの世にありはしない。<br />
</b></p>
<p>だから、返事は決まっている。「もちろん、やります」。<br />
そう応えて僕は、<b>孤独なナレーションブース</b>に潜り込んだ。<br />
深い海底にたった一人で潜る潜水夫みたいに。</p>
<p>長い潜水になりそうだ。<br />
息はつづくだろうか。<br />
そこに景色はあるだろうか。<br />
いや、景色を創るのは僕の仕事だ。</p>
<p>（次章につづく）</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>履歴書やプロフィールの<span style="color: #ff6600;"><b>「特技」</b></span>は試されることを想定して記入しよう。あなたが痛い目に遭わないことを祈る。</li>
<li>言うべきことを堂々と言いたいなら、<span style="color: #ff6600;"><b>腹式（丹田）呼吸</b></span>をマスターすべきだ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>正しいことを言うとき</b></span>こそ高圧的になってはいけない。<span style="color: #ff6600;"><b>誠実さが伝わる優しい安定した深い声で</b></span>。</li>
<li>ヘアメイク、フェイスメイク、ボディメイクときて、さあ次は<span style="color: #ff6600;"><b>ボイスメイク</b></span>の番だ。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>勝負下着</b></span>も大事だが、<span style="color: #ff6600;"><b>勝負声</b></span>にもこだわりたい。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>身体の中心で愛を叫ぶ</b></span>ときは、できるだけ<span style="color: #ff6600;"><b>紳士・淑女</b></span>でありたい。</li>
<li>言われてはいけない言葉・言わせてはいけない言葉、今日の１位は<span style="color: #ff6600;"><b>「できるの？</b><b> </b></span><b><span style="color: #ff6600;">できないの？」</span><br />
</b></li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>自分の仕事ができること</b></span>以上に大事なことなんてこの世に存在しない。</li>
</ol>
</div>
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		</item>
		<item>
		<title>第2話1章　声優ほど素敵な商売はない</title>
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		<pubDate>Thu, 05 Jun 2014 15:04:45 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[ひとり語り]]></category>
		<category><![CDATA[オネエキャラ]]></category>
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		<description><![CDATA[100回断られる仕事をしているのに、101回目のオファーを断るなら、あるいは待てないなら、やめたほうがいい。ここは、そんな断られてばかりの競争過多の業界だ。それだけに、101回目の仕事の味は格別だよ。楽しくないわけがない [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>100回断られる仕事をしているのに、101回目のオファーを断るなら、あるいは待てないなら、やめたほうがいい。ここは、そんな断られてばかりの競争過多の業界だ。それだけに、101回目の仕事の味は格別だよ。楽しくないわけがない！<span id="more-174"></span></p>
<p>（序章「<a href="http://kataribito.net/02/prologue-2/">無条件に楽しい仕事</a>」のつづき）</p>
<p>オーディオブック今回のお題は、ズバリ沖縄！<br />
（何がズバリかわからないけれど）</p>
<p>「いいわね。リスナーの <b>&#8220;</b><b>沖縄に行きたい！</b><b>&#8221; </b>という思いをかき立てるような、<b>煽情的な語り</b>で頼むわよ」と、ここで今日の<b>担当ディレクター</b>が登場。</p>
<p>「これを聴いたら最後、もう何が何でも沖縄に行ってやる。沖縄に行けないくらいなら…」とディレクターさんは口角泡を飛ばして演出に入った。</p>
<p>「会社を辞めてやる！」→「待ってたよ、その言葉」（上司より）<br />
「離婚してやる！」→「もらうもの、もらったらね」（鬼嫁より）<br />
「親子の縁を切らせてもらいます」→「とっくに切れとるわ」（関西人）</p>
<p>顔を左右に振って<b>声としなを変える</b>のが見せ所のこの芸。落語でお馴染みの<b>「一人二役芸」</b>だが、これはディレクターさんのおはこ（十八番）だそうだ。</p>
<p>「まあいかにせよ、そのくらいの<b>ドップラー効果</b>を与えてほしいのよ」<br />
地声に戻してディレクターさんは言った。<br />
「それを言うなら、<b>サブリミナル効果</b>でしょ」と、僕はお約束のツッコミを入れたが、この一人二役芸が演出上必要だったのかどうか、いまひとつ疑問が残った。</p>
<p>いずれにしても、僕に「沖縄に行きたい教」の<b>教祖</b>になれと、そういうことですね。えっ、教祖じゃない。あっ、<b>広告塔</b>ですね。それも違う？　じゃあ、<b>夢先案内人</b>ってところですか。はっ、<b>勧誘員</b>？　どんどん格下げするんですね。</p>
<p>「帰らせてもらいます」僕は帰るフリをした。<br />
「わかったわ。夢先案内人でいいわよ」ディレクターさんは歩み寄った。<br />
「ワンランクアップ、感謝します」僕もオトナの対応をした。</p>
<p>「さあさあ、<b>夢先勧誘員</b>の仕事よ。いかにせよ、煽っちゃってね！」<br />
ディレクターさんはどうしても僕を勧誘員にしたいようだ。<br />
でも、どうよ！　夢先勧誘員って、なんか胡散臭くないか？</p>
<p>「でも、クサイのはNGよ。なんていうの？　いかにせよ、むずむずとそこはかとなくよ。わかる？」</p>
<p>（だから、うさんクサイんだって！　しかも＂むずむず＂と＂そこはかとなく＂って言葉、馴染まないというか相性よくないよね）声に出さず僕は抗議した。</p>
<p>それにしても、ひげ面の<b>オネエキャラ</b>のディレクターさん、僕はあなたのこと嫌いじゃない（むしろ好きだ）し、その｢いかにせよ｣という口癖も微笑ましく思う。だけど、いかにせよ日本語がおかしいよ。</p>
<p>でもとりあえず、あなたのいわんとすることはわかりました。肩書も夢先勧誘員でけっこうです（ときに妥協も必要だ）。</p>
<p>さあ、気を取り直して先を急ごう。<br />
オーディオブック『脳内沖縄紀行（仮題）』、スクリプトの流れはこうだ。まずは、人々の＂沖縄に行きたいごころ＂を詩情で訴える。うん、悪くない情景描写。これを<b>個人の心象風景として朗読</b>する。</p>
<p>「ただ、珊瑚が砕けた白砂を踏みしめ、海の鼓動に身をゆだねるだけだ」<br />
うむ…。これはいささか陳腐ではあるけれど、まあよしとしよう（ときに妥協も必要だ）。</p>
<p>次に、現地での<b>観光案内風の語り</b>（少しルンルン気分で）がきて、<br />
つづいて、<b>沖縄の歴史をひもといてみる</b>（ここは格調高く重厚に）。<br />
そしてフォークロア、つまり<b>沖縄に古くから伝わる民話</b>ね（えっ、僕もオネエキャラ？）。</p>
<p>これが面白い。お話の内容はCDが発売されたら買っていただくとして（ウソです。買わないで）、「むか～し、むかし…」にはじまる、<b>絵本や紙芝居</b>の世界。</p>
<p>そこへ、ディレクターさんから注文が。<br />
「あのさ、語り人ちゃん、地の文はおじいさんの声でやってみてくれる？」<br />
「はい。<b>『日本昔ばなし』</b>の常田富士男さんのイメージでいいですか」<br />
「さすが語り人ちゃん、話が早いわ」</p>
<p>ディレクターさん、いかにせよ&#8221;ちゃん&#8221;づけはやめてね。<br />
（もう感化されている。オネエ言葉は感染性があるのだ）</p>
<p>「すごいわぁ。あなた、なんでもできるのね！」<br />
「ちなみに、おすぎ＆ピーコのマネをするザ・たっちの物まねも得意です」<br />
「まあ、器用ね」</p>
<p>器用…。ところでこれは褒め言葉だろうか。いや、語りを極めるうえで、<b>器用さはむしろ邪魔</b>になる。少なくとも僕にとってはそう。だから、器用と言われると少し落ち込む。</p>
<p>たとえば、「<b>器用貧乏</b>ってよく言われるんですよ」って、なかば困ったように、なかば嬉しそうに、つまり自慢げに吹聴する人をよく見かけるが、これは自慢にも謙遜にもならない。<b>器用貧乏は褒め言葉じゃない</b>のだ。</p>
<p>「いかにせよ、それは聞きたくないわね。下品な声はイヤよ。ワタシは、語り人ちゃんの声を聞きながらワインを飲みたいわ」</p>
<p>ここでディレクターさんは大げさに片目を１回、閉じて開いてみせた。<br />
それをウインクと呼ぶ勇気は、僕にはない。</p>
<p>あとは彼（彼女？）の指示どおり、王子さま、お坊さま、占い婆、村人ＡＢなどオールスターキャスト、<b>すべてのキャラを声で演じ分けた</b>。</p>
<p>えっ、やっぱり器用って言っちゃう？　違う。すべてのキャラを声で演じ分けたって言ったけど、これは<b>口先だけの声真似</b>じゃない。なんていうんだろう、あえていえば<b>憑依</b>…。</p>
<p>そう、憑依（ひょうい）だ。何やらおどろおどろしい言葉だけど、僕の場合、そんな感じ。乗り移っちゃう感覚。<b>対象となる人格を瞬時にイメージし、それを丸ごとわが身に引き受ける</b>。</p>
<p>とはいえ、オーディオブックは基本的に<b>ひとり語り</b>。<b>「朗読」</b>というスタンスを大きく逸脱してはいけない。ひとりの読み手（ナレーター）が役ごとにガラリと声を変えては、聞き手は違和感を覚えるだろう。興ざめするといってもいい。この点において、基本的に一人一役の<b>オーディオドラマ</b>とは表現スタイルが異なる。</p>
<p>その意味で、一冊一作品ぜんぶを<b>安定した声と呼吸</b>で読み通していかなければならないオーディオブックほど、読み手の力量が問われるナレーターの仕事はないと僕は思っている。</p>
<p>「は～い、ぜーんぶいただいちゃいました。ブラボーよ、語り人ちゃん！」</p>
<p>終わって我に返ると、ブースの窓の向こうにスタッフみんなのスタンディングオベーションが見えた。</p>
<p>ありがとう！ だからやめられない。<br />
<b>声優ほど、素敵な商売はない</b>。</p>
<p>収録が完了して、事務所のマネージャーやスタッフたちとおしゃべりを。そして、１週間後におこなわれる『脳内沖縄紀行』後編の収録についての打ち合わせをしていた、そのときだった。何やら心身に異変を覚えた。<br />
ブルっと、身震いをひとつ。 おかしい、どこかが…</p>
<p>「沖縄に行けなければ、この仕事、やめてやる！」</p>
<p>僕は唐突にこう叫んだのだけど、それは洗脳による心身喪失の発作なのか、それとも演技の延長なのか、持ち前のサービス精神なのか、はたまた本心丸出しのアピールなのか、自分でもよくわからなかった。</p>
<p>そんな僕の乱心ぶりを見て、マネージャーが慌てて僕の手に何かを握らせた。<br />
「忘れてました！　ディレクターさんから語り人さんに、収録後すぐに渡してくれって！」</p>
<p>それは、災いをもたらす悪霊を追い払う魔除け、沖縄名物「シーサー」だった。素焼きの陶器製で、目鼻口が赤の塗料でペイントされた、手のひらサイズのシーサー。</p>
<p>「あれ？　いまオレ、なんか変なこと言ったか」<br />
我に返った僕は、頭を振ってマネージャーに尋ねた。<br />
「いいえ、今日は気分がいいからオレのおごりだって叫んでました」<br />
「だとしたら変だ。いや、なんかやめてやるって言ってなかったか？」</p>
<p>「ああ、そうでした。酒も女もやめてやるって言ってたような」<br />
「言うはずがない。それより、この不細工なシーサーは何なんだ？」<br />
「ダメですよ、語り人さん。シーサーにそんな罰当たりなこと言っちゃ」<br />
「これ、手作りだぞ。しかも小学生の工作レベル…」</p>
<p>と言いかけて、いったんいつもの自分に戻ったのも束の間、<br />
またしても僕は叫んでいた。</p>
<p>「いかにせよ、沖縄に行きたい！ 」</p>
<p>勧誘員が自分自身を勧誘してしまった、これは典型的な例だろうか。<br />
とするとこのオーディオブック、ディレクターさんの目論見どおり大成功ということになる。</p>
<p>ちょっと待って。僕が「憑依体質」であることを思い出してほしい。</p>
<p>役に入るとき、僕はスイッチひとつで比較的容易に役から役へと瞬間移動することができる。でも役を降りたあと（つまり仕事が終わったあと）、もとの自分に戻るのにひどく時間がかかることがある。</p>
<p>使い古された例えで恐縮だが、やくざ映画を観たあと、ポケットに手を入れ肩をいからせ、睨みをきかせながら映画館を出ていく、あれに似ている。僕の場合、もっと強烈なんだ。</p>
<p>えっ、本当にやくざになっちゃうのかって？　まあ、さすがにそれはないけど、ふつうの人以上に影響を受けやすいことは確かだ。</p>
<p>たとえば先週、何を間違ったのか僕に野球実況のアナウンサーの役がきた。録りが終わって１週間が過ぎた今も、その声と口調が抜けないでいる。</p>
<p>「さあ９回裏同点、二死満塁、ボールカウントはツースリー。勝利の女神はどちらに微笑むのか！」</p>
<p>以来、オーディションで最終候補に残るたび、思わずこんな言葉が口をついて出る。そんな僕だから、このオーディオブックの成功を喜ぶのはまだ早いだろう。</p>
<p>自分を勧誘したあと「相手を勧誘してはじめて成功」といえるのが、僕の仕事なのだから。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>（つづく）</p>
<p>オネエキャラのディレクターは何者なのか？<br />
そして、シーサーの謎は？<br />
それは次週『脳内沖縄紀行（後編）』の収録で<br />
あきらかになる（はずだ）。</p>
<p>それでは、第２話「声優ほど素敵な商売はない」<br />
次章をお楽しみに！</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>ナレーターは<span style="color: #ff6600;"><b>夢先案内人</b></span>もしくは<span style="color: #ff6600;"><b>夢先勧誘員</b></span>でなければならない。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>「器用貧乏」</b></span>を謙遜語として使うのはみっともないことと心得よ。</li>
<li>複数のキャラを演じ分けるときは<span style="color: #ff6600;"><b>声を変えるのではない。人格を入れ替える</b></span>のだ。</li>
<li>演技とは<span style="color: #ff6600;"><b>自分で自分を勧誘し洗脳する</b></span>ことである（語り人）。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>オネエキャラ</b></span>の人って、なぜか<span style="color: #ff6600;"><b>声が大きくて滑舌が良い</b></span>。</li>
</ol>
</div>
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		<title>第2話序章　無条件に楽しい仕事</title>
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		<pubDate>Fri, 30 May 2014 13:19:06 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[kataribito]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[第2話　ボイスアクター編①　声優ほど素敵な商売はない]]></category>
		<category><![CDATA[オーディオブック]]></category>
		<category><![CDATA[収録現場]]></category>
		<category><![CDATA[好条件]]></category>
		<category><![CDATA[悪条件]]></category>
		<category><![CDATA[成功者]]></category>
		<category><![CDATA[王様の耳はロバの耳]]></category>

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		<description><![CDATA[今日は久しぶりに、無条件に楽しい仕事をしてきた。 あ、いつも楽しいよ。僕は楽しい仕事しかしないから。 でも、「無条件に楽しい」というのは、そうそうあるわけじゃない。 僕のような、読んだり喋ったり教えたりという好きな仕事を [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>今日は久しぶりに、無条件に楽しい仕事をしてきた。<br />
あ、いつも楽しいよ。僕は<b>楽しい仕事しかしない</b>から。<br />
でも、<b>「無条件に楽しい」</b>というのは、そうそうあるわけじゃない。<span id="more-156"></span></p>
<p>僕のような、<b>読んだり喋ったり教えたり</b>という好きな仕事をしていてもそう。いろいろな縛りやら無理難題やら不手際やら、思わぬアクシデントやらハプニングやら、あまりうれしくないサプライズやらがあって、だいたいが<b>「条件つき」</b>だ。</p>
<p>世の中は実に、そんな多種多様な<b>「条件」</b>で溢れている。石を投げると条件に当たるんじゃないか、と思うほど。そしてその多くが<b>「悪条件」</b>ときている。<b>「好条件」</b>のなんと少ないことか。</p>
<p>ところで、この「<strong>石を投げると○○に当たる</strong>」という表現、よく使うから覚えておこう。例を挙げるよ。</p>
<p><strong>下北沢</strong>で石を投げると<strong>役者</strong>（もどき）に当たる<br />
<strong>高円寺</strong>で石を投げると<strong>ミュージシャン</strong>（もどき）に当たる<br />
<strong>渋谷のゴールデン街</strong>で石を投げると<strong>家出少女</strong>（もどき）に当たる</p>
<p>つまり、それほどその種の人が多いことを意味することわざだが、「もどき」とカッコ書きしたように、ややバカにしたニュアンスで使われる慣用句なので使用には注意が必要だ。そして間違っても良い子は石を投げてはいけないよ。</p>
<p>話を「条件」に戻そう。世間には悪条件が溢れているという話だが「それでも」と僕は言う。そうした悪条件と正面からぶつかって闘い抜いてこそ、人は強くなる。賢くなる。優しくなる。謙虚になる。涙もろくなる。お茶目になる。おバカになる…（うん？　だんだんあやしくなってきたぞ）。</p>
<p>つまり何が言いたいかというと、<b>悪条件を好条件に変えることができた人を成功者と呼ぶ</b>のだ。</p>
<p>スポーツ競技やなんかで、選手がここ一番の勝負を前によく口にする<strong>「思い切り楽しみます」</strong>というコメント。これはあらゆる悪条件に挑みつづけ、それを克服した人の言葉だろうし、またそうでなければならない。ふつうに楽しみたければディズニーランドへでも行けばいい。</p>
<p>ところで、さっき僕は「楽しい仕事しかしない」なんて言っちゃったけど、これは語弊がある。「オマエはそんなに偉いのか」と冷ややかな声が聞こえてきそうだ。説明が必要だね。</p>
<p>僕は<b>「仕事を楽しむ」</b>ことにかけては、<b>達人の域</b>に達している（と思っている）。何が楽しいって、ただひたすら夢中になれるから。我を忘れて没入できるからだ。</p>
<p>もちろんこれは、あくまでも<b>「声と言葉の表現」</b>において、という条件つきだよ。ついでに言うと、覚醒剤もアンナカも僕の条件には入っていない（つまり薬物は不要だということ）。</p>
<p>仕事の内容とか役柄とか形態とか、あるいは人間関係の軋轢とかギャラが安いとか、あるいはまた、最近彼女が妙によそよそしいとか、ギャグがいまいちウケないとか、そんな現実的な諸問題も、僕がこの<b>仕事で味わう愉悦</b>を奪うことはできない。</p>
<p>まあ、これはこれでひとつの才能かもしれないけど、どうせ達人になるなら<b>「語り」のパフォーマンス</b>でその域に達したい。そうなればもういつ死んだってかまわない（死んでも無理だとわかっているから言っている）。</p>
<p>白状すると、<b>サラリーマンからナレーターに転身</b>した親不孝な僕は、「仕事がない」もしくは「仕事をゲットできない」、だから「食えない」という苦境に何度も立たされてきた。</p>
<p>「そりゃオマエ、転身じゃなくて転落だろ」口さがない友人は言った。<br />
自分が坂道を転がる小さな石ころになったような気がした。<br />
だけど、転がりつづけるうちに巨大な岩になるかもしれないじゃないか。</p>
<p>「転がりつづける石は岩にはならないだろう。物理的に」<br />
口さがない友人はまた言った。<br />
「でも、少なくとも転がる石に苔は生えない。物理的に」<br />
僕も理論武装した。逆に言うと、転がっていなければ苔が生えてしまう。<br />
つまり、常に変化しつづけることに価値があるんだ。</p>
<p><b>転がる石のように生きよう</b>、と僕は思った。</p>
<p>とはいえ、やっぱり現実は厳しい。自分の甘さ、覚悟のなさ、可愛げのなさを思い知り、才能のなさに恥じ入り、穴があったら入りたいと、涙を流した夜も数知れない（それは今でもそうだけど）。</p>
<p>それでもあきらめず、まるで小石を拾うように、小さなチャンスを一個一個拾いながら少しずつ、本当に少しずつ、ささやかな実績を積み上げてきた。</p>
<p>だから自慢じゃないけど、<b>自分に巡ってきた仕事を断ったことはない</b>。「これはオレがやるべき仕事じゃない」なんてうそぶいたこともない。一度も。どんな案件でも。それが声の仕事なら。</p>
<p><b>100</b><b>回断られる仕事をしているのに、</b><b>101</b><b>回目のオファーを断るなら、あるいは待てないなら、やめたほうがいい。</b>ここは、そんな断られてばかりの競争過多の業界だ（100回という数字はあくまでイメージです）。</p>
<p>基本的に僕たちの仕事は<strong>「ボイスサンプル」によるオーディションでキャスティング</strong>される。<br />
「語り人さん、○○のナレーション、最終候補に残りました。○月○日、スケジュールキープ、お願いします」</p>
<p>こんな電話が毎日のように事務所からかかってくるんだけど、これは決定じゃない。あくまでも何人かの候補のひとりにすぎないわけで、実際にキャスティングされる確率はなかなかに低い。100回、候補に残ったとしても、最後のひとりにならなければ<strong>永遠にゼロ</strong>だ。</p>
<p>それだけに、<b>101</b><b>回目の仕事の味は格別だ</b>。楽しくないわけがない。これが「楽しい仕事しかしない」と言った真意だ。</p>
<p>とはいえ、<b>試練はつづくよどこまでも♪</b>（って歌ってる場合じゃないけど）。</p>
<p>またまた白状してしまうとそんな僕でも、それがどんなに楽しく、エキサイティングで、我を忘れて打ち込んだ仕事でも、結果的に<b>「この仕事をしたのは間違いだった」</b>と後悔の念に苛まれたことがある。身悶えし頭を掻きむしり<b>「オレはなんてバカなんだ！」</b>と自責の念に駆られたこともある。</p>
<p>そんなとき、たとえば大きな深い穴を掘って、<b>「王様の耳はロバの耳！」</b>と絶叫できたらどんなにか溜飲が下がるだろう、そう思ったことも１度や２度ではない。仕事柄そんな<b>秘密の、門外不出のエピソード</b>はたくさんある。</p>
<p>それでも、たとえ<b>結果的に痛い思いをすることになる</b>としても、仕事のオファーは断らないよ。<b>魅力的な女性（男性）からの魅力的な誘い</b>と同じだ。君は、断れるか？　薔薇に棘があることが、美しさを損なう理由になるだろうか（いや、なりはしない）。</p>
<p>そうした結果オーライとはいかなかった仕事の話は、またおいおい別のストーリーで展開していくとして、そろそろ今回のテーマに入ろう。「無条件に楽しい仕事」だったね。もう何が「無条件」で何が「条件つき」か、わかんなくなってきちゃったけれど。</p>
<p>ともあれ無条件に楽しい仕事、今回は「<b>オーディオブックの語りの現場</b>」にみなさんをお連れしよう。</p>
<p>そう、<b>オーディオブック</b>。 僕の&#8221;おはこ&#8221;ともいうべき<b>本の朗読の音声化</b>だ。<br />
（「おはこ」と打ったら「十八番」と出た。なんか一曲、歌いたくなるじゃないか）</p>
<p>本を書籍で読むのではなく<strong>「耳で聴く」</strong>オーディオブック。最近は日本でもコアなユーザーが増えてきたが、本場アメリカと較べると認知度はまだまだ低いといえる。あなたも電子書籍は知っていても、オーディオブックは知らないかもしれない。</p>
<p>それでも、移動の電車や車の中で、まるで<strong>音楽を聴くみたいに本を聴いている</strong>多忙なビジネスパーソンは多い。あるいは就寝前、本を開くかわりに電気を消してヘッドホンで聴く熱心なファンもいる。そのまま眠れるからいいんだそうだ。とくに僕の声はそんな作用があるらしい（子守唄か！）。</p>
<p>ジャンルもビジネス書にとどまらず、自己啓発、資格・実用、教養・語学、文芸・落語、はてはアニメ・ラブロマンスにいたるまで多岐にわたっている。たとえば<strong>「朗読少女」</strong>や<strong>「朗読執事」</strong>といった<b>キャラクターが朗読した名作小説</b>なども人気を呼んでいる。</p>
<p>まあ僕自身は、オーディオブックの仕事をしていてこんなことを言っちゃうと叱られるかもしれないけど、本はやっぱり手に取ってページをめくるのが好きな、典型的な活字中毒者だ。</p>
<p>そんな僕がナレーターとして<b>本の朗読</b>をして、さらにその音声を商品化して出版してもらえるなんて、すごいことだと思う。</p>
<p>だって、僕は子どものころから<b>本は声に出して読む</b>習慣があって、それはおとなになっても変わらなくて、そんなすこぶる<b>個人的な習慣が仕事になる</b>なんて考えもしなかった。なんて幸せなんだろう！って、つくづく思うわけです。</p>
<p>というわけで、僕にとって「無条件に楽しい仕事」ぶっちぎりのナンバーワンはオーディオブック。その怒涛の<b>収録現場</b>は、次章<b>「声優ほど素敵な商売はない」</b>でご覧いただこう。</p>
<p>この序章、セリフがほとんどなかったね。しかも、ちょっと説教臭くなっちゃった。ごめん。次章から「濃いキャラ」が登場します。お楽しみに！</p>
<p>&nbsp;</p>
<div class="point">
<h3><span>今日のボイスメモ、あるいは、声にまつわるささやかな教訓</span></h3>
<ol>
<li>あなたにとって<span style="color: #ff6600;"><b>「無条件に楽しい仕事」</b></span>とは何か、考えてみよう。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>悪条件を好条件に変えることができた人</b></span>を「成功者」と呼ぶ。</li>
<li>あなたにも、<span style="color: #ff6600;"><b>おはこ（十八番）</b></span>があるはず。それを強みにしよう。</li>
<li><span style="color: #ff6600;"><b>仕事の</b><b>NG</b><b>は出さない。</b></span>101回目のオファー、そこに<span style="color: #ff6600;"><b>ビッグチャンス</b></span>が潜んでいる（かもしれない）。</li>
<li>本は<span style="color: #ff6600;"><b>音読を習慣</b></span>にしよう。<span style="color: #ff6600;"><b>脳の活性化</b></span>にも役立つことうけあいだ。</li>
</ol>
</div>
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